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俺は異世界に召喚された  作者: 達海らおと
第1章〜出来過ぎた一週間〜
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第14話<洋館はアンデットと共に>

「ね、ねぇー。帰らない?今からでも間に合うから、クエスト失敗でもいいから帰ろうよ」


「ハル、忘れてないだろな。俺達の今の有り金全てで、五百ルビーだぞ!このクエストを成功させるまで、絶対帰らん」


俺達は今、何十年前に廃墟となった小さな洋館に住み着いた、アンデット達の討伐クエストに来ている。


ランプを持ちながら、俺が先頭になって静寂に包まれた長い廊下を歩いている。


洋館の中には明かりがないから、ランプだけが頼りだ。たまにフクロウの鳴き声も聞こえてくる。


ハルとイノリは俺の背中にくっつきながら、進んでいる。


本来ならもっと喜ぶ状況なんだろうな。なんたって、可愛い年頃の女子二人が俺の体にべったりだから。いや、体にべったりという表現はよろしくないな。


俺が辺りを見回しながら。


「なんか肌寒いよな」


「もぅ〜、そんなこと言わないでくださいよ〜。いや、ほんとお願いしますね」


イノリが震えながらマジの目で俺を睨んでいる。

その横で、ハルがさっきからずっと変な呪文かなんかのお祓いのときに唱えそうなことを唱えている。


「なあ、ハル。それやめてくれないか。余計に恐怖心が増すんだが」


「だって、アンデットに会いたくないもん」


「いや、俺達の目的はアンデットの討伐だからな。そこ忘れないでくれよ」


今回のクエストは洋館に住み着いたアンデットの討伐数に、二千ルビーをかけた数が報酬金となっている。

何が何でも、このクエストで稼がなければいけない。そして、そのためには一体でも多くのアンデットに遭遇しなければいけない。


うっし、とりあえず適当に部屋の中に進入してみるか。


俺は立ち止まり、たまたま通りかかった部屋のドアに手をかける。


「ちょちょっと、ほんとうに行くの?」


ハルが涙目で震え始めている。


「行くしかねーだろ。じゃ、行くぞ」


俺の合図にハルとイノリはガクガクと震えながら頷く。


俺はゆっくりドアを開けて、静かに進入し、後からハルとイノリも進入した。

俺は、ランプで辺りを照らして見回す。


「小さな部屋だな。アンデットもいねーしハズレだな」


この部屋は、寝室と言ったところであろう。部屋の隅に二つのベッドが置いてあり、周りはこざっぱりしている。


すると急にランプの火が消え始める。


俺は、ランプの火に酸素を送り込むように頑張りながら。


「おいおい、ちょっとマジでか。頼むから消えないでくれ」


ランプの火は今にももう、消えそうである。


更に、部屋のドアが急に閉まり。


「「キャーーーーー‼︎」」


ハルとイノリの叫び声と共にランプの火が消えてしまった。


俺は、呆然とする。


終わった。何にも見えない。どうしたらいいんだ。


とりあえず俺達は部屋の端っこに行き、座りこんだ。


するとイノリがモゾモゾし始め。


「『フレイムボール』」


すると、目の前に温かみのある炎の弾が現れた。その炎の弾がわずかながら、辺りを照らしてくれる。


「すげーな、イノリ。まさかこんな便利な魔法も使えるなんて」


うん、マジで感動してる。生きてる感じがするよ。


「この炎の弾は、一応は魔法弾の弾ですよ。まあ、こういう使い方があるのを思い出したんです」


俺の左に座っているイノリがドヤ顔を見せてくる。

そして、俺の右に座っていたハルがイノリに抱きつき。


「ありがとう、イノリ」


「どういたしまして♪」


イノリもハルを抱き締める。


なんか俺、場違いな気がするな。目を二人からそらしておこう。


そんなことを考えていると、変な違和感を抱き始めた。


あれ、なんでこんなに静かなんだ。さっきまで聞こえていたはずのフクロウの鳴き声が、全く聞こえない。


俺は、恐怖のために早くクエストを終わらそうと、二人に言うために。


「なあ、早くクエスト終わらせて帰ろうぜ」


俺は立ち上がり、ハルも立ち上がりながら。


「そうだね。ちゃちゃっとクエストを終わら」


「ヒッ」


ハルの言葉がイノリの怯えた声で遮られた。


俺とハルがイノリを見ると、イノリは指をさしながらガクガクと震えていた。

