第二章:第二話
「……俺、生きて戻ってこれるよな?」
旅車の窓からビスクが、外側から見える外壁門を見つめて呟く。
「――無茶な戦いをするつもりはないから安心しろ」
「フンッ。怖いなら荷物番でもするか?」
「注意を怠らなければ大丈夫ですよ」
ビスクの呟きにディレット、ヨーンズ、アディルトが答えた。
「ああ、ごめんちょっと憂鬱になっちゃたかな。
しかし、討伐に向かうまでに金がかかるよなー」
「――そうだな。俺は、蓄えがあったから平気だっだが、ビスクとヨーンズは蓄えはあったのか?」
「いや、ほとんど無いから組合で借金だな」
「俺も、借金から始まる人生だよ。
あーあ、はやく大量金貨取得イベントか何か起きて金に困らなくなりたいんだけどなー……
もう少し経ったらフラグが立つのかなー」
「……ビスクが、ちょっと何を言っているかわからないが、借金? 討伐者組合から金って借りられるのか?」
「ええ、新人の討伐者を対象に金貨五枚まで借りることができますよ。
五年間利子などはありませんが、貸借料として金貨五枚の場合、金貨一枚上乗せさせられます」
「ふーん、ビスクはちゃんと返すのか? 踏み倒したりはしないのか?」
「なっ!? 失礼な、ちゃんと返すよ。じゃないと奴隷行きになるんだから」
「ビスクのいう通り、契約時には、返せない場合の奴隷契約と逃げられないように呪いの契約もするそうですよ」
「念入りだな……」
「防具に武器、野外道具、宿、移動や契約にも金がかかるしさ。
討伐者になる事態、なんかの罠に感じるよな――」
と、ビスクが愚痴をこぼす。
「大変だな。まあ、討伐者の稼ぎなら一、二年もあれば返せるだろ」
「ぐうっ。簡単に言ってくれる。
……まあいいや。ディレットは、どうして蓄えがあったんだ?」
ディレットは、行商のことなどを三人に話し終わると、
今度は、それぞれの魔属性の陣魔法を用いないで自然に扱える魔法、『常用魔法』に話題が移り、ビスクから話をしだした。
「ディレットの『空間常用魔法』は、いいよなー。
『光』の常用魔法なんて《モデストライト》」
ビスクが《モデストライト》と、唱えると手から光を放つ。薄暗かった車内が明るくなった。
続いて『地』の常用魔法と、ビスクは唱えると手から少量の砂が現れる。
「『光』の属性を知った時は『光の勇者かよ!』って喜んだけど、
『光』と『地』って人間種族じゃ、一番取得が多いらしいじゃん。
『地』もこんな感じだし、『砂かけ爺かよ!』って空にむかって砂を投げつけたことは、今だ覚えてる思い出だなー……」
そういって遠い目をしながらビスクは、手のひらにある砂を旅車の窓から、そっと風に任せ捨てる。
「――ググッ!? グモォォォーーーー!!」
後列にいた旅車を引いているリモスティが、その砂の被害にあって苛立ちの声を上げた。
「…………」
そのリモスティの声を聴いて後で謝ろうと思うビスクであった。
「私の場合も常用魔法だけでは、それほど役に立ちませんね」
そういってアディルトは、『闇』の常用魔法である《ダークアイ》を発動させるとサングラスのようなものが顔に現れて目を覆った。
それを見たディレットとヨーンズは笑い顔を浮かべ、ビスクは声を上げ笑った。
「――それ、眼球に直接つける感じにもできるんだろ?」
と、ディレットが問いかけた。
「――フフッ。まあ出来ますが、この形も気に入ってるんですよ。
能力は、光源を抑えたり、初見では今のようにちょっとしたコミュニケーションにも使えます。
『火』は、ここでは発動を控えますが、小さな火を出せるものです。
野外などでは火種には困りませんので、重宝はしますね」
アディルトが話しを終えて、次にヨーンズが口を開いた。
「『酒』は、酒を飲むのに強くなったり、美味く感じるなど酒飲みになる属性だな。
『常用魔法』として出来ることといえば、『ソーマ』を創造出来ることかな」
「ソーマ!? それって凄いものなんじゃない?」
と、ビスクが興味ありげに声を上げた。
「――そうだな。まず三つの品質の物を作ることができる。
品質が高いものは必要とするマナも多くなる代わりに効果も高くなる。
それと、マナだけでは作れなくて、作成用の『ソーマ媒体酒』を用意する必要もある。
効果は、品質が一番下の物で『魔回』分のMP回復と肉体疲労回復[小]だな」
「――微妙に感じるが、MP回復薬の青ポーションが一番安くて金貨一枚だからな。自作出来たら儲かるんじゃ?
……なんで借金あんの?」
「ああ……まあ……
家にいる間は、それほど多くないが作ったものは全部家計の足しにしてもらってたんだ。
家を出てからは、マナが貯蓄できてないから作っていない。
『ソーマ媒体酒』を買うにも一本銀判貨五枚もするしな。
それに、希少なものでもあるから売っていない場合がよくあるんだ」
「――じゃあ、『ソーマ媒体酒』とマナの条件が揃ったら俺に売ってくれ。もちろんパーティメンバー割引にしてくれな!」
「ッ私にも売って下さい。『魔道』特化にしている私にとってMPは死活問題なんです。もちろんパーティメンバー割引で!」
ディレットとアディルトが今までにないくらいにヨーンズに勢い込む。
「ああ……
とりあえず直ぐには無理だな。条件が整ったらまた知らせる。
だが、これからは戦闘をしながらになる。
だから、思ったようにマナを蓄えられるかわからん、気長に待っていてくれ」
「――問題無い。MP回復薬を少しでも安く買えるなら……
アディルトとは、後でジャンケンでもして先に買う権利を決めようか」
「――フフフ。これは負けられない勝負となりましたね……」
「……ヨーンズもこれで借金返済の目途がついて良かったね。
俺はまだ、目途が付かないけどね……」
「腐るな。さっきもいったが一、二年くらい頑張れば問題ないだろ」
「……はぁ~。まあ、しょうがないよね。
ところで、ディレットの『雷』の常用魔法はどんなことが出来るのさ」
「――簡単にいうとちょっとした電気を体中から放出できる。こんな風に――」
と、いってビスクの手に触れた。
そうするとバッチッと微かに音が鳴って、ビスクは「うわっ」と驚き、大した痛さではないはずだが、少しオーバーに痛がる様子を見せた。
「――ちょー。なんでも試さなくてもいいから……」
「――ん? そんなに痛かったか? あとは応用して電気マッサージとか出来るぞ。試してみるか?」
「……いいよ。痛そうだから――」




