死神さん達のお仕事2
「ちょっと待って下さい! 皆さん、本気ですか! どんな危険が待ってるか分からないんですよ。宇宙空間で万が一の事があったら、転生の輪から外れてしまうかも知れないんです。それでも構わないのですか?」
焦った夜見が言うと、間宮さんが子供向けテレビ番組のヒーローの様なポーズで深く頷き、そのまま何のスイッチが入ったのかポーズを変えながら話す。
「おう! 無問題だ! 夜見が駄目って言っても付いていくぜ。しゃきーん!」
誠也くんも言う。誠也くんの方が間宮さんより説得力があった……。
「……本当は生まれ変わるの、ちょっと怖いんだ。だって、どんな人が親になるか分からないし……。それに僕達はもう家族みたいなモノでしょ? もし夜見の言う通り、万が一の事があるなら僕は家族と一緒にいたいんだ」
城田さんが優しく誠也くんの肩を抱き、須藤さんが頭を撫でた。僕は誠也くんと目線を合わせて頷いた。が、上原さんが、……。
「えっと、私はまだママには早い年齢って言うか……」
えっ、そこ? そこに反応するの!? 両手で赤い顔を押さえて照れている。何のスイッチ入ったんだ、上原さん! ……そして、もう一人。
「オレのポジションは? ……照れるなぁ。はっはっはー」
間宮さんが頭を掻く。何を想像したんだ? ……この二人、実は似た者同士だったのか?
「……私、誠也くんの気持ち良く分かる。前回の生き方に自分の性格の責任もあるのは分かってる。だけど今でも思い出すと、……まだキツいの。次回生まれたら平凡ながらも穏やかな生活が待ってるかって言ったら、そんなの分からない訳だし。……だけど皆に出会えて、それぞれの話を聞いて、心が軽くなったわ。私がまだ皆を必要としてるの。皆が行くなら私も行く」
上原さんは言葉を選び、噛みしめる様に言った。それを聞いた間宮さんも真面目な顔になる。
「夜見、連れて行ってくれ。動機はそれぞれ違うけど、って、オレ言ったっけ? オレは、地球を守りたい! それを夜見達に任せて高みの見物なんてしてらんねえんだよっ」
「……」
夜見はタブレットを操作し、ボスに話しかけた。プツッという音の後、窓=画面にボスが映る。
「お聞きになった通りです。他にも参加される方はいるのですか?」
ボスは脇からティッシュを1枚取ると、思いきり鼻をかんだ。目が真っ赤だ。
『夜見君。いや、皆さん! 最初に皆さんにお集まり頂いたあの広間にいた方々ほぼ全員から、同じ申し出を頂いたのですよ。他にも天の階と地底の階の皆様からもです! ……こんな風に死者の皆様の心が1つになって、地上の世界、現世を救おうとするなんて今まで無かったのではないでしょうか!? 私は感動しているのですよ!』
ボスは新しいティッシュをもう1枚取り出し、また鼻をかんだ。
『いや、地底の階の者の中には『このまま、ここで何年も過ごすくらいなら地球の為に魂が無くなっても構わない』なんておっしゃる方もいますが。……ただ地底の階の皆さんには申し訳ないのですが、本当に反省している方だけを連れて行きます。でないと混乱が起こっても行けませんので……。さあ! こちらは移動の為の準備に取りかかります! 皆様、そちらでもう少しお待ち下さい』
プツッという音と共にボスの映像が消えた。
「お聞きになった通りです。……準備に暫くかかると思われますので、そうですね……ひょっとしたら、もう地球に戻れない可能性もありますので、最後に見ておきたい景色等ありますか? 宜しければリクエストに応じますが?」
「須藤さんの海が見たい、って臨君が。」
上原さん、何言ってるんですか! 確かに、ちょっと見たいけど。
「良いねえ! 地球観賞会か? よし、やろう!」
間宮さんがノリノリで叫んだのだった。