第一章:第七話
翌朝。
ディレットは、朝食を食べ終えるとヨーンズの部屋に向い扉をノックする。
出てきたヨーンズは、無表情な顔で軽く挨拶をする。
が、ディレットは感じ取る。これは眠たいのだと。
簡潔に今日の予定を伝えるとヨーンズは了承して扉を閉めていった。
◇
そろそろ約束の時間となるので、予約した中央棟三階にある部屋へと移動を開始する。
借りた個室は、大人十人は入れそうな広さで長四角の形をした机とイスが備えられていた。
ディレットは、机の先端位置、上座に座った。
そして、アディルト、ビスク、ヨーンズの各々は、その左右の席に着いた。
部屋の広さから四人では寂しく感じたが、ディレットは関係なしに話を始めた。
「今日は、急な呼び立てに応じてくれて礼を言う。
パーティ結成に関してだが、特に俺から要求等はない。
各々自己紹介をしてもらって問題ないようならパーティを結成して、そのまま討伐依頼を受けたいと思う。
報酬に関してだが、戦果などは関係なしで四等分でいいと思っている。
まあ、気が合えば次もよろしくってことだ。
……じゃあ、何もなければ俺から自己紹介をしたいと思う」
ディレットは、一度話を区切り各々の顔をみる。
ヨーンズが目をつぶっているので寝てないか気になる。
他の者も特に何もないようなので話を進めた。
「種族はテパレスで名前はディレットという。
主軸ラステムは、『ウォーリア[2]』と『ウォーメイジ[2]』。
槍を使い前線で戦うことを得意としている。
魔属性は、『空間』と『雷』。
『空間』で、所有しているものは、
『ケース』、『ボックス』、『ロッカー』、『クローゼット』をそれぞれ一つ。
『雷』で所有しているものは、《ライトニング》だけだな。
……これくらいか。他に何かあれば答えるが、何かあるか?」
「『空間』魔属性の所持者には会ったことがないので、
『ケース』、『ボックス』などに関して詳しく説明してもらえますか?
『カの領域』とは違った収納空間というのは知っていますが……」
「俺もよくわからなから教えてよ。
『カの領域』もついでに知らないことが、あるかもしれないからお願いね」
アディルトが説明を求めて、ビスクがそれに付随した。
「仕方がないから一緒に説明するが『カの領域』は、後で図書館にでもいって自分でも調べろよ」
そういってディレットは、説明を始めた。
【カの領域】
『カ』は漢字の『力』ではなくカタカナ。
『シューレムア』界に住む全ての知的生命体は、持っているといわれている。
一種の収納空間である。物と特定のマナを収納、貯蔵できる。
また、特殊な魔具を使用するために利用もする。
この収納空間に収納された物は、所持者の情報に染色されることがある。
収納者は、中に入れたものを独特な感覚で感じることになる。
収納量は、KP(カの領域・ポイント)というステータス項目があり、この数値を上限に物を出し入れができる。
『カの領域』へ収納する物には、それぞれ占有するKPが設定されている。
物の重量と付加されたマナ量を合算したものが大体のKPとしての値とされている。
MP二千に対してKPは一、重量は一グラムに対してKPは一と目安になっている。
ただ、魔法に関する道具、武器などでは、この目安は当てにならない場合が多くあるためにあくまでも目安としたものである。
外界(『カの領域』外)の影響は、現実時間の一日ほどの時間間隔で受ける。
暖かい飲み物も一日経過するごとに、温かさが徐々になくなっていく。と、いったもの。
所持してるKPは、ノーマル状態の人間種族の場合、だいたい三百もっているとされる。
通貨である銅貨、銀貨などは一律KPが十五なので二十枚を格納できる計算。
ただ、高価だが収納能力がある魔具(『魔法の袋』など)も一般に売っている。
そのためこの領域には、
使用する特殊な魔具。
自身の情報に染色する。
特定のマナを蓄える。
非常時の道具などを入れておく。
などの利用を主に考えるものが多い。
KPの上限を増やすには、主に『魔道』系、『サポート』系のラステムを取得、ランクを上げることで可能となる。
駆け出し中で金の無い者は、この領域に何を入れておくかが運命の分かれ道かもしれない。
駆け出し討伐者の多くは、
保存食、薬類やポーション類、弓を使うものは矢、
などを入れているものが多い。
ちなみに、通常価格が金貨二枚の『魔法のポーチ(ポーションだと六本程入る)』を討伐者は討伐者組合館などで一人一つに限り半額で買える。
【常用魔法と陣魔法】
各魔法には、二パターンある。
一つ目は、『常用魔法』と呼ばれるもの。
各属性の微弱な魔法を特に条件もなしに扱える。というもの。
これには『各マナを貯蓄』する行為も入る。
