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1話

気付けば主人公の初戦闘シーンが13話と思ってたより遠くなっていた

一応イジメシーンはかなり削りました

「あいつ何しに来たんだろうな」


「まあ、義務なんだろうな」


 16歳の男、魔法技術を学ぶ専門学校の一年生のブレイス・カイルはその視線を無視して通り過ぎる。

関わってロクな事になった試しがないからだ。


「ブレイスの人間でありながら度胸も実力も、皆無ってあいつよく生きてこれたな」


 彼の魔法実技、座学の成績は共に最下位、だがこれは意図して取った物になる。


「あぁ、ウゼェ。いつか覚えてろ」


 ほんの少し先の未来を見据え、捨て台詞を吐く。

今からでもやろうと思えば評価を覆す事は難しくない。

だが、何の意味も無く酷い成績を取り続けた訳ではないのだ。

今更半端にやめるわけにもいかなかった。



 帰ろうと教室を出ると窓の方から大きな水の球が飛んでくる。

これは魔法攻撃というよりは魔法を使った嫌がらせだ。

魔法としての強度は低い、怪我をする事はないだろうとカイルは分析した、そして1秒後に顔を濡らす事になった。


 ビショビショになった彼を偶然居合わせた集団が笑っている。

正確には、偶然を装い居合わせたフリをした集団が笑っている。

それが解るのは校内全体で見れば彼に表立って嘲りの感情を向ける者は少ないからだった。


「ハハハハ、それぐらい避けろよ」


「ってかお前ホントに魔力あるのか?」


 笑っている中の1人はカイルと同じブレイスの名を持っている。

その名は絶大的な影響力を持つ。

例えば、こんな風に。


「ブレイスの人間の俺にこれはどうなんだ?」


「え」


「いや」


 一人除き皆が一瞬怯えた目になるがすぐにそれも同じ響きを持つ言葉によって終わる。


「同じブレイスの名を持つ俺が言ってやる、お前にブレイスを名乗る資格はねぇよ」


「そうだ! この恥晒しが」


「調子乗ってんじゃねぇよ」


「力もないのに態度だけは立派だな」


「ぶちのめしてやりたいところだが今だけはやめておいてやる、二ヶ月後覚悟しておけよ」


「は、二ヶ月後?」


「あぁ、お前に伝達がいくのは明日だったか」


「なんだそれ」


「ハッ、教えるわけねぇだろが」


 意味深な事を言って、彼らは去っていく。


「二ヶ月後……ね」


「そう、二ヶ月後だ」


 カイルは反射的に後ろを振り向きそうになる。

だが一度それを抑えて、大袈裟に飛んでビックリした風に反応して見せてから言った。


「いたのかよ……」


 気を抜いていたとは言えカイルは全く気配を感じていなかった。

油断していた事を反省する。

彼の事は知っていた。


「ブレイス・ミヤ、って言うまでもないか」


 1年の同級生で、学年どころか全校生徒2000人のこの学校内でトップクラスの実力を持つエリート、相当の有名人だ。


「あぁ、知ってるよ」


「名のれよ」


「何故?」


 一応カイルとミヤは家族だが彼と会話したのは初めてだった。



「まあいいや、相変わらずイジメられてるねぇ」


「見てたなら止めてくれよ」


「嫌だよ、怖いし」


「じゃあ、この服どうにかしてくれ」


「それぐらい自力でどうにかできるでしょ」


「俺の魔法実技の成績を知ってるだろ?」


「君の評価は未だにそれなりに高いままだ、結果と違ってね」


 カイルは面倒そうな顔をして笑う。


「期待もいい加減にしてくれよ。 俺のとこはたまたま皆弱かったんだ。 だからこんな実力の俺が生き残ってしまった」


「素質はあったはずだ、努力すりゃ幾らでも」


「努力して結果出して褒められるタイプの天才様と一緒にしないでくれよ」


「はは……ま、僕には関係ないけど」


「で、二ヶ月後ってなんだ」


「そうそう、先に教えておいてやろうと思ったんだ」


「まあ明日教えてもらえるらしいけどな」


「あらら、忠告してやるまでもなかったか」


「せっかくだし教えてくれよ」


「君への支援が打ち切られる、それだけ」


 それに、決断が遅すぎるとカイルは思う。

マトモに魔法が発動出来ない彼に対する生活の支援は今すぐに打ち切っても良いはずだ。

それを表情から考えを読み取ったらしくミヤが言った。


「せめてもの温情だろうね」


「なら、打ち切るなよ」


 彼らから受けた金銭支援は恐ろしく膨大な物だった。

合計すれば既に一般人の生涯収入を楽に超えている程に。

本来の実力を見せればそれを更に上回る額を短期間で手に入れる事が可能で、そこに関してはカイルも惜しいと思わない訳ではなかった。


「君がそうやって努力しないのが悪い」


「ハハ、そうかよ」


 カイルはもらった金を全て使い切り続けるほど欲が多くない、仮にそうだったとしても余裕で一生遊んで生きていけるだけの金が残っていただろう。


「君は何も知らないから始末されないだけマシだよ。 僕なら、殺される」


「優秀なのも考えもんだな」


 カイルが皮肉を言っても、動じた様子はなかった。


「ここで君と話していてもしょうがないし帰るよ」


「消えろ」


 別れて暫くした後。


「俺も帰るか」


 カイルも自分の家に向かう。



 自分の家、黒い家根に赤い壁の大きなそれを目の前にしてカイルは呟いた。


「ダンテ、お前はどこに行ったんだよ、復讐はどうしたんだよ……」


 かつて彼に生活のための知識を与え、ブレイスの名を持つ原因となった彼女に向けて。

最新話の後書きに次話投稿時間を書いています

ピッタリではないので注意

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