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12話

「おはよう」


 ミヤが、高校の門を抜けた先、中庭の赤い横長ベンチに座っていた。

ダンテと再会した場所、少し何らかの思惑、意図が絡んでいる可能性は0とは言えない。

だから、カイルは挨拶を無視して通り過ぎようとする。


「ここに座ってお喋りしていこうと思わない?」


「思わない、じゃあな」


「え、あ、ちょっと待って、話があるんだって」


 それに、面倒そうな表情を作って答える。

その程度で諦めるとは思ってはいない、これは純粋に彼の本心の表現だった。


「何だよ」


「ま、座ってよ」


 このままだと話が進まなさそうだと思い、隣に少し距離を空けて座る。

すると、言った。


「2人が言ってたよ、君は良い奴だって」


 あの襲撃からはもう随分と日が経っている。

カイルが今更か、と感じたのが分かったらしく、言う。


「こうして話せる機会はなかったからね、やろうと思えば作れたけど」


「で?」


「明らかに異変が起きていたダンテを助けたくない?」


 カイルは前に、ダンテは産まれた時から実験体だったというような事を言っていた事を思い出す。

元々、あの異変はブレイス側の所為である可能性が高い。

少なくとも彼はそうだと捉えている。

だから、言う。


「何故……俺が?」


「婚約者でしょ」


「仮に、俺がそれを望んでもその力は俺にはない」


「だねぇ」


「なら、もう用はないだろう」


「こんな会話になるとは思ってた」


 ミヤは本題だと言ってそのまま続けた。


「君に裏切りの容疑がかかってる」


 可能性は、元々考えていた。

ダンテが敵側についたのであればその婚約者であるカイルがグレーだと考えるのは至極真っ当な思考だ。

それを聞いた彼はわざと泳がせる為に監視していたのかもしれない、が、何かやるには遅すぎると非難したくなった。


「俺にそれほどの器はない」


「だけど、僕らはそれを断定出来ない」


「だから?」


「カイル、君にはこれから、特別試験がある」


「そうか、それを伝えてどうしたい?」


「一時間後だ」


「は、マジ……かよ」


 カイルは確かにひどく驚いたが、ミヤがこんな事をわざわざ伝えに来た事の方に、より強く驚いていた。

これは一種の裏切りだ。

それをしてでも見たくない、そうさせたくないのか、はたまた彼の信念のような物がそれを咎めるのか。

何にしても正しくない行動だった。


 嘘なのか本心からか探るため次のアクションを待つ。

今も監視下にある可能性が高い以上余計な反応をするべきではない。


「逃げるなら、逃げるべきだ」


「何故、そんな事を俺に言う?」


「君は、ビオスユウカの2人を助けた」


「偶然だ、それがどうした」


「2人はそれを偶然じゃなく、必然だと、君が何度あの場を経験しても同じ結果になると、言ったよ」


「だから、こんな叛逆まがいの事をするのか? だとしたらお前は本物のバカだな。 勘違いで裏切者、とんだ転落人生になるだろう」

「……確かに、何故だろう?」


 本当に疑問に思っているらしく逆にカイルに問いかけてくる。

表情にも現れていたので、彼は呆れて見せると笑われてしまう。


「知るかよ」


「あはは、だよね」


 それから少しの空白時間を持って。


「ミヤ、逃げないようそいつを連れていくぞ」


 背後から聞きたくない声が聞こえてくる。

最近は聞こえていなかった懐かしくもある声。


「あ、ノア」


 そう言った後小声で彼は、言う。


「僕が魔法で意識を逸らす」


「いや、いらない」


 それは必要なかった。

何故なら、今日が2度目の襲撃の日だ。

朝と言っていたが厳密な時間は聞いていないがもうそろそろのはずだった。


 今度はミヤやノアのような地位が高い家の学生をピンポイントで殺しに来るのだと言う。

その2人は最初から殺せるとは思っていないとも言っていたが、彼が名前を覚えている者は多くない。

ただ、他にも彼の知るバカ2人の名が挙がっていた事だけは覚えていた。




 最悪、多少の実力を見せる覚悟を持ち断って、歩き出す。

実力はあるがやる気がない、と言う評価が最も望ましいとカイルは考える。

攻撃が始まった直後に不意打ちという手も取ることが可能で決してデメリットばかりという訳ではなかった。


「は、お前」


 ノアがカイルの腕を掴むので、言ってみる。


「安心しろ、逃げたりしねぇよ」


「無駄に喋るなよ、お前は今日死ぬんだから」


その嘲笑うような脅しを心の中で笑って、言った。


「怖い事言うなよ」


 連れて行かれた先は以前の急遽行われた試験会場。

その最奥の試験場所に以前の試験の終わりでカイルを個人的に呼び出した男が立っている。

今日は前回と違い武器を用意している辺り少し物騒な印象だった。


「ノア、もう帰っていい」


「リュウ兄さん、俺も残」


「帰っていい」


 回答を許すつもりはないという口調だった。

理知的な、心の奥までもを見透かすような目がカイルの服の魔法武器を入れているポケットを刺すように見つめて、2秒ほどの時間の後に彼の顔に視線が移る。


「リュウ、って呼べば良いんですかね」


「お前が俺を呼ぶ必要はない」


「はぁ、用件は?」


「お前を試す、だから武器を出せ」


「分かりましたよ、これで良いです?」


 掌からほんの少しはみ出る程度のサイズでしかないそれを前に突き出す様にして見せる。


「テストの内容は簡単だ」


 そう言った直後、何故か背後にいるミヤが言う。


「待って……兄さん」


「お前は優秀だ、授業は受けなくても良い……が俺の邪魔をするな」


「そいつを殺せば、クラスメイトが悲しむ」


「ん、こいつは嫌われ者じゃなかったのか?」


 そう、嫌われ者だ。

一部の馬鹿供が友情ごっこに憧れたのか勘違いしてカイルに付き纏い始めただけで、嫌われ者である事は変わらないのだ。


「悲しむ奴もいるって事だよ」


 それを聞いても一切の反応は無く、そんな事は知らないとばかりにカイルに向かって、言う。


「お前を殺す、生き残れたらお前の勝ちだ」


「無茶苦茶かよ……」


 それに、彼は小声で愚痴を吐く。

魔法発動を強制させる装置でも使うのだろうと考えていた事もあり、すぐに体を緊張させる。

次に、心も緊張。


「ちょっとまってよ」


「裏切り者の汚名を着たくないなら黙ってろ」


 リュウのその言葉でミヤはそれ以上は口答えはしなくなった。

そして、思っていた通りに嫌な言葉が続く。


「さぁ、死ね」


 まだ、襲撃の気配はない。

最悪の展開だった。

次話の予定は火曜日(8/1)夜時間未定


文字数見てみたら話毎にブレブレで申し訳ない

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