貯蔵に関して注意する点としては、
『空間』のマナとして貯めたマナは別系統の魔法のマナとしては原則扱えない。
と、いうこと。
二つ目は、『陣魔法』と呼ばれるもの。
これは、マナを使って魔法陣という魔法回路を描画するもの。
描画の仕方によって、いろいろと用途が変化したり動作が変わったりする。
ただデタラメに描画しても意図しない結果や不発に終わる。
魔法学者、研究者などは、叡智を結集し試行錯誤を繰り返し、その規則性を発見、解明していく。
その研究結果から生まれたものをさらに第三者が取得できるようにもした。そのおかげで第三者は条件を解決さえすれば簡単に取得できるようになったのである。
現在の『陣魔法』は、主に購入して扱えるようになっている。
販売されている『陣魔法』は、石版型のような形で水晶の様に透明であり淡藍色がついているのが一般的。
これを自身の『カの領域』入れると取得が可能となる。
この時にMSPの使用と『頭脳値』というステータス項目を占有することが条件となるので無闇に取得は出来ない。
【魔属性:空間】
現在、分類され知られている魔属性は、二十一種類で『空間』はその一つ。
各収納空間能力を取得する行為は、『常用魔法』に分類される。
一定のマナを貯蔵して、消費使用することで各収納空間能力を取得できる。
収納ルールは『カの領域』とは異なる。
現実世界と同じで決めらた範囲内に物を入れることができる。
重量、マナ量は関係なく形や大きさが関係をする。
取得できる収納空間能力の一例として四点のものを上げる。
一つ目、『ケース』:
ポーション十本程度収納できる。今のディレット場合、取得には約二ヶ月間貯めたMPが必要。
二つ目、『ボックス』:
高さ、幅、奥行きの内寸がそれぞれ一メートルある収納空間。取得MPは『ケース』の約三倍。
三つ目、『ロッカー』:
『ボックス』を縦に三つ並べたような収納空間。取得MPは『ボックス』の二倍以上。
四つ目、『クローゼット』:
ボックスを縦に三つ、横に四つ並べたような収納空間。取得MPは『ロッカー』の二倍以上。
この空間は、外界の影響を受けず温かさ、冷たさ、鮮度、腐敗などの変化は起こらない。
そして、魔力抵抗をするものは、この空間に入れることはできない。
この他にも特定の収納空間を取得することにより得られるスキルもあり、『陣魔法』として売っているものもある。
◇
「――どうだ。かなり丁寧に説明してやったと思うが……」
「ええ、よくわかりました。ありがとうございます」
「……要するに、みんなが使える『カの領域』には少ないながら物が入り便利だね。
収納空間能力は、いろいろ種類があるけどマナ貯め作業が必要だから、地道に取得して増やしていくものってことでしょ?」
「そうだけどさ……
いろいろ足りないがまあ、そんな感じで覚えておけ。
じゃあ、自己紹介に戻ろう。ビスクからでいいよな」
「――俺からか。ンンッ、ででは」
軽く咳払いをした後、緊張した感じでビスクは話しだした。
名前:ビスク
性別:男
年齢:十三歳 ※誕生年で成人扱いになる。
種族:人間(転生人)
主軸ラステム:ハーリア[2] ※[]内はランクを表している。
主武器:棍棒
魔属性:光、地
「『ハーリア』は、一応説明すると棍棒や槌の武器を得意とするラステムだな。
それと先月位からここに来たんだけど、まだ実戦には出たことがないんだ。
頑張っていくから、よろしくな」
自分の紹介は、終わりましたよと、隣にいるアディルトへ顔を向け自己紹介を促す。
アディルトは、その動作を捉えて自分の紹介を始めた。
名前:アディルト
性別:男
年齢:十五歳
種族:ダークエルフ
主軸ラステム:ウィザード[3]
主武器:描陣魔具
魔属性:闇、炎
「通常、討伐者や冒険者になる者は、
『武道』のラステムも取得して近接の防衛にも力を割くものが多いですが、
私は、『陣魔法』の扱いを高めるラステムにのみ集中して取得しています。
ですので、防衛をお願いすることがあると思いますが、その時はよろしくお願いしますね。
まあ、下位のモンスターには今のところ危機を感じたことは少ないですが……」
ディレットは、アディルトの紹介が終わったと思い、ヨーンズへ視線を向けた。
まだ目を閉じているので一応、声を掛ける。
ちゃんと起きて、聞いていたみたいで目を開け自己紹介を始めた。
「――ああ、わかった」
名前:ヨーンズ
性別:男
年齢:十三歳
種族:人間
主軸ラステム:サムライ[2]
主武器:太刀
魔属性:光、酒
「特に話すことはないな。腕前は戦場で見てくれ」
ヨーンズは素っ気なく自己紹介を終えた。
「――っと、いう感じで自己紹介はいいか?
