第五章:第七話
ヨーンズとアディルトのコンビ以外、それぞれのコンビは相手したダムダムタイガーに対して、あまり時間の差はなく組んだ者との力だけで討伐することが出来た。
そして、ビスク達、ヒャラルラ達は元いた戦いが始まる前の場所付近へと集まりだし、互いの健闘と無事を確認しあう。
「……今まで命の危険を感じたモンスターと戦うことあったけど、なんか今回のは強敵っぽいのと戦ったんじゃない?」
と、ビスクが言う。
「ああ、強かったな。一撃でダメージを感じさせないってのがキツかった……
それより俺は、ビスクが死ぬんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ」
「なんでだよっ!? ちゃんとやれてただろ?」
「いや、だってお前ってすぐ油断するから……
大きな隙があったときお前が攻撃して、当たったときに油断したろ?」
「ああ、あれね……
チャンス到来で渾身の一撃を放って、これは決まったなって思ったのに、対して効いてないのかすぐ向かってきた時は驚いたな」
「そういうところだよ。まあ、俺もアレは決まったと思って少し油断はしたけどさ」
「そうはいっても、あそこでクーアのいいのが決まったんじゃないか。
俺の囮がよかったんだな、囮の才能がある俺、囮スペシャリストにでもなろうかな?
……冗談だけど。
でも次、同じのに会っても今回みたいな感じでやったらまた、うまくいくんじゃない?」
「いや、いや、やめてくれよ、そういうのは……
ちょうど助けれる距離だったからよかったもののヒヤヒヤだったから」
ビスクとクーアの二人の話を聞いてたゼフが一息ついたと思ったのか、自分たちの話を持ち出した。
「そっちも大変だったみたいだけど、こっちもヒヤヒヤだったよ。ヒャラルラが骨を折るほどの良いのを食らってね。焦ったよ」
「えっ!? 大丈夫なのか?」
と、ビスクはヒャラルラに視線を向け言う。ヒャラルラはそんなダメージなど無いように平然とした姿で立っている。
「骨折や打撲関係に効く『橙ポーション』を使ったから平気だよ。ただ大きな出費になっちゃったね」
「しぶとかったから……だけど、だいたい動きおぼえたから次は大丈夫」
「おまえら、無事なのはわかったから。早めに解体をはじめてくれ。皮とか金になるから、てい……もうボロボロになっているのもあるが、これ以上品質を下げないよう丁寧にな……ゆっくりでいいけど手はすばやく動かせよ」
と、ディレットはビスク達とは少し離れて『キョロキョロ』と周囲を歩き確認しながら言う。その雰囲気は戦闘が終わったばかりだからか、相手が現れるまで潜伏に気づけなかったからか、少し険しく感じる。
しかし、そんな雰囲気など知ってか知らでか、
「ディレットー。ちょっと何言ってるかわかりませーん」
と、ビスクはお構い無しといった感じに思ったことを返した。
「そういうのはいいから、早く自分たちが相手したヤツのとこいって、解体に手を動かせ」
と、ディレットはビスクの方へ顔を向けることもしないまま『キョロキョロ』を続けながら言う。ちなみに、この『キョロキョロ』作業はアディルトもディレットと離れた場所で行っていた。
「あー、ダメだ。ディレットお喋りモードじゃない。それに、あれだな、ちゃんとやらないと拳が飛んできそうだな。皆、仕事しようか」
「……今のディレットにそういう煽っていく感じ、ホントスゲーと思うぜ」
と、クーアが言う。
「え!? 煽ってるってなに? 煽ってた? なー! ディレット怒っちゃたー? 煽ってごめんねー!」
「なんの話だ!? そんなことはどうでもいいから、はやく仕事をしろって言ってるだろ! 痛みか? その重い腰を軽くするには痛みを必要とするのか? あ?」
と、今度はビスク達の方へ向き『コラー』といったふうに拳を上げながら言った。
そんな様子をビスクは、目の当たりにしても
「うん? 平気じゃない?」
と、クーア達に振り向き直して平然と言う。
「いや、ホントスゲーと思うぜ」
「えっ、なんで?」
「いや……なんでもない」
「ビスク、バカだから……」
表情乏しいヒャラルラだが、なにか可哀想なものを見るような目でビスクに視線を送りながら言った。
「えっ、ヒャラルラ!?」
「まあ、そういうところがビスクのいいところでもあるよ……でも、なにかあっても俺は関係ないから」
と、ゼフはなにか未来を予想するように、ヒャラルラと同じくなにか可哀想なものを見るような目でビスクに視線を送りながら言った。
「ちょっ、ゼフ!?」
と、四人は喋り、特に何が面白でもなく『ワッハッハー』といったふうに笑っていたら――
「……今回ダムダムタイガーにパンチをやってみたんだけど、イマイチな感じだったんだ。ちょっと練習が必要かもな。お前ら解体の前にちょっと頼めるか?」
と、ディレットはビスク達に近づきながら淡々と言う。
「「「「さーて、仕事はじめよー!!!」」」」
各々は、何も聞こえなかったように少し声を上げ言うと。『スチャタタタァー』と、そそくさ移動を始めた。
そして、そんな四人とは打って変わって、『ピリピリ』とした雰囲気を纏うヨーンズ。
皆がそれぞれ担当した場所へ向かっていくと、独り皆の視界から外れるような木が壁となる場所に移ると拳を木へと叩きつけた。
今回の戦い方は醜態であった、自分に腹立たしく耐えきれなかった行動、そうすることで冷静になろうとしたものだろう。
目をつぶり、歯噛みしながら刀を折った瞬間を振り返る。こみ上げる苛立ちの感情、そしてそのなかには恐怖もあった。
――ものの数秒、落ち着いたわけではないが、あまり長い時間そうしても、どうしたのかと思われる。
解体を始めようと移動して、ふと、歩いていたディレットの背中が目に入った。
衒った、肩肘を張った、自信過剰に陥ったものでもなく、かといって卑屈なども感じさせない、その背中。
暫し見ていたら、ヘタな気持ちよりもまだまだ全然だなと思う気持ちが強くなる。
「ふーっ」と一息つき、頭を左右に振った後、ヨーンズの顔は落ち着いているものだった。




