第一章:第五話
アディルトが去った後もベンチから腰が上がらないディレットは、また空を見ていると陰鬱な雰囲気を纏った男がベンチの隣に腰を掛けてきた。
そろそろ募集状況でも聞きにいこうと腰を少し浮かした上げたその時、
隣の男が独り言なのか、話かけているのか、わからない感じで声を発する。
「俺って、この世界の主役じゃないのかな?」
「――んあ?」あまりに脈略がないことを言われて素っ頓狂な声をディレットは出してしまった。
そして、それが悪かったのか男が顔を向けて気安く話しかけてくる。
「俺って『転生人』なんだよ!」
【転生人と渡界人】
『シューレムア』界には、『転生人』と『渡界人』と呼ばれる者がいる。
どちらも主に『地球』と呼ばれる世界。『シューレムア』界に住む者は『テラ』と呼ぶところからやってくる者達。
『転生人』は、
『シューレムア』界で赤子として産まれ、育った者であるが、前世(地球)の記憶が残っている。
しかし、赤子から幼少期の間に記憶がおぼろげになってしまい、前世の記憶は夢でみたようなあやふやとした記憶である。
『渡界人』は、
『テラ』界で生活していたものが突然、『シューレムア』界に転送されてくるという者達で、その時に容姿も変化するという。
記憶は引き継がれるが、転送される直前の記憶が無く。どういった経緯からこちらの世界に転送されたのかは不明。
『転生人』、『渡界人』ともに能力は、『シューレムア』界の人間種族と変わらないが、『渡界人』は転送された時点で複数のラステムを取得していることがある。
だが、誕生時に取得している『バースラステム』と呼ばれるものは、一つしか取得していない。
どちらも『テラ』界での生存期間は、十四年以下だという。
◇
「……へー、割と多いって聞くよな。俺は初めて会ったけど」
ディレットは、浮かした腰を再びベンチに下ろし相手の話に付き合うことにした。
「ううっ! なんで俺は、始まりの転生人じゃないんだよ……
頑張って十四年、こっちで生きて討伐者になったのに、
やっぱり王道の冒険者になったほうが良かったのかな?」
「――んん? なんで、そう思っているのか知らないが、
討伐者の方が戦闘数と金を稼ぐにはいいだろう。
財宝とかを目的にするなら話は変わるが」
「……討伐者組合の方が冒険者組合より金回りがいいって聞いてさ。
利にさとい子なら大体こっちだろうと、女の子もこっちの方が多いと思ったんだ。
ああ、俺って間の抜けた感じの子やドジっ子も好きだけど、戦闘する仲間でそういったのって死亡フラグじゃん?
だからちょっと頭が働く子がいいと思ってるんだ。
それに脳筋の女はちょっと好みじゃないってゆうか……
あっ。でも好きっていわれたら真剣に考えるよ。けどさ、俺としては落ち着いた感じが一番いいかなーって。でも、それは戦闘仲間と考えると頼りなくなっちゃうかなーって。難しい問題だよ。うん。
だけどさ、俺は今だけじゃなくて後をちゃんと考えていきたいと……ん? 聞いてる?」
「……聞いてるが、お前の好みはどうでもいいな」
「……うん。そうだよね。
えっと……それで言いたいことは、パーティ募集を始めて一ヶ月経とうとしているのに、一人も女の子の募集が来ない! なぜなんだ!? ってこと」
「一ヶ月!? そんなに募集は来ないものなのか……?」
「……ああ、来ないよ。
まるで世界から俺だけ除け者にされたような気分だ……」
「――それは不味いな。
俺も募集をしたばかりなんだが一人も来ないとなると辛い……
俺は、ディレットという。
今、パーティ募集をしている最中なんだ。とりあえず、お前みたいなのでもいいから良かったら募集を見てくれ」
「……。なんか失礼なこといわれた気がするけど……そうだな。
もうアルバイトだと限界も近いし、現実を受け入れないとな。
男でも仕方がないのかな……
俺はビスク、話聞いてくれてありがとう。
もういくよ、じゃあ……」
そういってビスクは、トボトボと去っていきディレットはその背中を見送った。




