第四章:第三話
数日後。ディレット達は、問題なくゴブリンを討伐していった。
日に大体二戦するが三戦できる日はなく、なかなか思うようには『スカーレットハート』は集まらず地道な毎日を過ごしていた。
そんなある日、一組のゴブリンと戦闘を終え、次の獲物を探し回っているとモンスター『ディオメデス』の群れを見つける。
【ディオメデス】
馬型モンスターで、頬まで裂かれているような大きな口持ち覗かせる歯は鋭い。
肉食で蹄の形は肉を引き裂けるよう鋭い作りにもなっている。
頭から尾にかけて艶のある長い髪がはえていて、この体毛には高い価値がある。
◇
「……十三体か、ランクも下位[B-]……やれるな」
遠く離れた大きな岩に隠れディオメデスの様子を見ているディレットが口にする。
「ちょっ!? 今回はちょっと数が多いし、ゴブリンより数倍デカイよ。地道にゴブリン倒してたほうが安全だって」
「あいつらが今、食事しているのはゴブリンだぞ。俺たちの獲物も取られているんだ。やるしかないだろ」
「じゃあ、今回もエリュマントスと同じくビスクを囮にするのか?」
「なにをいってるの!? ヨーンズはそういうこと言わないで、ディレットが本気にしたらどうするんだよ。
今回は一体じゃないから防ぎきれないから、絶対どこか、かじられるから」
「MP消費したくないが、今回は陣魔法でサポートに回るか……
俺、アディルト、ゼフで遠距離からサポートするからお前たちは存分に暴れてこい」
「ヒッヒッヒッ!」
ディレットの声を聞いたヒャラルラが独特の笑い声を上げた。
クーアとヨーンズは無言で頷き、ビスクは――
「ちょーっ!? どして? あの中に四人で突撃ですか?」
「そうだ、戯れてこい」
無慈悲なディレットの言葉でビスクは項垂れる。
そこへヒャラルラ手がビスクの肩に置かれ、ビスクはヒャラルラの顔を見る。
「なんで、笑顔なの?」
◇
数分後、ディオメデスの側までディレット達は見つからないように側まで忍び寄る。
そして、各々準備完了した段階でなるべく、同時に魔法を放つようにディレット、アディルト、ゼフは息を合わせる。
「《ファイヤーボール[Ⅱ]》!」
「《ライトニング[Ⅰ]》!」
「《ウィンドカッター[Ⅰ]》!」
放たれた陣魔法は各々別のディオメデスに向い、直撃する。
《ファイヤーボール》を顔面に食らったものはしばらく苦悶したあとで絶命した。
《ライトニング》を胴体に食らったものは死にはしなかったがダメージが残り動けずにいる。
《ウィンドカッター》を足に食らったものは足を切断までは出来なかったが切り裂き地面に伏した。
そして――
ヒャラルラは魔法が放たれた直後に突撃を開始する。
クーア、ヨーンズは直撃してから、
ビスクは、その二人を見た後に覚悟を決めてディオメデスに向かっていった。
陣魔法を放ったディレット達はそれぞれサポート出来るように移動をして再度、陣魔法を放っていく。
ディオメデス達はいきなりの発火、雷撃などで仲間が攻撃を受けて混乱する。
だが、敵が人間と知ると、徐々に落ち着き、怒り、戦闘状態になっていく。
そして、魔法が放たれた場所を探り、攻撃に向かおうとした時、一つの黒い影が一体のディオメデスの頭の高さまで飛んでいた。
――ヒャラルラである。
ヒャラルラは左右に持った二本の手斧を互いに目があったディオメデスの首に打ち付けた。
深く突き刺さった斧をすばやく抜くと血が吹き出し、ディオメデスは地に伏しそのまま立つことはなかった。
ヒャラルラが次の獲物を探す段階で、両者の戦闘が始まった。
ディオメデスは、その体格から想像できないような、軽いステップで攻撃を回避して大きな口で噛み付いてこようとする。
後ろを向いて、逃げるのかと思えば後ろ足で蹴る攻撃をしてきたり、体を後ろ二本足で立ち、前足二本で押しつぶそうとする。
ヨーンズは、そんな攻撃を数度、見ると見切り、着実に攻撃を与え、倒していった。
クーアは、剣の特性からか一撃、一撃が大ぶりになってしまい、攻撃が当たらず苦戦をしていた。
蹴りによる攻撃も何度か受けてしまっているが剣をうまく盾にしてダメージを軽減しているので、なんとか無事でいるが仕留めきれずにいる。
そこへゼフの陣魔法の支援により戦局が変わった。
クーアが注意を引き、ゼフの《ウィンドカッター》がディオメデスの足を狙う。
そして、スキが出来た所でクーアの一撃がディオメデスにとどめを刺した。
ビスクは、苦戦していた。
相手の攻撃を防ぐのに必死でまったく攻撃ができずにいる。
そんな様子をディレットは離れた位置で陣魔法を発動しながら見ていた。
実際にはビスクが一対一で戦えるように戦局を操作している。
