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それぞれの想い6



 僕の名前は浅倉(あさくら) (のぞみ)。女の子みたいな名前だけど中学生男子だ。僕には少しだけ霊感がある。って、そんな事を学校でひけらかしたら、メンドクサイ事になるから言わないけどさ。


 小学校の一年生のときに友達に言ったらそのときは信じてくれたけど、後から「ウソつき!」呼ばわりされてちょっとイジメられた。だから、もう言わない。


 でもさ、今風に言うなら僕が幼稚園児くらいのときから、イマジナリーフレンドってやつがいたんだよ。僕の言う事を無条件で信じてくれる、じーちゃんとばーちゃんには小さい頃から話している。


 その子は男の子で、始めて見たときの彼はじーちゃんの電器店(小売店っていうのかな?コンビニぐらいの広さで、昔ながらの店構えだ)のすぐ前でしゃがんでボケーっとしてた。僕は「何してんの?」って話しかけたけど聞こえないみたいだった。


 それから、じーちゃんとばーちゃんが店の前の信号の脇にお花を置いて、手を合わせてるときに、それを真似しながら話しかけ続けてみたんだ。その内彼は僕に気付いてくれたけど、なんだかしゃべり方を忘れちゃってるみたいだった。だから僕は彼を店の中に連れてった。で、テレビを見せたんだ。言葉を覚えたら話をしてくれるかな?って思って。


 僕は母さんがパートに行くとき、じーちゃんの家兼店に預けられてた。ばーちゃんが幼稚園の送り迎えをしてくれて、帰って来るとその子と二人でお店のテレビを見てた。で、何かの影響で「僕はノゾミくん1号、君はノゾミくん2号ね!」って彼に言ったんだ。彼は首をかしげていたけど、少し嬉しそうにも見えた。


 僕は彼がいたせいもあるけど、じーちゃんの狭いごちゃついた店にいるのが好きだった。何に使うか分からない、いろんなサイズの電池や電球。それぞれの品数は少ないけど、テレビに冷蔵庫に洗濯機だとか、アイロンやドライヤーやホットプレート。なんだか自分とノゾミくんだけの、何でも揃ってる秘密基地って気分だった。それらの商品を眺めながら、ばーちゃんと一緒にホコリ取りの拭き掃除をするのも楽しかった。


 ばーちゃんがじーちゃんに言ってお店の隅っこに小さなテーブルセットを置いてくれて、お手伝いをするとそこにおやつを持って来てくれた。僕は必ずノゾミくんの分も用意して貰ってた。だってさ、ばーちゃん達にはノゾミくんが見えないかもしれないけど、ノゾミくんは僕と一緒に手伝ってたんだよ。それなのに僕だけご褒美があるのって、何だかおかしいじゃん。「仕事の後の一服はうまいなぁ!」なんて、じーちゃんのセリフを真似してジュースを飲むと、ノゾミくんが笑ってた。僕は意味が良く分からずに言ってたんだけどね。


 まあ、そんな感じで小学校に上がるまでは店でいつも遊んでた。小学校に上がってからは友達と遊んでから夕方店に行って、例のテーブルで宿題をやってたんだけど、「それは何?」ってノゾミくんが聞くから勉強を教えたんだ。これが良い勉強方法なんだって事は最近知ったよ。人に教える事で自分の理解が深まり、復習になるんだって。


 あと、ばーちゃんに頼んで週刊少年マンガを買って貰ってた。長期連載してる作品のどのシーンが良かったとか、キャラは誰が良いとか二人で話してたんだけど、たまにお客さんが来て僕を変な目で見た。その頃にはノゾミくんは僕だけにしか見えないって事を分かってたから、僕は慌てて、マンガを読んでて興奮して一人言を言ってる振りをした。



 ある日学校で名前についての授業があって、僕は母さんに名前の由来を聞いた。「希望を持って強く生きていける様に」って、そんな願いが込められている名前なんだって。僕はちょっと感動した。照れるね、改めて聞くと。


 でさ、僕のイマジナリーフレンド、彼の名前をちゃんと付ける事にしたんだ。取り合えず名字は、じーちゃんの名字が斎藤で店の名前が『斎藤電器店』。なのでそれをもじって『佐藤』に決めた。


 『ノゾミ』ってのは僕にも彼にも固定されてるから、漢字を調べた。流石にこれは自宅のPCでやったよ。ノゾミくんに内緒にしたかったのもあるけどさ。……臨み・望み・挑み、そして僕の希み。希望でノゾミって読ませる場合もあるみたいだった。漢字を組み合わせても良いみたいで(望未とか希美とか挑己とか)、それを考えるのは面白かった。……が、考え過ぎて悩み過ぎて、一周回って『臨』にした。理由は、意味の中に空間の広がりみたいなのを感じたから。


 現在の、店に縛られている様な彼の生活。本当は僕の行く所のどこへでも連れ出してあげたかったけど、僕はその頃は霊感があるのを周りに隠していたので、彼と一緒に出掛けて友達にバッタリ会って変なヤツと思われたり、小1のときの様な事になるのは嫌だった。そんな事も考えての『臨海』の『臨』の文字にしたんだ。



 でも彼は今はいなくなってしまった。じーちゃんの店が放火されてから消えてしまった。


 じーちゃんとばーちゃんは今はここ、浅倉家で一緒に住んでる。もう電器店はやらないみたい。ただ場所は車通りも人通りも良いので、何か町の人の為になるお店を開こうとしてるみたいだ。そしたら、また店の片隅にテーブルセットを置いて貰おうと思ってる。


 ……僕もだんだん部活や塾で忙しくなるだろう。高校生になればバイトもするつもりだ。じーちゃんのお店には余り行かなくなるかもしれないけど、ひょっとしたら彼が顔を出してくれるかもしれない。そのときに自分の居場所が無いのは可哀想だと思う。


 これで、僕が小さかった頃から最近まで、双子みたいに過ごして来た『臨くん』の話は終わりだ。そうだな、来世では本当に双子か親友になりたいな。僕達スッゴク気が合ってたんだ。一緒にマンガやテレビを見て笑い転げた事(同じところで笑えるって大切なことらしいよ! 感性が同じだから、分かりあえるんだって)、いつまでも忘れないよ……。




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