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62話

カイルは早朝に家の扉を開けて、外に出た。

理由は自分の状況を把握する為だ。


「5人か、多いな」


 今、彼は5人から監視を受けている。

家の中にいた時から、気付いてはいたのだがそれぞれにレベルの高い監視が付けられた。

自分が気付けていない監視がいてもおかしくないと彼は思っていた。

街へと歩き始めると、その内の3人が動く。

姿は直接視認せず、人が発する生気を辿るだけでついてくる。


「俺だけ随分と重要人物扱いされたな……」


 食料品店の前を通りがかろうとして、酔いそうになるほどの人を避ける。

人の数が多すぎて、また衝突しそうになる。

1人の年老いた女が、唐突にカイルに向けて何かを差し出す。

速度は遅い。

それを受け止め、奪い取る。

そのまま、何もなかったかのように歩く。


 暫くして、見つけた人通りの少ない脇道に逸れ、受け取った手紙を見る。

そこには、場所だけが書かれていた。


「この先か、誰かは知らんが向かってただろうが」


 誰にも理解してもらえない愚痴を吐き、またいつもと同じ様にゆっくりと歩く。


 歩き続ける時間が長くなるにつれて、人が少なくなっていた。

表情も、険しくなってきている様に感じる。

やがて、誰も居なくなって。


「魔法……いや違うな」


 立ち止まり、自分の疑問を言い終える前に自分で否定する。


 先程決まった目的地まではあと少しだ。

何故人が誰も居ないのか、と考えようとした。


「なーんでそこで止まっちゃうかなぁ」


 声が聞こえたのは正面。

しかし、誰もいない。

そこには意図して消さなかった気配だけがある。


「久しぶり、という程でもないな。 なんだ?」


「いや久しぶりだろうと思いましたが、最近、会いましたね」


 ミラの仇打ちをするチャンスが早速やってきた。

彼のせいで、彼女はあんな風になった。

攻撃を仕掛けても良かったが。


「そういえば、お前の呼び名を決めないか?」


 名前を聞くのではなく、呼び名を決めろと言ったのは素直に答えない事が分かっているからだ。



「ん、あぁ。 そうだねぇ。 オブザー……シーベル、シルベル、シビア。 シビアで行こう」


「シビア、ね。 何の意味がある?」


「さぁ、正直結構適当だよ。 本題に入ろうか」


 帽子と仮面で、素顔を完全に隠した彼は今隙だらけだった。

その隙を突いて殺せと、心が暴れる。

それを必死に抑えながら、答える。

彼にはまだ、バケモノになる覚悟はなかった。

彼女の様に、ヒトであることから逃げてまで、何かを得ようとはしない。

そういった理性こそがヒトだと思っているから。


「あぁ、入ってくれ」


「まずは、何でここに人がいないか知ってる?」


「知らない、何故だ」


「この先で公開拷問が行われてて、付近の奴は全員呼ばれてる。 呼ばれなかった奴は皆知らんぷりがしたくて、人によっては食料がないのに外出を控えたりして頑張ってる」


「なるほどね」


 言われて、半自動的に意識が向いてしまう。

それに合わせてデシアが感覚を敏感にさせて、どれだけの人々が集められているか分かってしまう。


「知ってるだろうけど、細かい解説を頼まれたからさせてもらうよ。 今回の戦争では、ブレイス内部の反抗心をケアを最終目標としていた」


「反乱を起こさせて、鎮圧する。 彼らがよく行う手段だ。 だけど、その為だけに生まれた人達がいる」


 カイルはだろうな、と言いたくなった。

想像通りすぎて、何も言うことがない。

しかし、分かっていたはずなのに、何故か激しい胸騒ぎがする。


「意図して無駄の多い作戦を決行させ、拷問を受けて恐怖を与えた上で死ぬ役だ」


 反論が無いことを確認した上で、シビアが言う。


「君なら、この世界の違和感を何か感じられるんじゃないかな」


 この言葉は少し優しく聴こえて、仮面から露出した瞳の部分を見る。

言葉と違い、そこからは何も感じ取れない。



 次に、誰かにアピールしているかの様に声を少しだけ大きくして言った。


「ここからが、僕の本心からの伝言だ。 ダンテ、彼女はいつか死ぬだろう。 彼女が従順でないことに、組織が、グリセリーは気付いている」


 カイルは、本能的にこれが何かの作戦だと感じ取った。

そこに何一つマトモな理屈は無い。



「それでも、君が彼女を守りたいと言うのなら、グリセリーと接触してみてはどうだろう? 君の素質はよく知っていて、誰もがその力を望んでいる」


 彼は、全て聞き終えてからそのセリフの違和感に気付いた。

シビアの所属は、グリセリーのはずだ。

それなのに、彼は何処か自分と関係ない世界での話の様に語っている。

その証拠に、彼はグリセリーの事を、何故かわざわざグリセリーと呼んでいるのだ。

過去もそうだっただろうか?

これにも何かの意味が込められているのか、それとも……

彼は、言葉にならない結論を出した。



「……これが我々の組織の場所だ」


 紙には、地名が書かれているが彼にはそれが暗号だとすぐに理解出来た。

何故なら、その紙には近くにいる者にしか感知出来ない魔法がかけられていたから。


「一つだけ、聞きたいことがある」


 本当は山ほど言いたいことがあった。

何故自分の前に何度も現れるのか。

何故ミラを殺さなければならなかったのか。

しかし一々挙げていてはキリがない。


「このままだと、少なくともお前目線ではダンテが死ぬと予想出来ると言うのは、本当か? 俺が嘘だと判断すれば、今ここでお前を殺す。 冗談で、もしもお前が上手く取り繕えたとしても、次は絶対にない」



 シビアは、何も答えなかった。

カイルは剣を抜き、5連の太刀を放った。

マトモに打ち合うつもりはない様で、すぐさま後ろに飛んで、遅すぎる答えが返って来る。


「本当だよ、その未来に嘘偽りはないと誓おう」

あと数万字で作品のピークに到達予定

そこだけは一気に読んで欲しいので同時刻に投稿予定

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