ビスクが相手にしてるディオメデスには攻撃は加えず周りにいるものへ攻撃を加える。
ディレットは戦いの結果ではビスクをパーティから切ろうと思っている。
それは全員に言えることだが、ディレットはパーティで仲良く討伐していくのが目的ではなく、強さを手に入れられるパーティを作ることを目的にしているからだ。
いつもディレットは普通に装っているが、焦燥感のようなものが常にあり、世界を旅周る衝動に掻き立てられている。
無駄な時間は欲しくはない。だが、そういった時間も必要だと思っている。絡まったら余計時間を取ってしまう。
なぜ今というのは、メンバーも六人になり、ふるいに掛ける最初がビスクで、その相手の現れた、それだけのこと。
ビスクのことが嫌いだからというわけではない。むしろ好感をもっている。戦いの場でムードを和ます者は貴重だろう。
だが、今のディレットはムードを和ますとかそういったものの優先順位が低い、それはまだ、若さ、焦り、経験の乏しさゆえかもしれない。
弱い者は死ぬ、だから強くなれる素養のないものは早々に退場してもらったほうがお互いに幸せだという考えである。
それだけでは人が良い関係で纏まるには難しいというのに。
そして一分と経たずに、ビスクはディオメデスの攻撃に耐えられなくなってき始め、ついに足がもつれ地に尻をついてしまう。
ディオメデスがその状況から後ろ足二本で立ち前足を天高く上げトドメの一撃をビスクに食らわそうとする。
ビスクは今、《プロテクションゲル[Ⅰ]》の発動とレザーアマー[ダムダムタイガー]を装備しているが、この一撃が直撃すれば、かなりのダメージを受ける。打ちどころや、『体力』状態では死に至るだろう。
そんな状態でも、ディレットは見ていた。
いや、「ここまでか」と思い助けに入ろうと《ライトニング》を放とうとした時、ビスクは、まだ諦めていなかった。
常人ならとっさに目をつぶって、その無慈悲な攻撃が来るのを待っていただろう。
ビスクは、ディオメデスの足を天高く上げた瞬間を隙きと捉え、修羅式スキル《パワーギア[Ⅰ]》を発動する。
そしてディオメデスの胸部目掛けて突きを力を込めて食らわした。
突きを食らったディオメデスは、ビスクの横にそれて苦悶し、さらなる大きな隙きが出来る。
その隙きにビスクは素早く立ち上がり、大きく棍棒を振りかぶり、ディオメデスの頭目掛けて、振り抜く。
「バッーン!」っと大きな音を立て、直撃したディオメデスの頭は半壊し、音を立てて崩れさった。
ディレットは、それを見た後、残るディオメデスは数体。ディレットも近接戦闘に参加して数分で戦闘は無事終了した。
ちなみに《パワーギア》の能力は使用者の『力』を数パーセントだが三分間だけ上昇させるというもの。
◇
「はぁ~~~。今回、死ぬかと思った……」
ビスクが棍棒を支えにしながら。地面に呟く。
「トドメをさせたのは一体だけなくせに何言ってんだ」
ビスクの声が耳に入りヨーンズが声をかける。
ヨーンズとヒャラルラは実質サポート無しで戦ったのに討伐数は多く、一番はヒャラルラだ。
「そんなこと言うなよな。これでも頑張ってるんだから」
「ああ、俺も少しは見直したぞ。いつの間にか、スキルも習得してるし」
戦闘様子を見ていたディレットが声をかける。
「へへっ。新しいラステム『SPポット』を習得したんだ。
これで必要なSPが足りて《パワーギア》を取得したんだ。
何にするかスゲー迷ったぜ」
「スキルを使いこなすためにも、お前はもっと、いろんな奴とやったほうがいい。
今回、尻もちついたのも棍棒の扱いにまだまだ不慣れな部分が多いとみた。
今日からトランプやボードゲームで遊ぶ時間があるなら、誰かと模擬試合でもしたらいい」
「ええー。休みは大事だよ、ディレット」
「今日は、とりあえずヒャラルラとやったらどうだ?
あいつ今日は興奮して寝れないんじゃないか?」
ディレットにそういわれたビスクはヒャラルラを見ると鼻息荒く、まだ両手に血が滴る手斧を握ってたたずんでいた。
「……勘弁してくれー、今日はもう疲れたよ。早く『スカーレットハート』取ってキャンプ地に帰ろう」
「なら、さっさと解体を済ませるんだな。
肉は毒性が強くて俺たちは調理しないと食えないけど、金になるから八体ぐらい解体してくれ。
残りはスライムの餌だ。一箇所に纏めてくれ。あと、武器の手入れも面倒くさがらずにちゃんとするんだぞ」
最後のディレットの言葉に何を思ったのか、ビスクが「お母さんみたい」っと言ったら、ディレットに電撃パンチを食らった。ビスクであった。
その後は、皆、割と静かに作業して、キャンプ地へ戻り一日を終えた。




