第四章:第七話
ディレット達は、前回と同じく七日間の休みを取ってから次の依頼を受けることに決め、各々自由に休みを過ごす。
現段階でもディレットにパーティから脱退すると表明してくる者はいない。
休み一日目。
ディレットは貯まったLPでラステムのランクアップを『ナの光盤』からボタンを押して行なう。
武道:ウォーリア[2→3]。
魔道:ウォーメイジ[2→3]。
【ラステムの補足説明】
まず、武道、魔道、特質、サポートとタイプがあるが同じランクアップに必要なLP量は同値である。
サポートタイプでは武道、魔道タイプと比べて各ステータスが上がる項目が少ないからLP量が少なくなるということではなく、同値である。
次に、ランクアップの実行を確定するには数日の間、不殺を貫かねばいけない。
なので、モンスター多発地帯など戦闘がすぐある場所などでは行なうことは『なるべく』しない。
『なるべく』というのは、ランクアップを実行してモンスターを殺しても実行に使ったLPがなくなることはない。ただランクアップが失敗するだけで再び実行すればよいことから。
だが、何度も失敗して実行を繰り返しているとたまにラステムの発動が遅れるなどの支障がでることがある(これは一度の失敗時にも起こる可能性があるが日数を置けば、この問題は解消される)。
このことから戦闘の危険性を重視している者は戦闘がある場所ではランクアップ作業を行なうことは、まずしない。
最後に、ランクアップに必要とするLP量は、ランクが上がる毎にある一定ずつ増加するが、
下位(一~四)ランクが必要するLP量と中位(五~八)ランクが必要とするLP量は格段に違う(各位が上がることに更に増加する)。
そして、ただ必要するLP量が増えるだけかというとそうではない。
下位、中位と位中のステータス増加値は一定だが、各位が上がることに下の位よりも増加するステータス値は格段に多くなる。
なので純粋(サポートタイプなどのラステムを考慮しない)にランク四(下位)の者がランク五(中位)の者と戦うと一ランク差でもかなりの開きがある。
この現象はモンスターランクにも同様にいえることであり(例外もある)、下位モンスターの最上ランク[A+]と中位モンスターの最低ランク[D-]でも強さの開きがあるが、その分取得できるLPも格段に多いものとなる。
◇
今回のランクアップが確定すれば、近接、陣魔法戦闘関係の能力が上がり下位討伐作業は楽なものへと繋がる。
ディレットとして本当は、『ウォーメイジ』を一つ上げた後、MPを増加させるサポートタイプのものをと思っていたが前回の大髭狐の戦いで先に仲間をサポートできる力を少しでも高めて持っていたほうが良いと思いこの結果とした。
ちなみに、なぜ今回二つラステムを一気にランクアップをやったかといえば、単純に前回の討伐終了時ではランク二に上げるぐらいはあったが、ランク三に上げられるほどLPがたまっていなかったからである。
なぜMP増加にこだわっているかといえば、新しい収納空間能力を取得するというのが今のところの着実に達成できる強さのひとつであると考えているから。
『ウォーメイジ』にも優秀なMP増加ステータス項目があるが、これだけでは収納空間能力を取得しようとするには頼りないものがある。
次に手に入れようとしている収納空間能力は『コンテナ』と呼ばれるもの。
これは、今取得している中で最大の収納能力がある『クローゼット』より取得MPが大体三倍近く必要で、収納能力は一五倍以上はあるというもの。
基本収納能力は取得時のMPが多いほうがより収納能力が多く良いものとなる。
ディレットは、日々MP節約生活に追われて、せっせ、せっせと涙ぐましい努力(なるべくMPを使用しない)をしながらMPをためている。
たが、こんな努力をしても今の状態で手に入る見通しは四年以上先なのである……
ただ、これは今の状況であって、これからMP関係のラステムを取得していけば、この年月はぐっと縮まっていく。
途方にくれそうな思いが襲いながらも、いつか手に入る『コンテナ』のために、努力してる姿がそこにある。
具体的に言えば、夜寝る前ぐらいに毎日『ナの光盤』からMPためるボタンを押し続けている姿がそこにあるのだ。
◇
ランクアップ作業後、特に何も予定はないのでディレットはとりあえずベッドで横になって、これから先のことなどを考えていると。
「ゴン! ゴン! ゴン!」と扉をノックする音にしては激しすぎる、扉を破壊しかねない音が聞こえてくる。
居留守を許さないような、その音に素早く扉を開けると――
アマラマザーズの女性がそこに立っていた。
ディレットは特に何もしていないが警戒をしてしまい、相手の顔を見てはいるが、その両腕に装備されたものがどこに向かうのか出方を窺う。そうした後アマラマザーズの女性が口を開く。
「こんにちは、面会者が来られたので、お連れしました」
そういったアマラマザーズの女性は、お腹あたりに置いていた片手をゆっくりとディレットの顔近くにもってくる。殴りかかるような速さではなかったので特に驚きはしなかったが別の意味で意表がつかれた。
そこにはラタトスク種族の十歳にも満たないような幼い女の子がモモンガのような、白茶色を主としたフワフワとした毛の着ぐるみを着た装いで乗っていた。
「あっあの、はじめましてリ。アッチはコモモっていいますリ。
シバグリの使いで来ました、デレットさん? お話きいてほしいリ」
そういってコモモは、ディレットに向かって深くお腹のフワフワした毛に埋まるような、お辞儀をした。
「――うん。デレットじゃなくて、ディレットな。
それだとしまりが無い感じになるから……
確かに俺の面会者のようですので、案内ご苦労さまです」
ディレットは、自分の名を改めて言いながら、コモモの前に両手を出す。
コモモは一瞬「?」となったが、すぐその意図を読んで、『うんしょ、うんしょ』といった感じで両手に移ってくる。
移っていったコモモを見てアマラマザーズの女性は少し残念そうな顔をする。
と、急にバシュッ! と音をならし右側の装備を外して素手となった手でコモモを触れるという必要のないことをした後、シューっと音をならし再び装備して何事もないように軽く挨拶をして自分の仕事に帰っていく。
その背中をコモモは「案内してくれて、ありがとうリー!」といって手をブンブンと振って見送った。
「…………」
ディレットは無言でそのやり取りを見た後、
アマラマザーズが素手になったときを思い出し、「手や腕が長いわけではないんだな」、「装備品の手、腕の可動部分は何かギミックや魔法の力で動かしているのか?」
などと、そんなことを思いながら部屋の中へ戻る。
コモモを備え付けられている机の上に移動させ、ディレットは椅子に座った。
それを見計らってココモは話しかける。
「……名前、間違って ご、ごめんなさいでリ。
それで今日、来たのは明日予定が無いなら、話をしたいってことリ。
……だいじょぶリ?」
首を傾げながら聞いてくる。
「ああ、『討キャン協定』の話しか。
……明日、特に何もないな。いいぞ。
他の奴らの許可は……用があるなら、来なくてもいいか」
「よかったリ。この紙に店と時間を書いておいたリ」
コモモは、お腹のどこにあるかわからないポケットから紙を出しディレットに渡す。
「……ああ、わかった」
紙は小さく、字も小さいものだったが、なんとか読み返事をした。
「じゃあ、伝えに帰るリ。ディレットさん、あそこの窓を開けて欲しいリ」
中庭に続く窓を指さして言った後、机の足からスルスルと降りていく。
「窓か? いいが」
そういって窓を開けると――
コモモは勢いよく走り。外へとダイブする。
「バイバイ、リーーーー!」
コモモは着ぐるみの飛膜を広げ器用に飛んで去っていった。




