第一章:第六話
ビスクとの話で一ヶ月も募集が集まらなと聞いてベンチから腰が上がるのが重くなってしまったディレットは、またまた空を見ていた。
しばらく、そうしていると木刀を持った男が庭へやってきて離れた場所で素振りを始めた。
ディレットは、なにげなくその男へと視線を向ける。
よくよく見てみると、前日食堂で酒を飲んでいた同い年位の男であったことを思い出す。
一心不乱に素振りを繰り返す姿は様になっていて、ついつい見続けてしまう。
そうしていると、男が視線に気が付き、ディレット方へと歩いてきた。
「よう、……昨日も見てたな。どこかで会ったか?」
「ああいや、ただ偶然目に入っただけなんだ。邪魔をしたようなら悪かったな」
「……邪魔ってわけじゃないからいいんだが、お前最近ここにやってきただろ? 近接系か?」
男が脈絡なく、戦闘スタイルを聞いてくる。
「ああ、昨日から世話になってる。近接、中距離型かな?」
「そうか、なら一勝負どうだ?」
二本持っていた木刀の片方を前に突き出して木刀での勝負を明示してくる。
「……俺って手加減が苦手だから、止めた方がいい」
「――ハッ、嫌いじゃないその煽り」
男が持っていた片方の木刀を投げて寄こす。
木刀を受け取った瞬間を見計らって男がディレットの頭部に向かって打ってくる。
だが、ディレットは難無く受け取った木刀で防いだ。
「――煽りではないのだが。俺も嫌いじゃないその先制」
数度、打ち合いながら開けた場所に移動した後、ディレットと男は互いに少し距離をとった。
「お前、ラステムの力を使ってなくて今の技術があるんだろ? どこかで習ったのか?」
【ラステム】
四柱の女神から授かった知識、『ラステム』と同じ名称で、知識だけを指して呼ぶ場合は、『ラステムの知識』という。
能力は、ステータス値が加算されること。
人類は、もともと誕生したとき『ラステム』をもっているが、これは『バースラステム』と呼んでいる。
『ラステムの知識』をもとに『バースラステム』以外にも『ラステム』を複数得られるようになった。
ラステムには、いくつかのタイプがある。
ここでは、3つのタイプを紹介すると。
一つ目は『武道』、主に格闘や近接武器関係でのステータスを上昇するもの。
二つ目は『魔道』、魔法(陣魔法)関係でのステータスを上昇するもの。
三つ目は『サポート』、各個別のステータスを上昇するもの。
『武道』には、武器を扱う時の技能補正をしてくれる『戦技』という一つのステータスがある。
これには剣、槍、斧、太刀など武器で闘う時に技能を補ってくれるものだが、各ラステムで恩恵を受けられるものが決まってくる。
例えば、
『ウォーリア』と『サムライ』のラステムには同じ『戦技』ステータス付くのだが、
『ウォーリア』は剣、槍、斧を扱った場合のみ『戦技』の恩恵を受け、
『サムライ』は太刀、槍を扱った場合のみ恩恵を受ける。
『サムライ』が剣、斧を扱った場合には恩恵は受けない。
武器に関する技能は全て『戦技』にまとまっている訳ではなく。
打撃系武器は『打撃戦技』、格闘系は『格闘戦技』などがある。
この『戦技』の力と修練などで得た技術は、ほぼ同じものだが『戦技』の場合、ラステムの力を引き出さなくては恩恵は受けない。
『戦技』項目があるラステムのランクを上げることで技術も高くなっていく。
【AP(『アの力』・ポイント)】
ステータスの力は、体に元から備わっているものと各ラステムに付加されたものとがある。
また、道具などに付加した物を装備することで上昇することもある。
ラステムの力を引き出すにはAPを使ってラステムの力を発動する必要がある。
発動消費APは、総ランク数やアビリティスキルなどで増減する。
一度の持続時間は、五分程で個別にラステムの力を発動するということは出来ない。
APが続く限り何度でも発動することは可能だが、APがゼロになると『気絶状態』となる。
このAPは、スキル発動にも使われるためにAP管理をして戦わないと死に繋がる。
APの回復は、ラステムを解放していない時に、ステータス項目の一つ『体力』が関係する。
一分ほどで『体力』値の大体十パーセントがAPとして回復をする。
APの最大値を上げるには、AP項目があるラステムの取得、ランクを上げることで可能となる。
◇
「いや、主に母上の教えだけだな。母上も独学だったと思うが……
そっちはどうなんだ?」
「俺も道場とかの稽古を盗み見ていたぐらいだから、独学と変わらんな」
そして、話は終わりとばかりに再度打ち合いが始まった。
ディレットは、力押しが強い剣で相手を攻める。
変わって男の戦い方は、上手く力を捌き反撃にでる戦い方。
だが、その反撃をディレットは、予想しているように難無く防いでいった。
互いに全力ではないにしろその打ち合いに観客が出だしたので、お互い木刀を納めることにした。
「――ッ、見世物になるのは好きじゃないんだ」
「なかなかやるな。名前を聞いてもいいか? 俺は、ディレットだ」
「――ヨーンズだ。お前、パーティ募集してんのか? 俺とどうだ?」
「問題ないな。ただ今は募集している最中だから、また連絡するよ。部屋はどこだ?」
「この棟の三階、部屋番号はD二三だ」
「わかった。ところで、ヨーンズは募集とかしてないのか?」
「俺も募集は掛けているんだが集まらなくてな。だから渡りに船だ。
それと、夜はバイトが入っていて部屋にいない場合があるから、悪いがその時は朝にでも訪ねてくれ」
「お前もバイトやってるのか……」
「じゃあ、俺は行くから連絡待ってる」
「ああ、わかった。じゃあ」
ヨーンズと別れディレットは、もういい時間になったと思い受付ロビーへと向かうことにした。
受付の女性に募集状況を聞くと二名の名前があり確認するとついさっき会ったばかりの二名であった。
軽く話し合いをするために、中央棟の三階で個室を無料で借りること(予約必須で最大2時間まで)ができるので、そこで明日十時に待ち合わせをすることにした。
フロアの置き時計を見ると十七時近いことを知る。
晩飯には少し早いと思い別棟にある図書館の様子でもみて時間を潰し、次にシャワー室へ行ってから食堂へと向かった。
ヨーンズのことを軽く見て探したが、いなかったので食事をすませてからヨーンズの部屋へ行くことにした。
ヨーンズの部屋は、ディレットの部屋のバルコニーから右向かいにある所だったので、夜などは部屋明かりで確認することもできることを知った。
扉の前ついて、ノックをする。しかし返事がなく留守のようだった。
「バイトか?」と思い。
仕方がないので、明日の朝にでも再度訪問することにした。




