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28話

例の任務の為、4人が家の前に集まっていた。


「さて、行こうか」


 ミヤがそう言って歩き出す。


「まさかとは思うが、歩きなのか?」


「いやいや、流石に交通手段ぐらいは用意されてるよ」


「なら、どこへ向かう?」


「今からそこに案内する。 ある程度近くまでは空をいくよ」


 カイルがバレないのだろうかと心配するがそれに気付いたミヤは言った。


「多分全く誰にもバレずに接近する手段なんてないよ。 ま、一応かなり遠くに着陸予定ではあるけどね」


 それではもうこれは潜入ではなく突撃になる。

早速カイルが聞いていた作戦像が崩れた。


「今更、潜入から攻撃に予定変更か?」


「降下部隊は全部で30、正面で陽動してもらって僕らは後方に降りて回り込む作戦になってる」


「随分と大掛かりな作戦だな……」


「まあ、本来はもっと少なかったんだけどね」


 それだけダンテの持つ力の評価が高くなったと言う事になる。

前回の攻撃から考えれば陽動部隊に関しては、最初から全滅覚悟のはずだ。

それを考慮すると余りに犠牲者は多く、責任が重い。

だからこそ、成功すれば大きいはずだ。


 余裕が生まれなければダンテの身柄の確保など考えられない。

彼女を救うにはまずはブレイス側が優位に立つ必要がある。

もしくは裏切って、今の世間の混乱に紛れて追跡を何とかする手段もあるが、任務以外の用件で国から出ることが難しい。


「大変そうな任務ですね……」


「まあ、なんとかなるでしょ」


 意外と能天気な感想にカイルの中には少し呆れの気持ちも存在するが、この時点で下手に緊張されるよりは全然良かった。


「行こうか」


 皆が歩き出す、それに合わせて足を踏み出す前に一度背後を見る。

窓からは姿は見えない。

少なくとも、彼には外から魔力でも、視覚でも位置が分からない事の確認が出来た。


「どうかしたか?」


「いや、何でも」



 立ち入り禁止区域へと進む4人に向けられる視線はやはり恐怖か、造られた尊敬といった物ばかりで、彼らが見えなくなるまでは陰口どころか、口を開く者さえ1人としていなかった。




 配置は施設の側面。

決して隠れやすい場所ではなくどちらかといえば開けた場所だ。

見つからないために場所はかなり遠いが、人数が少なく、このメンバーでならすぐに詰められる距離だった。


 あと少しで、通信機器や監視装置の破壊を目的とした攻撃が始まる予定だ。

だがそれらは全て彼らの位置の反対側、隠れやすく攻撃をかけるなら如何にも此処と言える場所を意識させる為だった。

カイル達が見つかる可能性は全て自分達で排除しなければならない。


「余計なことは考えずに、施設内を簡単に探索してすぐに逃げる。 で、解ったことだけ報告だ、いいな?」


「ま、妥当かな? 流石にこういう場所で長居はさせてくれないよねぇ」


「どういう状況になるか分からない。 危険だと感じたらすぐに逃げろ」


「緊張しすぎじゃない?」


 ミヤは笑うが、カイルは決して過度な緊張だとは感じていない。

これは完全な戦争だ。

巻き込まれてしまっているどころか、今彼らはその中心に立っている。


 戦争の中ではより高い技術を持つ者が優位に立つ。

今は相手がその高い技術を持っている。

それは数の差を完全にカバーしきってしまう程に強力な力だ。

仮に彼らが多くに対して同時攻撃を仕掛けずに一つ一つを順番に攻めていた場合もう戦争は終わっていた可能性が高い。

そして、ここで何かを得られなければ全てが終わってしまうかもしれないのだ。

緊張で死ぬ程の思いでも十分だと言える。


「全員で生きて帰れるかな……」


 ユウカがそう言うのにも無理はない。

彼女も直接はほとんど戦ってはいないが相手の戦力を知っているはずだった。


「余計な事を考えるな、最悪調査は諦めればいい」


「あー何も出来ずに帰ってきましたって言って通用したら良いんだけどなー」


「ま、最悪の場合は皆で平謝りしようよ」


「その場合何て言われると思います?」


「さぁ? まあ元々作戦に無理があるし殺されたりはしないでしょ」


 なんて雑談気味の会話をしていると空が赤くなる。

赤い光線がいくつも施設内に伸びる。

幾らかが途中で爆発しながらも、数本が着弾して、多分それは誰かを殺した。

まだ誰も進まない。

本命はこのあとだ。

死ぬ為に用意されたいくつもの陽動部隊が走り出す。

それは聞いていた数よりも少し多く見えた。


 武器は銃よりも剣が多い。

その理由として身体強化能力が付与しやすい、という物がある。

銃にその機能が付いている事は極めて稀だ。


「行くよ、バレてなければ奥まで突き進む。 バレてたら状況次第で臨機応変に」


 それに頷く。

ほぼ同時に強い光が発される。

これは攻撃ではなく作戦開始の合図だった。

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