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第五章:第八話

 数日後。


 ディレット達は、モンスター捜索中に討伐者らしい六体の死体とモンスターらしき幾つかの死体がある場所を見つけた。

 死体の全ては、食われたような痕跡が見受けられ、ほぼ骨のみ状態となっていた。その骨の多くもバラバラになって散乱している状況で、武器防具の類は引き千切られたり、折られているものが血を吸った地面に無造作に転がっていた。

 ただ、武器防具などの彼らの持ち物であろうものは人数から少ないように見られたのでモンスターなどが持ち去った可能性も思わせた。


「悲惨だな……」

 ヨーンズは、その現場を見たあと、顔は崩していなかったが哀れんだような目でそういった。


「前に戦ったダムダムタイガーかな?」


「どうだろうな。

 ビスクが言ったことは否定できないが、周りにあるのはダムダムタイガーの足跡ではないな。

 ……多分二足歩行のものだがゴブリンのものじゃないな」

 と、ディレットはいった。


「……この足跡からいって、オークかもしれませんね」


「オークか……だとしても、もう俺達の敵じゃないだろ?」

 アディルトの言葉にクーアが応える。


「一体ならそうかもしれないが、ここにある足跡から判断すると二十体以上はいるな」

 と、ディレットは腰を下ろして『ザッ』と辺りの地面を見た感想をいう。


「げ、マジかー。長髭狐のこと思い出すな。

 数が多いと避けたり防げなかったりするからなー」

 と、ビスクは顔をしかめながら言うと。


「ふん、ふん、ふん」


「ヒャラルラ……今から興奮しないでね……」

 と、ゼフは突然手にライトアックスを持ち素振りを始めたヒャラルラにいう。


「前回のダムダムタイガーとの戦いで鎧にも少しダメージがあるし、相手は斬撃の武器も持ってそうだから、ちょっと会いたくない相手だな」

 と、ビスクは言う。

 前回のダムダムタイガーの戦いでビスク、ヒャラルラの鎧は一部、防具としてあまり役にたちそうにない部分がある。

 レザー系防具が一部破損した場合、下位の討伐者やそれほど値が張る防具でないものは、針と糸で応急処置をできる場合はそうする。

 引き千切れたりしたもの、剥がれそうになっている箇所を縫い付けるのである。

 あまり丁寧にしなくてもゲルの発動で鎧を支えてもくれるので戦闘中の動き事態は問題はないが、その箇所に攻撃を受けると脆さ、防御力の低さは出てはくるのであくまで応急処置である。


「絢火達にも教えておいてやろう」

 と、クーアは言った。


「ああ、そうだな。

 十体位まで減ってくれていれば戦うが、数が多い場合は、逃げることも頭に入れておいてくれ。

 それと、これからの索敵に関してはかなり慎重にいこう。あともう少しで依頼は完了するんだ。少し疲れが出てきたようだからな無理はしないようにして今回は帰るとしようか」

 と、ディレットがそう言うと、その言葉を聞いたヒャラルラから『しゅん』と、意気消沈した音が聞こえたような気がした。


 その後、死亡した討伐者の金目の物やタグなどを拾い集める作業へ移った。

 ただ、ゴブリン、オークなどの集団性、組織系モンスターに襲われた者たちの遺留品はあまり期待はできない。

 それは、武器や防具、金、銀などの価値を人と同じ様に持っている場合が多く、持ち攫われて大したものが残っていることはほとんどないからである。

 それでも、第三勢力(モンスター同士や新たな討伐者)の関係などもあり、たまに離れた場所に落ちている場合もあるので一応付近を確認することに越したことはない。


 一般の討伐者がこういった場面に出会ったら、ディレット達と同じく金目の物に関しては、自分たちで頂戴する為に探し、タグに関しても金になるものではないが探す行為をする。

 タグには個人を知る名前やナンバーなどの情報が彫られている。そして、討伐者のタグを討伐者組合館に届けるとタグ一つにつき銀貨一枚と交換してくれるものでもある。

 ただ、銀貨一枚の価値は一般の討伐者にとってそれほど価値があるものではない。

 また、討伐者ではない一般の者にとってもモンスターが跋扈する地帯で銀貨一枚のために時間を取ろうという者もまた少ないだろう。


 それでも討伐者たちは、死体の人数分が揃わない場合、見つかるまでよく辺りを探したりする者が多い。

 もちろんタグを探すこと事態、全く興味がない者も多くいる。


 たいした金にもならないタグをなぜそうまでして、多くの討伐者たちは時間をかけて、見ず知らずの者が付けていたタグを探そうとするのかは、討伐者として働いていくうちに勝手についていく矜持のようなものからだろう。


