整理券の使い道
「須藤さん、整理券を出して頂けますか?」
巨大画面であり、また転送装置でもある窓は最初の景色に戻った。が、須藤さんは学ラン姿のままである。
「本来ですと、旅先に係の者が出向いて手続きを行うのですが、今回は私が受け取る事になります」
須藤さんが、言われた通り整理券を夜見に渡した。
「確かに」
夜見は整理券を受け取ると(黄色だった)タブレットの溝にそれを差し込んだ。すると、タブレットの画面から淡い黄色の光があふれ出し、扉の形になった。
「須藤さんのゲートです。……どうぞ、良き転生を」
「ありがとう、夜見さん。皆も。ほんの少しの間だったけど、出会えて良かった」
僕は、何だか神妙な気持ちになった。
「須藤さんっ、オレも。オレ、あんたの生きた時代、良く知らないけど、須藤さんがリスペクトしてたさっきの人、スゲーと思った。須藤さんのおかげで会えた。須藤さんの話、聞けて良かった。だから、……だから。……オレ、何が言いたいんだ?」
ヤンキーなお兄さん、大丈夫、言いたい事分かります。激情にかられるって、こういう事かなぁ? って、僕は思った。
須藤さんはニヤッと笑い、ヤンキーなお兄さんの肩を背伸びして叩いた。
「君とはもう少し話してみたかった。でも、俺はもう行く事にするよ。……じゃ」
そして、須藤さんは黄色に光る扉を開けて振り向かずに歩いて行った……。