第五章:第二話
絢火達は、捜索を始める。しばらく経つと一組のゴブリンを発見した。互いの距離はまだ離れており、ゴブリン達はまだこちらに気づいてはいない。
絢火達は、お互いの顔を確認して無言で一度うなずくと『ラステム』と《プロテクションゲル》を発動させる。
そして、それぞれの持場へと静かに移動を開始した――
ゴブリン達は、ときたま『キョロキョロ』と辺りを見たり、『スンスン』と鼻を鳴らし匂いを嗅ぎ状況を確認して警戒しながら移動をしている。
嗅覚は、人間より多少よいとさせれているが犬並ではない。
絢火達は《プロテクションゲル》を纏っているので体から漏れるニオイで特定するのは、また難しいだろう。
静かに気づかれないよう木影、草茂る所などに隠れながら移動して徐々にゴブリンへと近づいていく。
――そして、十分な距離となった。一拍置いて他に危険が無いことを確認すると、絢火の突撃と共に他三人も一斉にゴブリンへと襲いかかった。
「ぎっ!?」
突然の敵に驚きの声を上げ反撃に出ようとするゴブリン達。
だが、反撃の間など無く、即座に四体のゴブリンは、ニンジャ刀で切り倒された。
次に少し離れた残り二体のゴブリン。
四人は、自身の『カの領域』から忍具である手裏剣を瞬時に取り出して投げつける。
それぞれ弧を描くように標的へと風を切りながら向かい。狙いは一つもそれることなく――
「ぐっ。 ががが……」
――瞬く間に数発の手裏剣が体に突き刺さり二体のゴブリンは地面へと倒れ込んでいった。
一組のゴブリンを発見してからものの数分での出来事である。
【忍具・手裏剣】
忍具である手裏剣は、忍具といっても能力的には普通の手裏剣と同じで特に威力が上がるといった特殊な能力(今扱った物)はない。
忍具である一番の特徴はKPが少ないことにあり、『忍具』の『忍』の文字はここからきているとされる。
通常ただの鉄などの素材で作られた手裏剣よりも忍具として作られた手裏剣はKPは少ないように作られている。
ニンジャ以外のラステム保持者がこの手裏剣を『カの領域』へ格納しようとすると通常手裏剣と同じ様なKPとなる。
それといった能力がない忍具の手裏剣は、KP以外に能力が無い代わりに壊れるまで何度でも使えるので重宝はされる。
ただ価格は、通常の手裏剣のものに比べるとかなり高い。
なので、使用したらなるべく持って帰るようにもなる。
使い捨てるための通常の手裏剣もあり、絢火達も所持をしている。
お金に余裕がでてくれば、普通の手裏剣を所持する割合は、少なくなっていくのが一般的となる。
◇
その後。
絢火達は、二組のゴブリン討伐を無事終えてから川へと寄って各々の水筒に水を補給などしてから自分達のキャンプ地へと戻ってきた。
討伐の始めとしては、それなりに良いすべり出しではある。
これからディレット達との食事の時間まで、各々自由な行動となる。
自由と言っても生活、討伐に関することで大体の時間は潰される。
まずは、《ワイパーゲル》を発動させて、武器、防具、自身の体など汚れを拭い落とす、などから絢火達は手を付けていった。
――そして、そろそろ約束の時間となるので、ディレット達のキャンプ地へと移動を開始する。
街からキャンプ地までの食事は、パンやソーセージなど簡単に済ませられるものであったが、今日は少し手を入れた料理を振る舞うとディレットは言った。
絢火達は、料理の手伝いを申し出たが料理の下準備は依頼を受ける前に済ましてあるとのことで、手伝うことは特にないらしく、断られた。
絢火達のキャンプ地からディレット達のキャンプ地へは数十分ほど歩く距離にある。
◇
ディレット達のキャンプ地へ辿り着くとアディルト、ビスク、ゼフの歓迎があって席へと勧められた。
席といっても地面に布が敷かれた程度のもので飾り気も何もない。
だが、これでも気を使ってくれたことに絢火達は気がついて心の緊張が少しほぐれる。
今日、ディレット達は休息日としていて討伐は表立ってはしていないとのこと。
席に着くと食事の準備ができるまでの間、討伐したモンスターや周りの地形はどうであったかなどの情報交換の会話を軽い感じで始まった。
他の者は、絢火達の到着と共に料理の盛り付けを開始する。
今日、振る舞われる料理は、カレーライス。
カレーのルーはアマノハシ連邦国から発売されている『カレーDキューブ』を使用。ちなみにシチューを作る時は『シチューDキューブ』というものを使う。
スパイスは、独自のブレンドされたもので、四角く固められている。一個一人前で鍋に放りこむだけでプロの味になるすぐれものである。
ただ『コンソメDキューブ』、『コーンポタージュDキューブ』よりもお高いものとなっている。
胴長の大きな鍋に水を入れ沸かし、用意しておいた野菜類を炒め入れ、鶏肉をプライパンで焼いてから入れる。
それから『カレーDキューブ』を人数分入れ、具とルーをなじませるため、しばらく弱めの火加減で煮込ませる。ある程度時間を掛けた料理である。
クーアがご飯を盛って、ディレットがカレーをかけて、ヨーンズがトマトを切って飾る。ヒャラルラは氷水を用意した。
余談だが、ヒャラルラは食事時に氷水を毎回用意しているわけではない。休息日やちょっと頼まれた時、MPに余裕がある時だけである。
食器プレートは三つの仕切りがありスープ系も入れる予定なので少し高さがある。
四角い食器プレートの一番大きい仕切り一つ目に、ご飯とカレーが盛り付けられる。二つ目に一つのトマトが八等分に切られた状態で乗せられて、三つ目に氷水が入った木製のコップが置かれていた。
コップは、べつにプレートに乗せるものではなかったが、ヒャラルラ曰く「空いてたから」で、置かれる形となっている。なので、スタイルはこうと決まったものではない。
焚き火を囲い食事の準備が整った所で、まずディレット達から食べ始める。
毒などの確認を含めたマナー的行動である。
その様子を見てから、まずは絢火から食べる。問題は特にないようなので一華、和恵、紗奈も食器を手にとって皆での食事となった。
カレーの種類としては、具材からチキンカレーとなり大きな鶏肉の塊が二つ乗っていて食べごたえがある。
具材の一つであるタマネギは、細かく刻まれてルーに溶け込まれているので見た目は、よくわからないが多く入っている。
そのよく炒められたタマネギがルーと調和され辛さだけではなく、まろやかな甘みとコクも感じさせてくれる。辛さも辛いものが苦手ではない絢火達にはちょうどよいものであった。
絢火達は皆、おいしいと感想を言い。一華と和恵は、みずみずしいトマトを食べれて嬉しいと言って。出された料理は好評となった。
ただ、ディレットは数口カレーを食べては水を飲んでいるのを見かけて、気にかける絢火達であった。
そして食事は、なごやかに終えた。
あまり長居せずに絢火達は食事の礼を言い。帰り支度をする。
ディレットは、金をもらってるのだからいちいち礼などいらないと言って軽い感じで見送った。
絢火達は、今日の食事が一人銅判貨五枚以上のものだと思っている。
それを気にかけない彼らの気さくさと歓迎。料理の美味しさも相まってか彼らへの好感度はかなり上がることになった。
外は、もう真っ暗なので『光魔属性』を持つ和恵と一華を先頭にキャンプ地へと帰る。
彼女達が持つ魔属性は、
絢火は『火』と『真』。
和恵は『光』と『風』。
一華は『光』と『地』。
紗奈は『水』と『法』。
と、なっている。