 ここに転がっている者たちが最後、どう戦ったか、どう死んだかはわかるものではない(・・・・・・・・・)が、立派に戦って(・・・・・・)戦士として(・・・・・)死んだ者たちである。


 顔見知りのムカつくヤツならまた考えは変わったかもしれないが、名も顔も知らない者、同じ討伐者仲間に対してあまり蔑ろにするような考えは浮かばない。

 そうはいっても、なかには弱いから、注意が足りなかったからだ、という者はいるだろうし、ディレット、アディルトやビスク達も少なからずこの考えを持っていないわけではない。その日の機嫌により悪態をついてしまうこともあるだろう。

 であるが、立派に戦った戦士に敬意を払いタグぐらいは探しても良いだろうという考えも頭にはある。

 

 名も知らない者たちだが立派に戦った戦士に同じ戦士としてなるべくできることはしてやりたいとも思う。

 それに、なにも知らずに死んだ者の帰りを待つものがいるかも知れない。そういった時間を止めてしまった者に対して忍びないものもある。


 そういったいろいろな思いや矜持から多くの討伐者たちは、時と場所にもよるが自然と自分の顔見知りのように探すようにもなる。


 数十分後、

 ディレット達のなかで誰も渋るような顔をする者はいなく、タグ探しに精を出した。タグには動物やモンスターが嫌うような処置がされているらしく、もっていくことはほとんどないという。

 一個二個と見つけていき、最後の一個がなかなか見つからず時間を食ってしまったが、ヒャラルラが「あったー!」といって最後六個目のタグを見つけることができた。


 その後は、使えそうにない、換金してもたいした金にならなそうな武器防具などを一纏めにして集める。別に散らばったままでもよかったがなんとなく今の彼らの気分でなんとなく纏めることとなったのだ。一纏めされた物はいつかスライムが寄ってききてキレイに食べてくれるであろう。


 残った遺体などは深い穴を適当に一つ掘り、無造作に纏めて埋める――


 ジィーラ皇国の国民は、個々に墓を建てる者は少ない。

 国民は、数ある信仰の中である一つの信仰を持つ者が多く、その影響からジィーラ皇国全体でその教えが一般化していることがある。

 その一つ、墓に関してだが、その教団が火葬した骨を自然に還す場所を街一つに対して幾つか用意していて、信仰者や国民などはそこへ還すのが一般的な習わしとなっていた(蘇生魔法というものは知られているが条件があり、身分が高い者だろうとおいそれと行えるものでもない為に一般的とはいえない)。

 といえども、教団はかならずしもその場所に還す必要性は説いてはいなく、こういった野外で見ず知らずの遺体の処置として、一つの穴に纏めて埋めることもまた容認していた。

 この考えからディレットたちの行動も遺体に敬意を払っていないものではなく、ある種の一般的な考えからきているものである。

 ただ、遺族、親戚、仲が良かった者ならそれぞれの遺体、墓に分ける作業などを恭しくすることもあるだろう。

 であるが、遺族でもなんでもないディレット達は、敬意を払ってもさすがにバラバラに散らばったものを個別に一つ纏めるのは無理があるし、ここはのんびりと作業する場所でもないので、遺体の一部を扱う手つきがぞんざいになるのもまた仕方がないことである。

 なので、『ポイポイ』といったように掘った穴に投げ入れ、同じく散らばっているモンスターらしき骨と同じ穴に入れようが敬意を払っていないとはまた言えないことであった。

 ただ、そんなふうに遺族などのまえでやったら『ボコボコ』にされる可能性は高く、その覚悟は必要となるが、区別が難しいものに関しては、どうしようもないので一緒にしてしまうのは勘弁願いたいと思うところであるが、なかなか難しいことでもある。

 ちなみに、身分が高いものや他の信仰的観念から個の墓を持つものもまた多くいるため個別の墓という観念も珍しいものではない。


 ――ディレット達は一通り作業を終えると、埋めた穴の土を足で踏み硬め、何を飾ることもなく、その場を後にした。


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