第三章:第六話
店に着き店内を窺うと多くの客が入っていて食事が出来るか心配したが、二階に空席があると店の者にいわれ二階へと向かった。
十人は座れそうな長テーブルに通されメニュー表が置かれる。
一番端にディレットが座り、その左側にアディルト、ビスク、ヨーンズ、右側にクーア、ゼフ、ヒャラルラが座った。
まずは飲み物を先に頼むのが酒場のルールだ。
ディレットも普段、酒は飲まないが今日は飲むことにする。
黄色い炭酸酒『アワワ』。すっきり切れ味、のど越しワンダフルな飲み物だ。
全員がアワワを注文してアワワがくるまで、つまみをそれぞれが考える。
「あっ! 『でっかいアスパラ』がおすすめだって美味そう。
でっかいアスパラ食うやつ他にいる?
……うん、じゃあ三皿頼むな。ディレットは何食うんだ?」
ビスクがテンション高くメニューを決めていく。
「俺か……、グラタンを食べるかな」
そうしていると、店員が木製づくりのコップに注がれたアワワを全員分持ってやってくる、テーブルの中心にドン! っと置いた後、注文を聞いてくる。
ヨーンズとヒャラルラがコップを配り。各々注文をする。
注文を終え、コップを手に取り六人がディレットを見る。
「うん? 何か言うのか?」
「ここは何か一言いって乾杯でしょう」
クーアが言って皆が頷く。
「メンドクサイ文化だな。んー、今回アディルト、ヨーンズ、ビスクとパーティを組んで無事依頼を達成できてよかったとそして感謝する。
次のことは今日は聞かないがまた俺は組みたいと思っている。
クーア達は、次よろしくな。ってことで――乾杯!」
「「「「「カンパーーーイ!!」」」」」
各々コップを合わせアワワに口をつけていった。
一気に飲み干すヨーンズ、ビスク、クーアが直ぐにアワワを注文した。
「プファー! うめぇー! ヨーンズは分かってたけどクーアも強いの?」
「ん? まあ、それなりにな……」
「そんな強くないだろ、前回飲んだら次の日、死にそうにしてたじゃないか。今日は飲みすぎるなよ」
「世話をする身にもなって」
ビスクの質問に対して答えたクーアだが、ゼフが前回のことを思い出し、渋い顔をしてクーアに苦言をしてそれにヒャラルラも追従する。
「ヒャラルラは世話なんてしてくれてないだろ? なんかしてくれたっけ?」
「水を持っていった」
「それぐらい、いいじゃない……
それでビスクはどうなんだよ、どれくらい飲めるんだ? 勢いよく飲んでるが……」
「う~ん。多分、俺こんなに飲むのは初めてかもしれない。
前世はよく覚えてないし、こっちじゃ貧乏だったから飲むにしても一杯ぐらいしか飲ませてもらえなかったから」
「えっ!? それ完全に酒に飲まれるパターンだよ。前回の俺コースだよ。ヒャラルラに氷水頼むことになるよ」
「そんなことないよ。大丈夫だよ。まだ酔ってないよ」
ビスクの語尾の「よ」の返しと発音に若干イラッとくる一同であった。
少し時間がたった後、頼んでいた料理が順次、持ってこられた。
「あっ! でっかいアスパラきた。美味そう。
うん、ウメェー! バターと塩コショウの味付けが効いてて美味い。
でっかいけどアスパラの味もしっかりしてて柔らかい」
一皿にでっかいアスパラが三本のっており、それを一皿専有したビスクは一口食べてはアワワで流し込むことを繰り返す。
「……そんな飲み方して、どうなっても知らんからな」
「ディレットまでそんなこという。
じゃあ、ここは酒のエキスパートである、ヨーンズ先生に飲み方のご教授を願おうじゃありませんか。先生!」
ビスクがそう言ってヨーンズの方へ向くと目を閉じて薄っすら涙を浮かべるヨーンズの姿がそこにあった。
「……ヨーンズは、なんで泣いているんだ? そんなにアワワが美味しかった? 討伐中はこんなに炭酸系は、なかなか飲めなかったもんね。アルデレには辛い仕事だね」
ビスクは、そういいながら同情的な目をヨーンズに向けると――
「アルデレじゃねぇ!」
バシッ! っとヨーンズに頭をシバかれたビスク。
痛かったのか静かになって、料理へと関心が向き食事に専念しだした。
ちなみにヨーンズが泣いていたのは、少し泣き上戸なところとアワワと焼き鳥のコンボが美味かったため。
「ところで次の討伐では数はどうする? 百にするのか?」
少し酔いが出てきたゼフがディレットに質問する。
「このメンバーで行けるなら二百だな。まあ、まだわからんが……」
ディレットは熱が落ち着いてきたグラタンをホークに取り、さらにフーフーして冷ましてから食べ、モグモグしながら答える。
ディレットの言葉に他五人がアディルトを見てしまう。
それに気が付いたアディルトが「んっんっ」っと口に手を当てて軽く咳をすると意を決したように言葉を続ける。
「まあ、私がパーティを転々とするのは色々な人達を見てみたいと言うのが理由なんですが、このパーティはまだまだ面白そうですからね。次もよろしくお願いします」
そういった後にディレットをほうをチラリと見て、いつの間にか飲む酒をアワワからワイン変えていたアディルトは何事もなかったようにしてワインをゆっくりと口に運んだ。
「おー、なんだよ。てっきりパーティから抜けるとかと思っちゃったよ。
引っ張る意味あったのかー? でもよかったよ。このパーティで次も仕事出来るんだな。もう一回乾杯しよう!」
と、完全に酒に飲まれているビスクが酒杯を片手に乾杯の形をとると――
「おい、ビスク。俺はまだ残るか言ってないぞ」
と、ヨーンズが声を上げた。
「……もういいって、アルデレは流行らないから。
それとも本当にパーティから抜けんの? その孤立癖を受けとめてくれる奴はなかなかいないと思うよ? ヨーンズ新しいパーティで上手くやれるの?」
「ぐぬぬ、でき……まあ、もう少し残ろうとしよう」
「ハハッ! 聞いたかディレット! これで決まったな。二人とも残るって。乾杯しようぜ乾杯!」
「ったく。強引な感じは好きじゃないんだが……
しょうがない乾杯でもして結成を祝うとするか。
じゃあ一人ずつなんか言ってってくれ……クーアから」
「えっ!? んーあーそうだな。まだ小さい大剣だけどピンチになったら、俺の大剣が切り開いてやるから大船に乗った気でいてくれ」
クーアは、そういって胸を叩いた。
「自分は、あまり目立つことはせずクーアとヒャラルラのクッション材として動いていこと思いますので、過度な期待はしないようにしてください」
ゼフは、少し酔っているにもかかわらず小難しく答える。
「切り込み隊員として頑張る」
ヒャラルラは、戦闘風景を思い浮かべているのか『ニー―ー』っと笑い顔を浮かべていった。
「後方でサポートしていきますが、私の活躍も残して下さいね」
アディルトは、落ち着いたようにいい。
「俺のアスパラとアワワで大暴れしてやるぜ!」
ビスクは、酒に飲まれていて話にならない。
「俺待ちみたいな感じになってしまったが、これからもよろしく頼む」
ヨーンズは、少し硬い表情でいった。
「ふむ、全員回ったけど、ヒャラルラは切り込み隊員に任命した覚えは無いからな。
なるべく一番手にするとは言ったけど。
まあ、それはまた今度にするか。――それじゃあ乾杯」
「「「「「カンパーーーイ!!」」」」」
この後、たわいない話を続けながら酒と料理と楽しみ打ち上げを終えた。




