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俺は異世界に召喚された  作者: 達海らおと
第3章〜怒濤の王都生活〜
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第56話<驚きの日>

ポカポカとした眠気を誘う日差しが、家の広間に差し込んでくる。


「う〜ん。・・・ふあ〜〜」


俺は広間に置かれた大きめのソファーに、寝転びながらゴロゴロしている。


朝飯食ってから、時間がだいぶ経ったよな〜。昼ご飯はまだかな〜。それとも、この家は一日二食なのかな〜。


暖かい日差しにあたっていると、何かに優しく包み込まれたみたいに、穏やかな気持ちになり、眠気が来るというのは、自然と起きてしまうものだ。


ソファーの余った端っこのスペースに、イノリが小さな欠伸をしながら、座って俺を穏やかな目で見てきた。


俺はゆっくりとゴロゴロしながら、イノリに顔を向けて。


「どうしたんだ?」


「いいえ〜、なんだか気分が良くて〜」


イノリはいつもよりほのぼのした口調で続けて。


「今日はクエストなんか行かずに〜、一日中こうやって過ごしませんか〜?なあに、王都に来てから毎日のように、クエスト生活をしていたんです。お金はたんまりとあるはずですからぁ〜」


俺は目を瞑ってゆっくりと深く頷く。


賛成だ。今日という日ぐらい、一日中こうやってのんびりと過ごしたいものだ。



王都に来てから、カオル達と会って、それからというもの、毎日クエストを行う生活を送っていたのだ。働かずとも、二日間は裕福な生活が出来るぐらいには、お金があるはずだ。


こういう時に、王城にいる裏切り者の尻尾でも掴むべきなのだろうが、そんなのする気にはならないから、絶対にやらない。

・・・そのうちボロでも出してくれるだろう。


俺は大きな欠伸をして、口を少しムニュムニュしてから。


「イノリ〜。お昼ご飯はいつ〜?」


すると、イノリは口元を手で軽く押さえながら、小さく笑い。


「何言ってるんですか〜。さっき朝ご飯食べたとこじゃないですか〜」


「そうだったな〜。・・・そういえば、ハルはどこなんだ?」


イノリは口元に指を当てながら、思い出すそぶりをして。


「ああ、朝ご飯食べてから、散歩に行ってくるって言ってましたね〜」


「・・・そうか〜」


とりあえず面倒事を持って帰ってこないように祈ろうか。やっぱり面倒くさいな〜。


そんなこんなを考えていると、突然に家の玄関が勢いよく開かれ、ほのぼのとした平穏が消し飛ばされてしまったのであった。



ゴロゴロしていた体を起こして、目の前でニコニコしながら立っているハルを見ると。


「ねぇ、シンジ。犬は好き?子犬だよ。毛がふさふさの茶色で、目がとても愛くるしい子犬なんだけど」


「おい待て。いきなりなんなんだ?しかもよくよく聞けば、犬を飼うってことなの?」


ハルは俺の言葉に反応したが無視して、目をパチパチさせながら、俺を見てくる。


新手の嫌がらせか。


「ちゃんと考えてみろよ。冒険者がペットを飼う?そんな余裕どこにあるんだ?あと、毎日散歩に行かせなきゃ行けねーじゃねーな」


すると、イノリが俺の肩をちょんちょんと叩いて。


「犬は散歩させなくていいんですよ。散歩をさせなきゃ行けないのは、猫の方ですから。・・・シンジのいた世界じゃ、どうだったのかは知りませんが」


逆だったんだ。にしても、猫がリードを付けながら散歩をしている絵が、なかなか思いつかないんだけど。


すると、目の前で立っているハルが、座っている俺に目の高さを合わせて。


「シンジ!これからクエストを受ける時は、全部初級クエストにするんじゃなくて、中級クエストにしたらお金の心配なんて、いらないと思うの」


はい、そうですか・・・。


俺は外を見ながらため息を吐き。


「まあ、いいよ。家族が増えるだけだ」


俺の言葉にハルはとびっきりの笑顔を見せながら。


「うん!」


俺はこういうのに、弱いんだよな〜。


ハルは背中に手を回して。


「は〜い。新しい家族になることになった、子犬のペペでーす」


そう言って、俺の懐に、子犬ことペペ。ペペこと家族が飛び込んできた。


俺はペペを撫でていると、ペペが気持ちよさそうに体をくねくねし始めるので、ニヤニヤが止まらなくなる。


ハルは立ち上がって。


「さて、それじゃあ今から中級クエストでもやりに行こうか」


え、・・・ほのぼのして過ごせるんじゃなかったの?


イノリは一向に準備をしようとしない、俺を見て。


「さあさあ、早く準備してくださいよ〜」


「今日はほのぼのしながら、まったりと過ごすんじゃなかったの?」


イノリは少し笑って。


「家族が増えるんだし、祝ってやらないとけないけませんよね〜」


やっぱ、そうなりますか。


俺の懐にいる子犬のペペは、愛くるしい顔を俺に見せてくる。


「まあ、家族なら仕方ないよな」


そう言って、クエストに行くことにした。


改めて思うが、平穏で何もしずに一日が終わるという日があっていいと思う。強く熱望するくらいだ。



************



俺とハルとイノリは只今、荒らし野七体討伐のクエストをしているのだが、大ピンチ。


一体は倒せたのだが、残りの六体に逃げ場のない洞窟まで、追い込まれてしまっている。


俺は荒い呼吸をして、肩を震わせながら。


「正直舐めきってた。中級になるだけでモンスターの強さがここまで変わるもんだとは」


俺が右手に握っている刀を何度も握り直していると。

ハルが横で急に笑い始めて。


「あはははは。やっぱり、そうだったかー。こっそりと、中級クエストを受けたフリをして、上級クエストを受けちゃったんだよねー。ほら、お金が一気にがっぽりって感じだから」


「通りで強すぎると思ったら、・・・何してんだよ!」


俺の声が洞窟内に響き渡る。


「ごめんごめん。まあ、シンジだけはなんとか無事に元の世界に返してあげれる、奥の手があるから」


「ちょっと〜、ハル〜。私はどうなるんですか!」


はぁー、まあ、奥の手とやらが気になるが・・・。


「とりあえず、この状況を打開するぞ!」


俺がそう言った時、急にとんでもなく明るい閃光が走り、目の前にいた荒らし野達を飲み込んでいった。


「「「・・・・」」」



俺達は、それを呆然と眺めていた。

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