整理券の色
「ねえ、自己紹介をしたらすぐに『旅』に出なきゃ行けないって訳じゃ無いんでしょ?」
キツそうな女の子の問いかけに、死神の夜見が返答する。
「勿論です」
夜見の答えを聞いて、キツそうな女の子が軽く頷いた。
「じゃあ、もうこれだけの人数になっちゃったんだし、1度少し話さない? ……気になることもあるし」
生きていたときの事を全く覚えていない僕は反対した。……心の中で。
「どう?」
キツそうな女の子は僕にではなく、男の子に言った。男の子は黙ったままキツそうな女の子を見つめ返す。
「……何となくだけど、私達同じ匂いがするの」
キツそうな女の子の呟きに夜見は何も言わない……が、少しだけ表情が翳った様に見えた。
男の子は今までとは違い、大人びたため息をついて言葉を返す。
「良いよ、お姉さんの言う通りにする」
その瞳には不安の色が読み取れ、力が感じられなかった。
キツそうな女の子はチラリと男の子を見、それから僕の方を向いた。
「キミもよ、少年」
「はい……」
僕の口から僕自身がびっくりする程の、気の抜けた声が出た。その理由は、男の子の様子に気を取られていたからだけでは無い。
キツそうな女の子はそんな男の子と僕にサクサク話し始める。
「じゃあ先ずは私から。私の名前は上原茉莉。年齢はいいわね? ……それで私の整理券はコレよ」
そう言って差し出された整理券を見て僕は驚いてしまった。真っ赤だったからだ。それも血液の様な、少しだけ黒が混ざった様な鮮やかな赤。僕はその色を見た途端、何故か体中から力が抜けて行く様な錯覚を覚えた。
「あなた達の整理券も見せて欲しいの」
僕の目は上原さんの整理券に吸い寄せられてしまっている。
男の子はポケットをがさごそと漁りながら言った。
「僕は北川誠也、このお姉さんは智佳」
端が少し折れた整理券を僕達に広げて見せる。
今度は黒だった。暗闇の様に不安な気持ちにさせる、濃い黒さ……。
二人の整理券を見ていると何故か胸がざわついて来る。
「で、キミは?」
上原さんに言われて、慌てて僕も整理券を出した。
「佐藤臨です」
「のぞみ君ね。茶色か……」
今まで見たのは(城田さんのは見てないけど)、須藤さんが緑色、間宮さんはピンク色だった。整理券にどれだけ色の種類があるか分からないけど、彼等と僕達の整理券の色味の違い、これは何を意味するのだろう?
「ふうん……。ま、いいわ。何となく理解したから」
僕は「何を?」と言う言葉を飲み込んだ。どんな答えが返って来るか怖かったのだ。
上原さんは腕を組んでソファーにもたれかかる。僕は困惑し、上原さんと誠也君と智佳さん、それに死神であるの夜見の4人の顔を順番にチラチラ見た。
「……じゃあ、」
上原さんが不穏な空気を破って話し出す。
「私の話を聞いてくれるかしら?」
そのときの上原さんは、口調は軽いのに何かに挑む様な目付きをしていた。