表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

夕映え

読み飛ばされた方へ、あらすじです。


10話 

 この部屋に集められた人達が、一人ずつ、心の悔いを無くす為に旅立って行った。

 残された4人で少し話をした。その結果分かったのは…。

 キツそうな女の子…上原茉莉(うえはらまり)…整理券の色は赤黒い色

 男の子…北川誠也(きたがわせいや)…整理券の色は黒

 もう一人の女の子…智佳(ちか)さん

 僕…佐藤臨(さとうのぞみ)…整理券の色は茶色

 この暗い色は、何を意味しているのだろう。


11話

 上原さんの話を聞いた。上原さんは家庭は裕福だったが、家族には恵まれなかったという。

 虚栄心(きょえいしん)猜疑心(さいぎしん)から常に孤独を感じ、苦しんでいたらしい。

 心が病んでしまって、ある日思い余って大量の睡眠薬を飲んで……。


12話

 誠也くんはお母さんから酷くいじめられていた。とても辛かった彼は、自分を守ってくれるお姉さんが欲しかった。そんなとき智佳さんが現れた。

 だが、智佳さんは誠也くんの心の中に生きていた人だった。…誠也くんは二重人格者だったのだ。

 追い詰められた二人はお母さんから逃げ出そうとしたが、きっと逃げ切れないと思い発作的に死を選んだ…。

「そう言えば、私も行ったこと無かったわ、遊園地。」


 巨大画面となった窓に映ったメリーゴーランドに乗る誠也くんと智佳さんを見て、上原さんが言った。


「楽しそうですね。ついさっき話をしてたときの表情とは段違いですよ。」


 僕達が話している間にメリーゴーランドが止まり歩き出した二人が、お化け屋敷の看板を見て怖がっている様子が映し出される。


「お化けがオバケにびびってどーすんのよ…。」


 上原さんが呆れた様に言うが、画面に映った看板を見たら、『いや、あの絵は反則だから、リアリティーありすぎだから!』と僕は思ってしまった。


「無難にティーカップに行くみたいですね。」


「ああ、横回転のやつね。あれって話を聞いたことがあるんだけど、肉体が無くても目って回るのかしら?」


「さあ?どうでしょう…?(気になるの、そこ?)」


 誠也くんと智佳さんの、楽しそうな様子を見ることが出来て嬉しかった。なんだか見ている僕達も、ワクワクしてくる様な笑顔をしている。


 生前、辛いことの多かった二人だ。短い時間しか一緒にいなかった僕が思うのは変かもしれないが、嫌な気持ちが少しでも救われるといいな、と思った。




 画面の中の日が傾き、だんだんとアトラクションの影が伸びていく。ちらほらと出口に向かう来客が目立ち始める中、誠也くんが智佳さんを見上げ、何か決意した表情になった。


 智佳さんの手を引っ張り、観覧車を指差す。見上げた智佳さんの楽しげな顔が一瞬緊張した様に見えた。だが、すぐに優しげな笑顔に戻した、と感じた。


 観覧車から綺麗な夕焼けが見えた。太陽の紅が薄く漂う雲に色移りし、周りの景色を幻想的に染め上げる夕映えの時刻…。うっすらと色づき始めた三日月が、誠也くん達をそっと見守っているみたいだった。


 観覧車が紅と紫のコントラストの天空へ近付いて来た頃、誠也くんが決意したかの様に智佳さんに話し始めた。


「あの、…ありがとう、今まで。…僕一人じゃなかったから心強かったよ。智佳ちゃんがいなかったら、ずっとあの(ひと)の所で、あのまま苦しい思いをし続けてたと思う。だからね、あそこから逃げ出せたのは智佳ちゃんのおかげなんだ。本当にありがとう。僕、もう大丈夫だから安心してほしい…。」


 智佳さんを真っ直ぐに見つめ、しっかりと気持ちを伝える誠也くんは堂々としていた。智佳さんは瞳に涙を浮かべながら頷いた。


「そうね…、確かにあの頃の誠也くんとは、全然違う顔付きをしてるものね。もう、何があっても大丈夫ね。分かったわ、私は誠也くんの中に帰ります。ずっと、ずっとあなたを応援してるからね…。」


 話し終えた智佳さんが、夕日に照らされて紅がかったオレンジ色に輝きだした。その体の輪郭がほどけて小さな光の球になる。すると、誠也くんの胸の中にすうっと入り込んで行った。


 誠也くんの体もオレンジ色に輝く。それが智佳さんと融合した為なのか、夕映えのせいなのか分からなかった。


 誠也くんが観覧車を降りると死神さんが待っていた。間宮さんのときに現れた死神さんだった。


「整理券をお出し下さい。」


「はい。」


 そう返事をした誠也くんの顔はさっぱりとしていて、声も力強かった。


 端の折れた整理券は、以前見た黒ではなく、夜空の様に紺色の光沢(こうたく)がある様に見えたが、一瞬の事なので僕の見間違いだったかもしれない…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