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70話

「さて、どうだった?」


 疲れた笑みを向けるリュウは、もうとても支配者の様には見えなかった。

それは、カイルがリュウのことを絶対的な支配者ではないと認識したせいかもしれない。


「なんだ、あの化け物は?」


「……人類の敵だ」


 人類の敵、しかしそれはブレイスを支配しているらしい。

なら、その発言は間違いだ。

支配しているという事は、この場も含めて全て。

特に権力者の動向などが無視される筈がない。


「それは……」


「あぁ、気にしてないから、気にするな」


 彼はそれがどういう意味なのか、すぐに気付く。

人類の状況の悪さまで完全に把握出来た。

要は、人類は悪魔という種族にとって警戒するに値しない存在だという事。

先程の悪魔は、もうふつうではないはずのカイルの動きに完全について来ただけでなく、秘密にしていた魔術まで使用した上で、仕留めきれなかった。

それだけで無くあの悪魔は彼の事を褒めた上で、報告は無しにするなどと言っていた。

どれだけ都合良く解釈しようとしても、完全に下に見られている以外の解釈の余地がない。


 剣技においても、これ以上ない程に彼は極めたつもりだ。

魔法が混ざれば負ける事はあるかもしれないが、純粋な剣技においては誰にも負ける可能性はなかった。

それでもダンテや、あの悪魔には通用しない。


 多分これ以上は、デシアという力を自らの意志で引き出していく必要がある。

ヒトの従来の能力では、もう抗えない敵が多すぎる。

数だけでは、きっともう戦えない。

人類の優位性は、実質もう存在しないも同然だ。


「勝てるのか? 本当に」


「わからない、が、まだ勝たなくて良い。 猶予はそれなりにある。 それに、まずはやるべき事が幾らでもあるからな」


「これから先、ダンテを……」


 そこから先を、彼には自分で言葉には出来なかった。


「ブレイスを一旦1つに纏める素材は幾らかある。 だが一時的なモノでしかないだろう。 きっと今すべきじゃない」


 今は犠牲が出たとしても争う方がいいという事だ。

非常事態が促進する各国の研究速度に期待しているのかもしれない。

もしくは、これも演技なのか。

蚊帳の外にいるカイルには分からない。

中心にいたつもりで、結局外側にいる彼には何一つ大事な情報が見えてこない。



 それから少し歩いて、なりそこない、というワードを思い出す。


「そういえば、成り損ないというのは?」


 嫌だ、とか面倒、とかその手の感情は含まれていない表情。

質問した瞬間ハッとしそうになったカイルにとっては想定外の顔だ。


「いつか、きっと分かる。 お前の中の力が、嫌でも教えてくれる機会が来る」


 彼はもうそれ以上の追求はしなかった。

先程の悪魔との会話から、少しだけ予想出来てしまった。


「そうか……どうやら俺の思っていた以上に世界は複雑に構成されているらしいな」


 リュウはそれに、嫌味なく笑った。


「あぁ、魂の中にも魔法があったり、世界はトンデモなく複雑で、理屈じゃ語り切れない」


 その力を彼は知らない。

それについて、ヒトの魂を狂わせる闇を持つ今の彼には扱える自信が無く、聞く意志はなかった。






 少しの月日が流れて、デシアの研究が進んだ。

カイルの血を抜き取り、その成果を元に、急速に研究が進んでいた。



「カイル、以前お前の血を抜いた結果、研究が進んだ。 想像以上だ。 ここから先は長いが、各兵士一人一人に普及出来るかもしれない」


 白衣を着たリュウは、それが酷く似合っていて、研究が本業かと錯覚させるほどだ。

実際は本業と言っても差し支えないのだが、1つの名で呼ぶには彼は様々な役職を持ち過ぎている。


「しかし、良い事ばかりじゃない。 力を手に入れるには、何度も暴走させて、それを抑制させる必要があると分かった。 だが危険すぎる。 お前のあの時の状態は、半分はお前の意識が残っていた。 本当の暴走じゃない」


 本当の暴走をすれば、更に力が入る。

しかし何度も何度もそんなことをしていては、人類は滅ぶかもしれない。

当たり前だが、ヒトの数は有限だ。


「かといって暴走されても困る。 お前の力は今回の件で上がっている。 止められる保証は全くない上に、お前の、いや違うな、対象者の意識が戻る保証もない」


「ならどうする?」


「まずは確実に研究を進める。 理性を失った先に、進むべき道はない。 俺達人類は理性を保ったまま勝利する」


 リュウは、自分を含めて、人類と言った。

カイルはそれを、愚かだと分かっていながら信じる事にした。

信じる事には、意味がない、それを知っていたはずなのに。



「それが出来るほど、時間はあるのか?」


「出来なきゃ、どの道負けだろう。 あぁ、暴走させて時間稼ぎをするぐらいならありかもしれないが、結局後始末が問題になる」


 そんな悠長に準備している時間がない事を知らせる、いや、意図して伝えようとする爆発が起きる。

予め戦闘服に着替えていたカイルが立ち上がり、言った。


「はは、お前の予想より何日も遅かったな」


「だがダンテが来ることは分かっていた、意味がないことは分かっているが放置も出来ない。 行ってくれ」

何故か未だに作品が終わる気配が全然しない


少しここらで展開を考えたいので週1投稿さえ滞る可能性があります(可能性だから分からないけど)

流石にもう勢いだけでは進めない所まで進んでしまいました

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