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グランドハーベスト~傷みやすい『カ』実~  作者: 幻運律総
第四章:ニンジャと小人
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第四章:第六話

 ジィーラ皇国に四季という季節はあるが、春、夏、秋の日中の気温は暑くもなく寒くもなくといったほぼ一定の気温だが、街内で働く者達の服装は袖、裾が長いものを着ていることが多い。

 夜中は太陽が沈むので気温が下がり肌寒く感じる者は増すといった感じである(特定の土地によっては変る)。


 これは天候に関係するマナ、精霊などの影響が大きく及ぼしたものであり、このバランスが崩れるとき気候の変化にも関係する。

 夏などは暑さを司る精霊などの働きが大きくなる日が他の季節に比べて多くなる。


 季節を月で分けるとすると、

 春は、一から四月。

 夏は、五から七月。

 秋は、八から十一月。

 冬は、一二から一四月となる。




 今は、五月に入り数日が経っていて、これから夏の期間は暑い日が来る確率が高くなる。

 が、あくまでも確率が高まるだけで、異常な年を除いて毎年、幾日か暑い日になるのが通例である。

 そして、今日は少し暑い日であった。日も沈んではいるがその暑さは残り、先程まで降っていた小雨も今は止んで湿度も上がっていた。


 そう! こういう日はキンキンに冷えたアワワが飲みたくなる!


 通常アワワを頼むと冷えてはいるがキンキンまでは冷えていない。

 地下や水、氷などで冷やしたりはしているが、キンキンまではなかなかできない。

 そういう時に役立つ者といえば魔属性:凍の所持者だろう。

 凍の常用魔法は、冷気を発して、ものなどを冷やすことができ、時間をかければ凍らすことも出来るというもの。

 討伐者などの職業についていない凍属性者はこういう酒場の店主、従業員としてや個人営業として酒場などを周り飲み物や料理などを冷やして稼いでいるものが割と多くいる。

 ただMPの関係から一人の者がそれほど多くの量を冷やすことはできない。無料サービスとして冷やす店もあるが大体の店が有料である。


 そういったことから、この店も『キンキンアワワ』は通常『アワワ』より値段がプラスされるが、暑い日には頼まずにはいられない。

 ディレット達も迷わず『キンキンアワワ』を注文することを決める。


 「すみませーん! 『キンキンアワワ』七杯!」

 と、ビスクとクーアが声を揃えて店員に言う、そして――


「「「「「かんぱーーーい!!!」」」」」


 一同の声と共に木製のジョッキを合わせ、そして黄金色に輝き、泡立つ液体アワワを口へと運ぶ。

 炭酸の刺激と冷たさがたまらなく美味しい。

 宣言通り、ビスク、クーア、ゼフのピッチは早い。ヨーンズはいつも通り早く。他三人は最初だけ飲む量が多かったが、すぐに自分に合った飲み方をする。


 店は前回の打ち上げをした同じ所。

 だがいつも利用していた大きなテーブルがある二階ではなく、四人掛けや小さなテーブルで占められている一階で今回は飲んでいる。

 今日の二階は満席なのだった。

 まあ、でも四人掛けの二つのテーブルを合わせて一つのテーブルとして囲めばいいので特に問題はない。ディレット達もそうした。


 他の飲み屋でもよかったのだが、ビスクとクーアは前回の休み中、二人で毎日のように飲み屋を歩きまわっていたらしい。

 ディレット達も誘われたが、毎日はうんざりなので、ディレット以外のものが各々一、二回付き合った。

 酒好きのヨーンズは、人と飲むのは嫌いじゃないが、騒がしいのはあまり好きではないので毎日は付き合うことはしなかった。


 二人の話によるとまだ数件だが店を巡って、今の所ここが一番評価が高いので、今回もここで打ち上げをすることにしたのであった。

 冒険した結果、まずい料理でせっかくの打ち上げを白けたものには、したくはないのだ。



 ◇



 各々、飲み食いしディレットがそろそろ打ち上げも終え帰ろうかと思う頃、どこからか「もし」っと声を掛けられた気がした。

 他のものを見てみると――

 ヨーンズは席から離れて隣の席あたりの客と飲みくらべ勝負をしている。

 勝負の行方はヨーンズがまだまだ余裕で勝負相手はもう『べろんべろん』状態であるが頑張って飲んでいる状態だ。

 そんな男にヨーンズは態度で煽り、隣で立って観戦しているアディルトは「おや、手がとまっているようですが、どうかしましたか?」、「先ほどの威勢はどうしたのです」などと言葉で煽りさらに飲まそうとする。そして必死に飲むその顔を嬉々として見て楽しんでいた。

