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11話

「さ、魔法の発動のコツからだな」


「面倒くせぇ」


「そう言うなって」


 ビオスが1対1で指導すると言った結果、カイルは彼と魔法発動の勉強をさせられている。

皆、必死に努力して少しでも周囲より強くなろうとしている中、彼は初歩の初歩の指導から始めた。

断っても断ってもついてくるので諦めて指導を受けているところだ。

結局、もう1人着いてきたせいで三人になっていた。


「最初は魔法武器に頼って発動した方が良いんじゃないかな」


 後ろからユウカが言う。

彼女は今、何もせずにアドバイスしているだけだ。


「俺これしか持ってないんだけど」


 短い剣の取っ手部分だけの魔法武器。

カイルが使用するのは魔力で剣を形成し、刀身を飛ばしたり、斬ったりする為の武器だ。

なので、魔法を放つ場合は基本的に補助無しになる。

接近戦主体で戦うスタイルの彼は余り遠距離で魔法を放つ事は無いので別に補助具を持っていたりもしない。


「は?」


「いや、嘘じゃないぞ」


「なんで補助無しの奴しか……いやそれよりもそれ魔力消費大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃない」


 実際は、一日中起動し続ける程度なら余裕だった。


「なんでそんな奴選んだんだよ……」


「安かったんだよ」


「金ならいくらでもあるだろ?」


「あるけど別に良いだろ」


 ビオスが呆れるのを見てユウカが言った。


「私の使って、魔法発動補助の効果は余りないけど使わないよりはマシだよ」


 手渡された魔法具を見る。

形状は腕に付けるリングタイプだ。

魔法の威力を上げる事を重視した魔法具である事が彼は見ただけで理解出来た。

腕に付けるのではなく、手で掴む。

これでも効果は発揮される。




 魔力が光として可視化され、手の周りを舞う。

本来魔法の発動にこの様な無駄な物は出ない。

カイルは手のヒラの魔法具に意識を集中して、更に魔力が暴れる様に、出力を上げすぎないよう注意して魔法を失敗する。


「もっと魔力を固めた方が良いと思うよ」


「だな、イメージしてみろ」


 なんて感じに、2人は指導する。

そして失敗、そんな日が、何日か続く。

多分、彼はその時間が授業でなければ全てを断っていただろう。


 ある日、カイルの周りに2人がいない時間が出来た。

ミヤは最近高校を休む事が多くなって来ていて今日も休みだ。

1人の男子生徒の声。


「おい」


「ん?」


振り向くと突っかかって来たのは1人だけだった。

他は皆、微かに怯えるような、迷惑そうな目でその生徒を見ている。


「お前、最近ビオスと仲良いからって調子に乗りすぎだろ」


「ん、俺、お前に何かしたか?」


「黙れよ、なぁみんな!」


 同調を周囲に求めても、誰1人として答えない。

それに、彼は苛立ちを感じているらしくカイルの机に当たって、呟く様に言った。


「クソ、なんだよ」


「俺はお前に何もしてないはずだ」


「調子に……乗るな!」


 拳が飛んでくる。

避けることは容易だった。


それを最初から、いないフリをしていたビオスが止める。

カイルは気付いていたが周りに合わせて驚いたフリをする。

それを見て、笑ってから言う。


「やっぱ俺ら以外には認められてないのねー」


 魔法で屈折させられていた光が、元に戻り、人の姿が浮かび上がる。


「ビオス……」


「まあ、こいつはそう悪い奴じゃないからそうカリカリすんなよ」


「ノアがいなくなってから、お前おかしいぞ」


「そうか?」


「何があったんだよ?」


 どうやら、彼もユウカと同じで心配されているらしい。

それも、普通の事なのかもしれない。

カイルが助けた事を知っている者は他にいなかったはずなのだ、三人が誰にも言っていないならば、だが。

かと言って彼と仲良くするのが正しい、とは言えない。

どちらにしても心配される要素以外なかった。


「ハハ、その内分かるかもな」


 はぐらかしたのは気恥ずかしさからだと表情から分かるが誰もそれ以上は追求せず、少し不気味そうにカイルを見るだけだった。

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