ないなら次は、依頼の進め方に関してなんだが……
最初のやりとりをアディルトから説明してもらってもいいか?」
「――構いませんよ。
では、まず討伐依頼は、モンスターの強さを表す下位、中位、上位などの階位から選びます。
ですが、ここニニギ街の近くは下位の多発地帯しかありません。
ですので、自動的に下位モンスターの討伐になりますね。
次に、討伐数ですがこれは自分達が討伐数を設定するのではなく、
討伐者組合側が用意した三つのコースから選びます」
詳しくは、といってアディルトは三つのコースを説明した。
一つ目、討伐依頼[小]:
討伐数は百体。期間は六十日。報酬額は金貨三枚と銀貨五十枚。
二つ目、討伐依頼[中]:
討伐数は二百体。期間は八十日。報酬額は金貨八枚。
三つ目、討伐依頼[大]:
討伐数は三百体。期間は百日。報酬額は金貨十二枚と銀貨五十枚。
「――っと、なっていて討伐数が多い依頼を選んだ方が報酬も多くなっていきます。
依頼の下位、中位と位が上がることで討伐数、期間、報酬額もまた変わってきますね。
期間は、割と多めにとられていると思いますので心配いらないでしょう。
ただ、依頼を受けた時から日数がカウントされ、納品が完了した段階でストップしますから、この街から多発地帯へ移動する往復二日ぐらいは期日の考慮に入れといてください。
後は……多発地帯の近くに様々な組合が融資して作られた『討伐者の村』があります。
最初は、ここを拠点と考えて討伐を進めていくことが、よいと思いますね。
……このぐらいでしょうか。
後は、何かあればその都度、いってもらえれば答えますよ」
「ふむ。ありがとう。
まずは、討伐依頼[小]で依頼を受けるが反対は、ないよな?」
一同は頷き、了承する。
「次は、食料に関してだが、みんなはどうする?
村があるならそこで食事することも可能なんだろ? アディルト」
「可能ですが、物価の通常は、この街の二~三倍はします。
酷いところは、もっとしますね。
ですから、できる限り食料は、この街で買って、持ち込んだ方がよいです」
「――マジかよ! 仕事してるのに破産しそうだな」
「確かに、駆け出し討伐者にはキツいな」
アディルトの言葉にビスク、ヨーンズが顔を顰めながらぼやいた。
「食料に関しては自炊するとして食材は俺が買っておこうか?
それとも各自、準備するか?」
「お願いします!」
「私からもお願いします。
討伐者としては食料問題は、かなり大きいんですよね。
収納系の魔具を購入したいんですが今はまだ、お金に余裕がないですから」
「頼ってしまって不甲斐ない。俺も頼みたい」
ビスクが、いの一番に返答して、アディルト、ヨーンズもディレットに願い出た。
「食料を持つのはいいが、朝、昼、晩と自炊するわけにもいかないだろ。
だから自炊をするのは基本晩飯だけ、後は栄養価が高い保存食の『スティックレーション』で済まそうと思う。
『スティックレーション』分は、それぞれが各自管理して欲しい。
かさ張る場合は、言ってくれ。収納できたらするから。
ただ、なにがあるかわからないから全部を預けるなよ」
「……では、今日と明日は各々の準備期間として、
明後日には討伐者組合館に行って依頼を受けることにするが……いいか?」
一同、問題ないようなのでこれでお開きとなった。
「明後日、朝七時に組合館前に集合。遅刻したら置いてくからな」
その言葉を聞いて、ヨーンズとビスクが顔を顰めながら返事をして部屋を出ていった。
そんな状況を見つめながらアディルトが話かけてきた。
「面白い方達ですね。問題なく依頼がこなせるよう私も力を振るいますよ。
ところで、私はある程度、準備ができていますから、なにか手伝えませんか?」
「――それは助かる。……そうだな。
肉や野菜をまとめて買えるところを教えてくれないか」
「ええ、構いませんよ。これから行きますか?」
「ああ、昼食でも食べてから行こうか」
ディレットは、そういって二人は部屋を後にした。