 それを見たディレットは、これが『ダークエルフ』の『ダーク』かと思う。


 ビスク、クーア、ゼフ、ヒャラルラはテーブルに顔を伏せている。

 ヒャラルラはただ単に眠くなったので伏しているだけである。

 他の三人は『ムチの嵐』から『酔いの嵐』へと変わり、頭の中で必死に船の舵をとっていることなのだろう。行き着く先も『頭痛の嵐』だろうが……

 そんなことを見ながら考えていると再び声が聞こえた。


「いや、いや盛り上がったようッスね。少しご一緒してもいいッスか?」


「ん?」っとディレットは声がする方へ顔を向けるが誰もいない。

 それほど飲んでいるつもりはなかったが、酔って聞き違えたのかと思っていると――


「ここッス、ここッス。グラタン食器のとこッス」


 視線を落としてみると、食べ終わって横にずらしていたグラタン食器の前に、リスのような着ぐるみを着た小さな人らしきものがディレットを見上げていた。


 【ラタトスク種族】

 成人体長十~十五㎝程の小人で、小動物の毛皮を着ぐるみのように加工して一般的に着用している。

 その存在はジィーラ皇国ではよく知られているのだが、無闇には人前には出てこない。

 彼らが知れている理由の一つがその職業にある。それはジャーナリストだ。

 ラタトスク種族の多くがその職業につき日夜、ニュースを集めていた。


 ◇


「はじめまして、自分ラタトスク種族の『シバグリ』って言うッス。お若いのに羽振りが良さそうなので声を掛けさせてもらったッス。お話いいッスか?」

 灰色を主にしたリスの毛皮から作られた着ぐるみを着たシバグリと名乗った男はそういった。どこかその口調は警戒心をなくすようなものだが、雰囲気と物腰からそれなりの齢を感じさせる。


「んん。ちっさいな。なんだ? 飯でもわけてほしいのか? 勝手に食ってもいいぞ」

 シューレムア界は、妖精、精霊などが普通に認知されている世界である。なので例え小さい人間に会っても、知識有るものならば必要以上に驚き怖がったりはしないだろう。

 が、初めて会うものにこれほど驚かかずに接する者もそうはいないだろう。


「ありがとうッス。ではお言葉に甘えるッス。このコップに旦那の飲みかけでいいので貰ってもいいッスか?」

 そういったシバグリはパンパンになっている、大きいショルダーバックから自分専用のコップを取り出し、ディレットに渡そうとする。


「さらに小さいな。アワワでいいのか? ワインもあるぞ? まあいいか。面倒くさいから小皿に入れとくから勝手に自分で酌んでくれ」

 そう言うとディレットは二つの小皿にビスク達が無駄に注文した飲みかけではないアワワとワインをそれぞれ入れシバグリに差し出し、適当に別の小皿に料理を入れそれもシバグリの前に置く。


「これはこれは、ご親切に。旦那はとても優しい方なんッスね。では頂きますッス」

 そういってアワワを酌んでゴクゴクと飲む。下ろしたコップから見える口の周りにはアワワの泡がついていた。


「旦那じゃない。ディレットだ。それと優しいわけじゃない。そんな小さい体で動き回られたら、見苦しいと思ったからだ」


「ほうほうディレット、ではディレットさんとお呼びさせてもらうッス」


「……で、何が聞きたいんだ? 話すことなんて何もないぞ」


「いえ、特には何もないッス。まずはお近づきになりたいと思ったので声を掛けさせてもらったッス。

 貰ってばかりじゃあれなんで、これちょっと古いかもしれませんが春号の『新聞の実』ッス。受け取ってほしいッス」

 そういうと、シバグリは『カの領域』から帽子を被ったような、丸い皮付どんぐりのような形をしたものをディレットに渡した。


「ああそれか、母上もよく読んでいたな……

 でも、どこで売ってるんだ? そんな売店は見かけなかったと思うが……」


「それはアッシ達や売店の者も馴染みの者にしか売ってないからッス。

 時に巨大権力の特ダネがありますからね。おいそれとは売れないことが多いんス。

 ディレットさんの話しぶりから、使い方は大丈夫そうッスね。

 『カの領域』に入れて使うっていうのは?」


「ああ、大丈夫だ。それで『ナの光盤』で映し出し見るんだろ」


「そうッス。……ところでディレットさんのパーティは強そうッスけど、パーティメンバーを増やす予定は今後あるんッスか?」


「……そうだな。欠員がでれば考えるが、今のところ無いな。

 増やすとしたら中位の討伐を始める時ぐらいと今は考えてるかな」


「……そうなんッスか。じゃあ、『討キャン協定』はどこかと結んでいるッスか?」


 【討キャン協定】

 『討伐者間キャンプ協定』の略でパーティとしては結ばないが、互いのベースキャンプ地の位置を近くにして、なにか不慮の出来事があった場合、出来る限り手助けをしようとするもの。

 あくまで口約束レベルで必ずしも手助けをしなければいけないものでもない。

 詳細な決めごとは、それぞれのパーティの者が話し合いなどで決めて、討伐に関してはそれぞれのパーティで別れておこなうのが一般的である。


 ◇


「ん? んーーー。そうだな、今はどことも結んでないが、一組ぐらいは結んでもいいかもな」

 ディレットはそういば、そういうのがあったなと思い出し、今後の参考とした。


「そうッスか! アッシいい人たちを知ってるんッス。是非、紹介させて欲しいッス。

 今、丁度その方達も街にいるんッスよ。会うだけ会ってくださいッス!」


「急だな。まあ、そうだな。

 一組ぐらい結んでたほうがいいのも確かだし……

 ……いいぞ、会っても」


「ありがとうッス。では、後日迎えを行かせるので待っていて欲しいッス!」

 そういった後、シバグリは別れの挨拶をして直ぐに席を外しまるで本物のリスのように素早い足取りで店内にいる客の足をもとをくぐり抜け店の外へと出ていった。

 その後ろ姿を見たディレットは「移動するだけで冒険だな」と思う。


 その後、しばらくして、ディレット達も打ち上げを終え、各々の場所へ帰った。


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