第15話<温泉>
俺は今、温泉につかっている。俺以外の人が男湯にはいないので、貸し切り状態である。
俺は、夜空に輝く星を眺めながら。
「ふぅー。やっぱ温泉は趣があって疲れが取れるし、最高だなー」
アンデット達のクエストの報酬金を受け取った後、昼間から宿屋を探し、温泉付きの宿屋に宿泊することになり、今に至る。
異世界と言っても、温泉は日本の和の雰囲気を感じさせる作りになっているので、安心感を覚える。
俺は、体を伸ばしながら。
「俺がここの世界に転移されてから、もう四日目か。いや、もうすぐに四日目が終わり、五日目突入だな〜」
俺は、異世界に来てからのことを思い出していく。
まさか、自分がこんな目に会うなんて誰も考えないよな。
楽しい時もあれば大変な時もあり、とても俺の異世界での生活は充実していると言えるだろう。
それもこれも、ハルとイノリのおかげだろうな。あいつらがいなかったら、今頃俺が何をしているのかなんて想像もつかない。
俺は温泉から上がり、ゆっくりそして、確かな足取りで、脱衣所に向かって歩いて行く。
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流石に浴衣までもがあるわけではなく、俺は、制服に身を包みながら宿泊する部屋を開け、部屋の小さな広間に行って。
「たっだいまー」
「あ、おかえりー」
「おかえりさまで〜す♪」
ハルとイノリはガイドブックを開けながら、夕食をどこで食べるかという、相談をしていた。
俺は 、二人の向かいに座り。
「夕食、どこで取るのか決めたのか?」
「うん。[一つ星のカルビ]って言うお店に行こうと思ってるの」
なんだか、おしゃれそうな名前の店だな。でも、油油してそうだな。
「さ、シンジも行きましょうよ〜」
イノリが立ち上がり、俺の手を引っ張ってくるが。
「悪いな。今日は二人で楽しんで来てくれ。俺は、のんびりと静かに飲みたい気分なんだ」
「う〜、分かった。シンジも男の子なんだし仕方ないよね」
ハルは、俺を優しく見つめてくる。
絶対、ハルは誤解をしてるよな。俺、なんか変なこと言ったかな〜。
そして、ハルとイノリは部屋の出入り口のドアを開けながら。
「それじゃあ、楽しんで来てくださいよ〜。私達はもう行くので」
ハルとイノリが部屋から出て行き、部屋が静かになる。
しばらくしてから、俺も立ち上がり。
「飲みに行くかー」
そう呟いて、部屋から出て行った。




