死神さん達のお仕事1
ドヤ顔できっぱりと言い切った夜見に僕達が呆気に取られていると、窓である画面から聞きなれた声が聞こえて来た。画面はいつの間に切り替わったのか、星空の画像ではなくなっていたのだ。
『おーい、夜見! 聞こえてるかぁ?』
画面に映っていたのはヤンキーなお兄さんこと間宮さんだった。
「間宮さん、どうなさいました?」
夜見が返事をすると、間宮さんが続けて言う。
『ここで《最後の審判》? 《転生》の順番待ち? してたんだけど、……居ても立ってもいられないっつーか。ま、1度そこに戻りてーんだわ。OK?』
相変わらずの話しっぷりに、僕と上原さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
『おう、何笑ってんだよ。ってか、笑ってる方が可愛いじゃん』
「なっ!」
上原さんの顔が真っ赤になり悔しそうな目付きになったが、見なかった事にした方が良いんだろうな、うん。……何も言うまい。
『あ、城田さん達も一緒なんだけどさ』
夜見は「ふむ。」と一言呟き、タブレットの上に指を走らせる。
「一応、上に確認します。……少しお待ち頂けますか?」
間宮さんの周りに、ロマンスグレーのおじさんの姿に戻った城田さんと、同じくおじさんに戻った須藤さん、逆に本来の姿の誠也くん(なんか違うのだ。智佳さんがいたときより落ち着いているというか、自分をちゃんと持っていそうというか)が集まって、こっちに向かって手を振っている。
「なんか、妙に懐かしい気分になるわね」
上原さんの言葉に僕は手を振り返しながら深く頷いた。
「皆の話をきいてた時間が、濃かったからかな? ……でも、また会えて良かった」
「そうね」
上原さんは画面に向けて照れ臭そうに手を少しだけ挙げた。
そこへ間宮さんがしゃべりながら、窓=ゲートから入って来た。
「なんか、久しぶりな気分ーっ」
……間宮さんには絶対敵わないんだろうな、と思う。彼の声を聞いてから、ボスや夜見の話を聞いていたときの言い知れぬ不安な気持ちが飛んでいってしまっている事に気付いたのだ。
「お帰りなさい、で良いのかしら?」
「お、さんきゅーっ。でいいのか?」
上原さんと間宮さんの漫才を無視して城田さん達もぞろぞろと来てソファーに座った。全員が腰かけると間宮さんが切り出す。
「放送が終わってからさ、向こうの部屋で担当に付いてくれた死神にこの部屋の様子を教えて貰ってたんだよ。で、夜見の説明をオレ達も聞いてたわけ」
「死神の仕事、というのが気になってしまいましてね」
城田さんが言葉を繋ぐ。
「宇宙に行くの? 夜見達。」
誠也くんが、少し羨ましがってる様な素振りを見せた。当の夜見はー、
「そ、そうですね……」
なんと! 戸惑い言い淀んでいる。
「俺達も手伝えないのかな? それ。もちろん、仕事の内容を聞いてみない事には偉そうなことは言えないんだけどさ」
今度は須藤さんがキッパリと言った。
「いろいろと考えましてね。……私達にはそれぞれ大切な物がある、でも、その大切な物が脅かされているのに呑気に転生など待っている場合では無い! と思ったんです」
城田さんが、その穏やかさの中に決意を込めて言った。
「第一このままじゃ、転生した先がどんな世界になっていることか。……俺はさ、島の出身なんだよ。海を見て育ったんだ。だから、……」
何か心から溢れそうになったのか、須藤さんの言葉が途中で止まった。
「あ、それで日焼けしてるのかぁ」
前言撤回! 間宮さんには勝てなくていい!! 普通、身体的特徴に関する事は、相手はどんな気持ちになるか分からないから話すのはタブーなんだよね!?
上原さんや、あの城田さんでさえ呆れた表情になった。が、当の須藤さんは大笑いをした。
「そう! 俺はまだまだこんな風にオモシロイ奴と出会いたいんだよ! だから、協力させてくれ!」
あれ海は? と思ったけど、須藤さんが笑いながら間宮さんの背中を叩き、間宮さんが苦笑いしてたので黙っておいた。
「僕はね、遊園地に来てたお客さん達の笑顔を無くしたくない、って思ったんだ。あのとき、幸せそうな家族連れの人達をたくさん見た。……その時はうらやましいとしか思わなかったけどね」
誠也くんの話ぶりに強くなったな、と思った。言葉に、目に、力があるのだ。
「上原さんは、どうします?」
僕は無意識に尋ねていた。
「一緒に行くわよ。動機は不純かもしれないけど、ここでハラハラしながら皆が戻って来るのか、『その時』が起こるのかを待ってるなんてゴメンよ! 臨君こそどうするの?」
逆に聞き返されてしまった。僕の心は既に決まっていた。
「行きます。……僕は、全てを見てみたい」
「決まりだな。」
間宮さんが両手を腰にあて、ニヤリと笑った。
どうして間宮クンが出てくると、こんな文章になってしまうのだろう?
須藤さんが修正してくれたけど。
《日焼け》の部分、書いてから『アレ?こんなはずじゃ…』と焦った銘尾でした…。