表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

旅の説明と注意事項


 皆がソファーへ腰掛けると、死神さんも空いている椅子に座った。(というより、死神さんの側に後から出現してきた)


「それでは、自己紹介タイムと行きましょう。まずは私から。私の名前は夜見(よみ)。呼び捨てして頂いて構いません。年齢は、まぁご想像におまかせします。ただ、我々の世界では、見た目と実際の年齢は一致しません。先程の上司は私より三つ歳上なだけです。船着き場の女性スタッフは、彼よりさらに歳上です」


 瞬間、それまで夜見の話を興味無さげに聞いてたヤンキーなお兄さんが、顔を上げ目を見開いた。

 夜見はその視線に気づかないふりをして、言葉を続けた。


「私の話は、ま、こんなところですね。聞きたい事があれば随時どうぞ。……先程の心の悔いを無くす旅について、説明しておきましょう。行きたい場所・時間はお一人様につき、一ヶ所です。生前会っておきたかった人の所、或いは行ってみたかった所へ行くのも良いでしょう。家族や親友に会いに行くのも、憧れのスターに会いに行くのもありです。……ただし、コチラから生きている人達に干渉する事は出来ません。先程の広間にいた人数を考えて下さい。全員が今生きている人に何かをしたら、大変な事になるでしょうね」


「待って! 時間って、どういう意味?」


 若い女性が夜見の話を(さえぎ)った。ちょっとキツそうな印象を受ける声だ。


「現時点より過去になら行くことが出来る、という意味です」


「場所っていうのは?」


 ロマンスグレーのおじさんとは別の、もう少し若い色黒のおじさんも質問を重ねる。


「地球上でさえあれば、何処へでも」


「それって誰もが知ってる古いアニメを作ってるところとか、ハワイの海中火山を目の前でとか、外国のお菓子の工場の中とか……」


 僕より小さな男の子が、ポンポン具体例を出す。


「そういう事です。見学だけなら問題ありません」


 夜見が男の子の方を向いて言葉を返すと、彼は慌てて隣にいた女の子の影に顔を隠してしまった。つい、いろんな事を言っちゃったけど恥ずかしい、といった感じで。

 この二人は知り合いなのだろうと思った。


「そ、そんな事が……」


「ええ、何しろ肉体がありませんから。でも」


 夜見は、ロマンスグレーのおじさんの方に向き直り説明を続ける。


「例えば、生前どうにも腹に()えかねる事があったとして、その相手に報復する事は出来ません。そんな事でこの旅のチャンスを利用して頂いても、心の悔いを晴らせるとは思えません。むしろ、より深く心に刻み込まれてしまうでしょう。もとより、相手に触れる事も出来ませんし…。せっかくの最期の旅行です。心から楽しんで頂きたいと思います。……他にご質問はありますか?」


 皆、考え込んでいる様で言葉を発する者はいなかった。


「それでは、自己紹介をお願いします」


 僕だけ特別な宿題を提出しなければいけない気分になった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