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地球からの旅立ち



 僕達は今、ホテルのフロアに似た落ち着きのある広々とした空間にいる。この部屋の中央にタマゴ型の『ポッド』と呼ばれる宇宙船の様な物がある。宇宙船の様な物……というのは僕達が実体を持たないから、宇宙船も実体が無い、という訳らしい。これからそれに乗り込むところだ。


 このポッド、相当な人数が乗れるらしくて、……とてつもなく大きな白い風船を思い浮かべて貰えば良いのかな。どれだけ沢山の人が乗ってもその分広がってくれるみたいだ。


 で、さっき須藤さんのところに、あの外国人のスターが来たんだ!! 「ボクを呼んでくれた人デショウ……?」って。須藤さんは固まってた。顔色だけが赤くなったり青くなったり。でも気持ちは伝わったみたいで、スターの人はニコニコしながら須藤さんと握手して、反対の手で軽く肩を叩いていた。彼が別の知り合いの人を見つけて僕達に会釈して去っていくと、須藤さんは「くぉーーっ! もう絶対手、洗わねぇーーーっ!!」て叫んでた。けど僕達にはそもそも肉体が無いし、地球から脱出するところだし……、と思った。ま、気持ちは分かるので何も言わなかったんだけど。


 それからこのポッドの下の方に、実は動物と植物も乗っているらしい。モチロン実体じゃない。魂? 幽体? 想念? って言うのかな、それらがいる。彼らとは言葉は通じないけれど、穏やかな気持ちがそこから漂ってくるんだ。


 みんな地球に対して同じ思いを持って、使命感を抱いてるって気がした。大昔にノアの方舟に乗り込んだ人達や動植物達も、こんな気分だったのではないのだろうか?




 僕達がいるフロアの様なところの一方向に、先程までいた部屋にあった様な質感の窓があった。かなり大きな窓だ。それはやはりというか、例の窓と同じ働きをする様で今は死神のボスが映っている。(窓のサイズから言ってかなりな迫力だ)


 広間に集まっていた僕達全員がポッドに乗り込むと、ボスが初めて見かけたときの様なわざとらしい咳払いをした。


「えーー、本日はお日柄もよく、……違うっ! えーっと、皆様、よくぞお集まり、……違うっ!! ……」


 ……テンパってるらしい。何だかボスに同情してしまう。ボスにしても、今のこの死後の世界の状況は滅多に無い事に違いない。


「コホン。こういうとき、どういった事を話せば良いのか分かりませんが、……。地球の命運を押し付けてしまった様で、申し訳ありません」


 画面の中でボスが頭を下げた。


「本来なら、私こそが先陣を切って向かうべきだと思いますが、今この瞬間にもこちらへお出でになられる、新たなる死者の方の為死神全員が出払う訳には行きません。皆様と、そして地球の未来の好運を祈っております。死神達すみませんが、よろしくお願いします……」


 ボスは再び頭を下げる。


「では、くれぐれもお気を付けて……」


 そのボスの言葉を合図に、ポッドの中の死神さんがカウントダウンを始めた。


 フロアの窓に映っていたボスの姿は消え、惑星『ニビル』が映し出された。って、あれ? 何人かの人が僕と同じ反応をしている。他の人達も遠慮がちに呟き始めた。


「どういう事だ、こりゃ?」


 僕の心の声を代弁してくれたのは、見た目ヤンキーな間宮さんだった。それに元キツそうな女の子の上原さんが答えを言ってくれる。


「あの窓に、さっきまでいた部屋と同じ転送機能が付いているんじゃない?」


「その通りです。(ゲート)を潜ってニビルの側まで一気に行きます」


 夜見が補足してくれた。


「こう言っちゃなんだけど、……便利だけど味気ないんだな」


 須藤さんがポツリと言った。そして、そのまま城田さんと『アポロ11号の月面着陸』という話を始めた。が、ゆっくりとポッドが浮かび上がって窓に近付いて行くと、押し黙り息を飲んだ。


 ……地球から離れ、いよいよ何かが始まるんだ。




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