イノリが指をさしている先を見ると、閉められたドアが少しずつ開いている光景を目にする。


俺は刀を抜いて構えながら。


「ついに、アンデットと対面か?それとも幽霊さんか?イノリ、魔法弾の準備しといてくれ」


イノリは震えながら。


「ま、まかせて下さいよ。アンデット達にぶ、ぶ、ぶぶぶ、ぶちかましてや、やりますから」


ダメだ、イノリは恐怖で支配されちまった。


「い、いざってと、時は、私の魔法弾で洋館を燃やし尽くしますね〜」


正常に戻ったと思ったら、とんでもないこと言いやがった。


「あ、あのー、イノリさん。洋館を燃やし尽くすのはやめてくれよ。多分、とんでもない借金とか背負いそうだし」


もう、自分の身よりそっちの方が心配になってきた。


気付けばドアは開かれ、呻き声が聞こえる。


「来る」


俺はそう呟き、戦闘態勢に入る。


すると、アンデット達がどっと部屋に押し寄せて来た。


「やっば」


あまりに急な出来事のため、驚いていたが迫ってくるアンデット達を斬っていく。


隣ではイノリが。


「『フレイムショット』」


炎の弾を連射で、アンデット達に撃ち込んでいく。


ハルは、アンデットから逃げ回りながら、杖で殴っている。


俺は、バッタバッタとアンデットを斬り倒していくが、刀が本棚に刺さり抜けなくなってしまう。


「え、マジでか。抜けねー」


俺は、刀を一旦抜くのを諦めて、後ろから迫って来るアンデットに回し蹴りを放つ。そのアンデットは、周りのアンデット達を巻き込みながら倒れ込む。


「ふぅー、危なかったー」


俺が一息をついた瞬間に、後ろからアンデットに背中を引っ掻かれた。そして、膝をつく。


「ぐはっ。いってー、この野郎」


制服が破け、背中から血が滴る。


するとハルが俺の傷口に手を当てて。


「『キュアー』」


みるみるうちに、傷口が塞がれていく。


「シンジ、油断大敵だからね」


「おう、サンキューな、ハル」


俺は立ち上がり、アンデット達に右ストレートやアッパーをかましていく。

が、アンデットを倒しているはずなのに、いっこうに敵の数が減らない。


俺は、間髪いれずに次から次へと攻撃を繰り出し続けたために息が切れ始める。


すると、イノリが俺の背中にもたれかかって。


「やばいです。魔力がもうすぐ底を尽きます」


「そうか、それじゃあこの洋館から脱出しよう。正直、俺もかなりしんどい」


俺は、本棚に刺さったままの刀を無理矢理抜き取り。


「脱出するぞ。こいつらの相手をしてるときりがねえ」


なぜだか、ずっとアンデットを倒しても倒しても全然減らない。


俺とハルとイノリは、なんとか部屋から抜けだし、玄関に向かって走り抜ける。


外はまだ暗く、イノリの炎の弾を頼りに進んで行く。


後ろからアンデット達が追いかけてくるが、もう玄関にたどり着く。


俺は、走りながら玄関に向かって指をさし。


「イノリ、魔法弾で玄関をブチ抜け」


「え、いいんですか。シンジは、借金がどうのこうのと言ってなかったんですか?」


イノリが戸惑った表情を見せる。


「良いんだよ。こういうのは、扉が開かなくて脱出不可能ってなるのがオチだから、玄関をブチ抜いておけば、そんなことにはならずに済むだろ」


「そんなオチ初めて聞きまたよ。でも、やらせてもらいます。『インパクトショット』」


イノリから放たれた衝撃波が玄関をブチ抜いた。


「上出来すぎるぞイノリ!」


「そんな、素直に褒めないでくださいよ〜」


そして、俺達はブチ抜かれた玄関から抜けだし、洋館を抜けても一心不乱に走り続けて、噴水広場の前で倒れ込んだ。


俺、ハル、イノリは三人共、息が乱れていた。


「「「はあ、はあ、はあ・・」」」


俺は息が落ち着き、空を見上げると。


「青空だ」


空には雲一つない綺麗な青空が広がっており、太陽が俺達を照らしていた。




************




「シンジ様のパーティーのアンデット討伐数は、え、すっご。おほん。失礼しました。改めまして、シンジ様のパーティーのアンデットの討伐数は、五十二体です!よって報酬金は、十四万二千ルビーです!」


俺は、お金の入った袋を受け取り。


「いやー、頑張ったかいがありましたー」


こうして、俺達三人は予定以上の報酬金を得て、昼間から宿探しに出掛けることになった。











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