第五章:第十話
数日後、ディレット達はキャンプ地から、さらに『深度』を深めるように東へ移動して、橋を見つけて川を渡った。
探索には、いつもは川があるのを知っているので東側には基本来ていなく、キャンプ地からそれほど距離は取らないように周りを回るようにして探索を行っていたのだが、あらかた見慣れた景色となってしまった。
そこで、たいしたものは無いとわかっているが、こっちには何があるのかなと思い、皆で話あってやってくることになった。
そうして、やはりちょっと歩いただけでは特に代わり映えもしない景色の中、モンスターにも遭遇せずに歩き、探索を続けていると、離れた場所から戦闘を思わせる音が耳に入ってきた。
ディレット達は、その音から、どこかの集団とモンスターが戦闘を行っていると予想すると――
「ふむ。ここはどこか別の討伐者たちがテリトリーとしているようですね。場所を移しますか?」
「そうしたほうがよさそうだな。後でイチャモンをつけられても面倒くさい」
アディルトの言葉にディレットは答えた。
「テリトリーなんて、そんな決まりないだろ?」
ヨーンズがそんなのあったのかというようにアディルトに質問する。
「厳密にはないですけどね。まあ、討伐者間の暗黙のルールみたいなものです」
「どうするか、川まで戻るか……」
「えー、こんなところまで来て戻るのかよ。少しぐらいお邪魔させてもらおうぜ。
会ったら『がんばってる? ちょっと通らしてもらいますよー』って言って、済ませればいいよ」
「俺もビスクにさんせー。会ったら『やあ!』って笑顔で言って挨拶すれば大丈夫じゃね? なんなら俺のチーズをやって場を和ますことに一役買ってもいいし」
「ああっそうだな! 俺とクーアの処世術で乗り切ってやろうぜ!」
と、ビスクとクーアは、そういった後に無言で互いの目を合わせ、互いの右手を軽く上げ『パンッ!』と手を合わし鳴らした。そのあとに向けた二人の瞳には『メラメラ』と揺るぎない炎が宿っているようで強い決意を思わせた。
「「「「「…………」」」」」
「……やめとけ。
かえってトラブルになる気がする」
「でも、そう警戒心を強くして戻らなくてもココらへんで反対側に移動すればいいんじゃない?」
と、ゼフがいう。
「まあ、そうかもしれないが、後々変に面倒事になるぐらいならここで戻ったほうが良いと思うんだが……」
「ディレットは、そういうふうにあまり人と接しようとしないところがあるからなー。
じゃあ、ゼフの言うことを採用して、このまま音がする方にいくんじゃなくて、反対側にいこうぜ。なっ?」
と、ビスクがいった。
「うーん。俺がおかしいのか? それともお前たちは、もっと人の悪質をもっと知ったほうがいいのか?
前のタグの件とは違うぞ。同じ討伐者だからって死んだ者と生きてる者の接し方はまた違うんだ。
出会いがしらに何気ない顔で襲ってくる可能性だってあるんだぞ?」
「それは、盗賊とかの話だろ? 討伐者ならそういうことするヤツはいないんじゃない?」
「そうだぜ、同じ討伐者なんだから、むしろ交流を持つためにチーズ片手に挨拶をしにいってもいいんじゃないか?」
「そういうのは、まあ、あると思うが……
クーアは、とりあえず知らないヤツにそのチーズを渡そうとするのは絶対にやめろ」
と、そんな話を立ち止まってしていると、切羽詰まったような怒号と悲鳴の声が聞こえ始めた。
「……ディレット、あちらさんヤバイのかも? 助けにいったほうがいいんじゃない?」
「クーアの言う通りに、ちょっと様子を見にいってみようぜ?」
「ビスク、そのちょっとがちょっとですまないかも知れないだろ。
俺は、この場をすぐ離れたほうがいいと思うが……
アディルトは、どう思う?」
「そうですね。先日の死体のこともありますし、様子を見ておくのもいいかと」
それを聞いたあと、ディレットは、「そうか」と言って皆の様子を見て数秒悩み。
「……とりあえず、様子を見に行くか。戦うかは状況を見てからだ。わかったなヒャラルラ」
「え? えー。えー~……」
と、言いながら『スー』っと軽く抜こうとしていたライトアックスを再び、『スー』っと静かに腰から太ももに下がっているライトアックス用ケースに仕舞直しながらいった。
「とりあえず、戦わないことを前提にするため、ニオイで気取られないよう《フィルムゲル》を発動させてから移動するぞ」
ディレットの指示のもと全員が《フィルムゲル》を発動させると戦闘音がする方へと移動を始めた。




