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33話

久々の外に、懐かしさを感じる暇さえなく、カイルの目の前には面倒な光景、というよりは人物が立っていた。

会いたくて、会いたくなかった人物。


 金の髪が、暗くなりかけた世界で輝きを放っているが近くを通った人々はそれに気付かない。

商店街のど真ん中に立つ彼女の姿だけでなく、空間毎、意識内に存在出来ない様にコントロールされている。

それが誰のせいかは、考えるまでもない。


「こんなところに何の用だ?」


「せっかく私が会いに来たのに、冷たいなぁ」


「はっ、自分を狂わせようと考えてる様な奴に優しくする奴はいないだろ」


「ううん、あなたは私だけじゃなく誰にでも優しい。 だから、私と違って狂わない」


 確信を秘めた目はかつての様に優しさを伴っていた。

過去、彼に優しさを与え続けた瞳。

信頼に出来るはずの物だ。

それが今、まるで信用出来なかった。

しかし、まだ彼女を信じたいという想いが残っていたらしく、無意識の声が彼の口から飛び出ていた。


「だとしたら、それはダンテ、お前のおかげだ」


 だから、と言おうとした。


「でも、優しいだけのあなたにはこれからの世界では何も救えない」


「これからの世界? 一体何がどう変わる? もう俺にはお前の行動だけじゃなく、言っている事さえよく分からないよ」


何もかも救えるなどと最初から思ってはいない。

そもそも、弱みのある者から死んでいくのは当たり前だ。

争いが長くなれば長くなるほど弱点のない者が強さを発揮出来る。

それはどのような世界であったとしても当たり前のはずで。


「そんなの私にも現時点では分からないよ。 全てを終わらせて、次を始めるために戦うの」


「次? 何の話をしている? 一体何を抱えて誰と戦っているのかを教えてくれ。 俺はお前をどう助ければ良い?」


「じゃあ、私についてきてよ」


「それは、出来ない」


「えー、じゃあどうやって助けるつもりだったのよ」


 冗談だけどねと言ってダンテは笑う。

彼女に向けて、カイルは忠告する。


「このままいけば、本当に手遅れになる」


「些細な事で疑いあって殺しあうような人々はまだ手遅れじゃないのかな?」


「違う、お前のことだ」


 勘違いした彼女は照れ笑いを浮かべて、言った。


「心配してくれてありがとう。それで、あなたの仲間はもう到着するのかな?」


 時間稼ぎが、バレているのは承知の上だ。

そもそも、連絡した事を隠す気などなかった。

彼女はどうせ、この程度で逃げないのだから。


「カイル!」


 来たのはチームの3人。

先に合流して、ダンテを囲うように接近してくれたらしく、もう既に彼女に退路は存在しなかった。

だが、もう勝てないのは分かっている。

最初から挑むつもりはなかった。


「……頭の悪い俺には、これだけ時間があってもお前を止めてやる手段がまるで思い浮かばなかったよ」


「力なら、あるでしょう?」


「この力は使わない。 俺はヒトとしてお前に勝つ必要がある。 こんな力が必要ないと証明するためにも」


 それに、と続ける。


「与えられた力で戦うのも、気に入らない」


「なら、どうするの?」


「何故、わざわざこいつらだけを呼んだと思う?」


 問われた彼女は視線を上に向けて悩む。

結局、明確な答えは出なかったらしい事は聞くより早く反応で、カイルには分かった。


「これってほど正確には分からないけど、どうして?」


「俺には、多分、仲間が出来た。 それもきっとコントロールされているんだろうな」


 答えは何も返ってこない。

だから、続きを言う。


「個人が集団に勝つのは、一瞬だけだ。 必ずこいつらの力を借りてお前をいつか、救ってみせる」


 嬉しそうに悲しそうな瞳で、ダンテは答える。


「待ってるね」


 ただ決意を告げるためだけに呼んだのだ。

そして3人は期待に答えてくれた。

ダンテがいると言う情報のみで、駆けつけてくれた。

誰にも連絡しないでほしいと言う要求さえ飲んで来てくれたのだ。

恐らく、それは仲間達と呼ぶに相応しい関係だった。



 ダンテが去った後、仲間の1人が言った。


「まさかとは思うけど僕らって決意を告げる為だけに呼ばれたの?」


「あぁ」


「私には、今から奢ってくれるんですよね」


 ユウカは少し強気な表情でカイルに笑いかける。

その顔には微かな恐怖が滲んでいる。


「良いなぁ、俺にも奢ってくれよ!」


 無理をしてでも元気付ける為に笑ってくれる仲間達に、カイルは呟くように言った。


「まあ、たまには良いか」


 それから、家ではない方角へと歩き出す。

結局カイルが家に帰ったのは辺りが真っ暗になってからだった。

もしかするとタイトル変えるかもしれません

候補は現時点でいくつかあります

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