第五章:第六話
戦況は移る。
ヒャラルラとゼフ、
ビスクとクーア、
ヨーンズとアディルト、
それぞれ二人一組となり相対する敵と戦っている。
互いの戦場は、邪魔とならないよう元いた場所からは大きく動いて、コンビ毎に距離を取っていた。
~ ヒャラルラとゼフの戦況 ~
ヒャラルラは『ライトアックス』を両手持ち、果敢にダムダムタイガーに戦いを挑んでいた。
攻撃を幾つか受けたダムダムタイガーは所々傷を負って血で染まっていたが今だその内に宿る闘争心は揺らぎなく、爪、牙といった連続攻撃を仕掛けてくる。
ヒャラルラは鼻息荒く、その攻撃を『スレスレ』といった感じに避けて隙きあらば反撃、攻撃をおこなっていた。
いまだ、余談を許さない状況――しかし、そんな状況で浮かべるヒャラルラの表情は、苦しいとしたものではなく、嬉々としているものだった。
場面は移り、ゼフはそんな縦横無尽といったふうに動くヒャラルラのサポートに徹している。
とてもじゃないが他者と協力して戦うとは無縁といった動きをするヒャラルラの近くにはいられないのだ。
幼少の頃から友として、年月を得て学んだことは『うれしそうな表情を浮かべるているときはそばに寄らないようにする』である。今がまさにそのときであった。
もしかしたら、ディレットならばあの中に入って呼吸を合わせた戦い方ができるかもしれないが、ゼフにはとても出来そうには無い。いや、もしかしたらできるかもしれないが、はっきり言ってしたく無いのが心情であった。
ゼフは自分にできる戦い方を考え、主力とする攻撃は、ヒャラルラに任せ、自分は牽制の動きとした。
~ ビスクとクーアの戦況 ~
ビスクは両手で持った『複合棍』を構え、ダムダムタイガーと対峙する。
自分から攻撃することは控え、主に防御に専念していた。
数多のモンスター達との戦い。思いついたように行われたディレット達の『シゴキ』が彼(『シゴキ』はビスクに限ったものではない)をダムダムタイガー相手でも戦えるようにしていた。
落ち着き、相手を見据え、動いたと思ったら防ぐようにして持つ『複合棍』を使い、身体ごと避けていく。
この『捌き』に関しては主にヒャラルラからの荒々しい『シゴキ』が良かったのかも知れない。
彼の型を意識しない力強い攻めは今戦っているダムダムタイガーを彷彿とさせる。
ビスクは、ヒャラルラからその攻撃を何度となく受けたことで、多少なりとも慣れる結果となり、はじめて戦うダムダムタイガーの攻撃でもなんとか捌いていける結果に繋がっていた。
ただ、攻撃を捌いているだけでは何時まで経っても倒せはしない。
攻撃は主にクーアが担当して、左右後ろに回り込み、ビスクが生んだ隙を見てその手に持つ長剣を食らわしていく戦法をとっていた。
~ ヨーンズとアディルトの戦況 ~
ヨーンズとアディルトが相手するダムダムタイガーは無数の斬られた傷があり、血に染まってかなりのダメージが見受けられた。
が、しかしそんな状況でも二人は危機に直面していると言わざるを得ない。
なぜならば、ヨーンズは折れた太刀で戦っていたからである。
折れた刃は、ダムダムタイガーに残り刺さっているが、とくにそれが戦いに有利に働いているものでもなし。
ヨーンズは、回避に専念しているのか、ダムダムタイガーの攻撃をなんとか捌き、凌いでいた。
だが、段々と苛立ちをはじめたダムダムタイガーは防御を疎かにした攻撃を優先しはじめる。これでは、いくら回避に専念しようとも攻撃を食らうのは時間の問題と思われた。
そんな状況下のアディルトだが下手に攻撃をするとヨーンズの邪魔となったり、自分へと向かってくるため攻め手に掛けた状態でいた。
思い描いていた戦い方は、自分が隙をつくり、ヨーンズがその隙をついていくといった戦い方。
そう、はじめはそのようにしてうまくことは運んでいたのだ。
《ファイヤーボール》、《ブラストボム》で隙を作り、ヨーンズはダムダムタイガーへと一太刀、また一太刀と首の皮を中心に削っていき、肉を断つのは時間の問題と思われていたが、ヨーンズの太刀を折られたことにより、一気に危機を陥ってしまっている。
アディルトは苦悩の表情を浮かべ逆転の手を模索する……
場面は再びヨーンズへと移る。
ダムダムタイガーが爪の攻撃を仕掛けてくる時、ヨーンズは手に持っている途中から刃が折れた太刀を『チラリ』と見て顔をしかめると忌々しい太刀を折ったときの記憶が勝手に脳裏に過ぎった――
隙きを見せたダムダムタイガーにまた一太刀攻撃しようとした時、ダムダムタイガーは思わぬ動きをみせた。
それは、今までの戦い方からはまったく予想できなかった行動で、背を見せ丸くなった姿勢。
それを見て「防御か?」と、咄嗟に思い攻撃を躊躇したが、構わずに刀を振るおうとした。
だが、その躊躇したとき、ダムダムタイガーは動く――丸い姿勢のまま四本の足に力を込めて弾けるように跳躍し、背から体をぶつけてくるよう仕掛けてきたのだ。
飛び込んでくる巨体。避けきれないと瞬時に悟り、太刀の切っ先を相手に立てるよう構えた。
そして――ぶつかる直前、身体を後ろへと軽く飛ぶようにし、そのさい切っ先をダムダムタイガーの肩辺りの背に突き立てる。
思いのほか刃が深く刺さるとダムダムタイガーは慌てて身を翻した。
そのときである、その反応についていけず太刀を折ることになってしまったのは。
――記憶が脳裏を過ぎ去ると、同時にヨーンズは「チッ」と軽く舌打ちをしながらダムダムタイガーが振るってくる爪の攻撃を避けた。
◇
ディレットは、それぞれの戦況を見て、ヨーンズの元へと向かうことに決める。
収納空間から一本だけ予備として預かっていた太刀を急ぎ取り出し、ヨーンズ達のもとへと向かった――
アディルトは、ディレットがこちらに来ると分かると軽く口角を上げ、すかさず《ファイヤーボール[Ⅰ]》を放った。
その攻撃に対してダムダムタイガーは跳躍して避け距離を取る。その隙きに――
「ヨーンズ!」
ディレットは、そう言ってヨーンズに太刀を投げ渡す。
ヨーンズは「助かる!」と言って太刀を空中で受け取った。
そして、ディレットはヨーンズ達が相手していたダムダムタイガー向かい、ヨーンズも反撃への体勢を整え向かっていった。




