第四話 おもいは錆びること無く、飛び立つ
豊穣の時代、祝祭期412年**月**日
暗闇と静寂の空間。
白い物体は、再び淡い光を放つと、その中から二つの黒い丸いものが弱々しく浮かび上がる。
「……前より、お力をつけているようですが、ハッキリとはわかりませんわ」
「――うん、でももう捜しに行かないと、私達には時間がない……」
「もしや、人として肉体を得て転生されたのかも、それならこの成長の遅さも理解できます」
「理由はどうであれ、今の状況で行くしか無い……覚悟はいい?」
「――ええ、仕方がないですわ」
「……近くまで行けば、もっとハッキリとわかると思うから大丈夫だよね」
「ええ、それに近くまで行けば、きっとあるじ様の方から私達を見つけてくれますわ」
「――そうだよね……行こう! あるじ様のもとへ。
たとえ、当てのない暗い道でも私達二人なら、きっと大丈夫だよね」
「――あるじ様のもとへ行くのに暗い道なんてありませんわ。
あるじ様が私達の道を光で照らしてくれていますもの」
「そうだった。光差す場所へと進むだけだね」
「――ですわ。さあ、行きましょう。私達の光知る場所へ」
「今度は、一緒にどんなものを見ることが出来るのかな?
楽しみ……」
二つの黒い丸いものは、淡い光を放っていた白い物体から、すり抜ける様に出ると、それに並ぶようにして空中で止まる。
「「じゃあ、行ってくるね。
あるじ様と共に会える日を待っていて――――――」」
そうして、二つの黒いものはクルクルと回りながら夜空へと飛び出していく。
――幾千の星、またたく光が降るなかで、その仕草はどこか踊るような想像をさせた。