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俺は異世界に召喚された  作者: 達海らおと
第1章〜出来過ぎた一週間〜
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第4話<月よりも輝いて>

俺とハルは、噴水の前に座っていた。

辺りは暗闇で、街灯と月の光が俺達を照らしている。周りには人がいなく、とても静かだ。


「ごめんな、俺に任せろとか言っといて、結局誰も捕まえることが出来なくて」


俺は、下を見ながら言った。


結局、ハルのパーティーメンバーは、一人も捕まえることが出来なかった。俺は、自分が無力だという現実を突きつけられたのだ。


すると突然、ハルが小さくクスッと笑って、俺の肩を手で突いてきた。


俺がハルの方を見ると、目が会った。


「シンジのせいじゃないから気にしないで。私を助けてくれたときは、本当に嬉しかったんだよ」


「そうか、それじゃあ切り替えて、明日に向けて反省しようぜ」


俺は、元気良く言った。


すると、俺を見ていたハルが下をうつむいた。


「ありがとう。でもね、もう出来ないんだ」


ハルの口から発せられた声は、弱々しかった。


「なんでなんだよ。諦めんのか?」


「そ、そうじゃないんだよ」


ハルは、顔を上げて俺に空笑を見せる。


「本当はね、パーティーメンバーが集まらなかった理由を知ってるんだよ。多分、私サーチをかけられていたんだ」


「どういうことなんだよ。あと、サーチってなんだ」


「サーチっていうのは、一種の魔法なんだよ。効果は、かけた相手の能力を知ることが出来るの。私は攻撃力がほとんどないんだ。魔法使いなのに攻撃魔法の一つも使えない。回復系の魔法は極めてあるんだけど、今どきそんなバランスの悪い魔法使いは、ポンコツなんだよ」


「で、でもさ、回復魔法は極めたんだろ。それならさ、パーティーメンバーが集まらない理由にならないだろ」


「今は冒険者をする人が少なくなってきてるの。理由は、冒険者なんてやってたら、いつ命を落とすかも分からないし、魔王軍に喧嘩を売ってるようなもんなんだよ」


この世界に、魔王なんていたんだ。ま、いつ命を落とすか分からないのは、同意するしかないな。


ハルは話を続ける。


「そして今の魔法使いに求められているのは、回復系の魔法がそこそこ出来て、なおかつ瞬間火力がとんでもない攻撃魔法が使えることなんだ。ね、私なんか簡単な攻撃魔法すら使えないんだよ。そんな私とパーティーを組んでくれる人なんて、世界中探してもきっといないんだ」


ハルの一言一言に重みを感じる。俺は、胸が苦しくなっていく。


「これから練習して、攻撃魔法を身につければいいじゃないか」


ハルは、再びうつむく。


「そうしたいんだよ。でもね、もう時間切れなんだ」


「時間切れってなんだよ」


「私の親はね、もともと私が冒険者になることを反対していたんだ。でも、頼みこんだら、パーティーメンバーを連れて家に来て、その人の顔を見せてくれたら、冒険者になっていいって言ってくれたんだ。で、その期限が今日までなんだ。普通、私と同じくらいの年齢の子は、もう結婚するんだ。親もそれを望んでいる」


「でも、ハルは結婚という道ではなくて、冒険者の道を歩みたいんだよな」


ハルは、力なく頷く。が、今の彼女の目には、希望の光が全く見えない。


「ハルは、サーチって魔法使えんのか?」


「使えるけどどうしたの?」


ハルが、俺の唐突な発言により少し驚いている。


「じゃあさ、俺に使ってくれよ。俺の能力を調べ上げてくれ」


「分かった。今日のお礼ってことでね」


ハルは、俺に向かって左手を伸ばす。


「サーチ」


ハルは、俺に魔法をかけた。


別に体の以上は感じられない。


ハルは、こちらを見てきた。


「この魔法はね、相手の能力の情報が私の頭の中に送られてくるの。それじゃあ、言うよ」


俺は、小さくうなずき、息を飲む。これが、こいつと俺のこれからに関係するから。


「簡単に言うね。ゼロ〜百の数値で言っていくよ。数値が高ければ、高いほど良いって意味だから。あと平均は、全部五十で考えてくれるといいから」


よし、運命のときだ。


「スピードは六十。瞬発力は六十八。守備力は七十二。魔力は、えーと言っていいのかな」


何をためらっているんだろう。


「ためらうな。ドーンとこい」


「そ、それじゃあ、魔力はゼロです」


「なんじゃそりゃ。ゼロってなんだよ。まあいいや、それより攻撃力を教えてくれ」


「攻撃力ね、ちなみに私は十九だよ」


「はいはい。早くしてくれ」


ハルは、少しむすっとしたが、すぐさま目を瞑った。俺の攻撃力の情報を受信しているのだろう。


俺は、願う。


やがて、ハルは目を開けて、少し体を震わせていた。


「こ、攻撃力は、八十二です」


すげぇ。俺ってそんなに高かったんだ。それよりこれで、必要なピースは揃っただろう。


ハルは、立ち上がる。


「攻撃力は、とんでもなくすごいね。なかなかいないよ」


「ありがとう」


「うん。時間が時間だし、もうお別れだね。楽しかったよ、シンジ。私は、明日から花嫁修行かな」


彼女の目から、少し涙が溢れていた。


諦めきれてねえじやねーか。


俺も立ち上がる。


そして、俺は言う。


「ハル。俺と、パーティー組まないか?」


「え」


突然のことにハルは、驚いている。


「わ、私のことは気にしないでいいから」


素直じゃないな。


俺は、少し笑う。


「ハルには、ハルの目的があって、俺には、俺の目的があってパーティーを組むんだ。別に気をつかってるわけじゃねーよ」


「じゃあさ、シンジは、なんで冒険者になるの?」


俺には、俺の理由がある。俺は、ただ知りたい。その答えをハルとパーティーを組むことによって見つけることが出来る

と思ったから。


「俺の理由はな、なぜ俺がここに召喚されたのかを知るためだよ」


ハルは、しばらく口を開けていて、急に笑いだす。


「シンジの理由がいまいちわけわからないよ」


「そうだな、俺も分からない。だけど知ろうと思ったんだ」


自分の手で答えを掴むために。


「そういえば、ハルがなんで冒険者になろうとしてんのか、理由ぐらい教えてくれよ」


彼女は、人差し指を立てる。


「まだ、教えられません」


まだか、まだってことは。


「ハル、俺とパーティーを組んでくれませんか?」


「もちろん、喜んで」


ハルは、笑顔で答えてくれた。



彼女の笑顔は、満月よりも輝いていた。






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