ロマンスグレーなおじさんとヤンキーなお兄さん
何だかんだと僕らは、結局アルファベット順に振り分けられた。山高帽子の死神と部下の死神との打ち合わせが、ちゃんと行き渡ってないのだろうか。僕の整理券には『BNN-124』の文字が記載されていたが、数字はただの到着順だった。(だから、死神さん達の打ち合わ……)、カードの色については説明されない。どんな意味があるのか、それとも無いのか?
僕をここまで連れてきてくれた死神さんが、大きな声で呼びかけた。手にはあのタブレットの様な物があり、それがぼんやりと光を放っている。
「BNN-の文字が記載されたカードをお持ちの方は、こちらへお集まり下さい。……7名ですね。それでは、私を取り囲む様に輪になって頂き、両隣の方と手を繋いで下さい」
僕の両隣の人達が同時に呟いた。
「全く、ここは一体どうなってるんだ? 生前聞いていた死後の世界とはかけ離れてるじゃないか?」
「手、だと……初対面の知らない奴と? 船着き場のねーちゃんとだったら、いくらでも繋ぐんだが……」
一瞬の後二人とも我にかえって謝り合う。間に挟まれている僕もつられてペコペコしてしまった。
「思っていることがつい口から出てしまいました。みっともないところをお見せして……」
ロマンスグレーのおじさんが頭を下げる。
「いや、オレの方がみっともない、ってか欲望出ちゃったし。確かにここは変なところだし。……つーか、オッサンも変わってんな? フツーそんなことをわざわざ、オレらみたいな若造に謝んないぜ?」
ヤンキーなお兄さんはそう言うと、頭を掻き、照れ臭そうに笑った。
「……お話がお済みの様なら、説明した通りにして頂けますかね?」
死神さんの方を向くと他の人達が手を繋いでいるのが目に入った。
先程のちょっとしたやり取りで親近感が湧いた僕達も、慌てて手を繋いだ。
「それでは移動したいと思います。この部屋は、込み入った話をするのには不向きですので」
移動? 手を繋いで? と僕が思った瞬間、タブレットから煙の様な青白い光がじわりと流れ出て、僕達7人と死神さんの体に巻き付いた。死神さんが小さな声でなにか呟くと、青白かった光が眩しくなり、目を開けていられなくなって慌てて目を瞑った。
「ぅおっ、どうなってんだ。こりゃ。」
ヤンキーなお兄さんの声で目を開くと、違う部屋にいたので驚いた。ナゼかとても明るい部屋にいたのだ。
……死神さんと出会った薄暗い川沿いの道、鬱蒼と繁った森の脇の川、松明が何本かしかない船着き場、同じく松明しかない広間……。それなのに、ここはどうしたことだろう? 天井に照明器具は付いてないが、それ自体が柔らかな光を放っている。一方の壁は窓枠も無いのに昼間の森の景色が見え、どこからか鳥のさえずりさえも聴こえて来る。
部屋の中央には様々な形や色使いのソファーが、人数分しつらえてあった。
「それではそちらにおかけ下さい。先ずは自己紹介をして頂き、その後ディスカッションしましょう。」
自己紹介と聞き、記憶が紛失していることを思い出して、ブルーな気分になってしまった……。