第三話 おもいは錆びること無く、待ち望む
豊穣の時代、祝祭期398年2月22日
暗闇と静寂の空間に唐突に淡い光を放つ白い物体が現れる。
その中から二つの黒い丸いものが浮かび上がった。
「――――――――――――!!!
この感じは……
これは絶対に、あるじ様だ!
でも、……ううっ――場所がよくわからないよ」
「――私も、とても小さくですが揺らぎを与えてくれるものを感じますわ……
ですがこの感じ……
やはり、お力が弱くなってしまったのですね……」
「そんなっ! どうしたら――――――」
「……暫く、様子をみるしかありませんわ」
「そうかもしれないけど――、
う~大丈夫かな。揺らぐ力が弱すぎる……」
「あるじ様なら必ず力をつけます。
そうすれば場所も今よりわかってきますから、それまでの辛抱です」
「……こういう時こそ、お側にいることが私達の役目なのに」
「――大丈夫、あるじ様ですもの。少しの辛抱ですわ。
それに、私達に残された時間も少ないのですから……
力の消費を抑えるためにも暫く、私達も眠りましょう」
「そうだね。きっと、ちょっとの辛抱だよね。
やっとお会いできる……」
「えぇ。とても……長かったですわね。
さあ、きちんとお迎えするためにも、今は眠りましょう」
「……早くお会いできる日を心待ちにしています。
どうかそれまで、ご無事でいて下さい。
あるじ様――――――」