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第十八話 逃亡

森の中へと逃げ込んだ真一達はいつ来るともしれない敵の攻撃を恐れながら、機械国ジーマンに向けて馬を走らせていた。

 なぜコットン国の城へ向かわないのか。

 理由は簡単である。護衛隊の指揮官が理由はどうあれ、護衛の任務を破棄し、あろう事か逃げ出したのである。そのような人間がのうのうと生きて、城へとたどり着いたら何が起こるかは火を見るより明らかであろう。よくて、死刑。最悪、市中引き回しの上獄門である。故にコットン王国には逃げられない。

そうなると、機械国ジーマンに行くしかない。ジーマンはコットン王国とも仲が悪いため、勇者という存在を煙たがっている。その戦力がジーマンの物になる上、その戦力たる真一達は補給さえできれば武器や人員を召喚できるという強力なスキルがある。よっていきなり捕まえて返還と言うことはないであろう、という読みである。

 いずれにせよ、彼らは魔王軍からもコットン王国からも逃げなければならないのである。


「新庄とは連絡がついているのか?」


「一応は、定時連絡は続いているので。ただ、芳しい報告は入ってきていません」


 真一の質問に司馬懿が答えた。

 情報収集は真一達に任せていては役に立たんと言うことで、彼女の仕事になっている。


「新庄にはジーマン国に向かうよう伝えろ。」


「了解しました。」


「それから李典達は?」


「特には何も…」


その質問をした瞬間、皆の顔が暗くなった。あれだけの兵力差があったのだ。

李典の生存確率はきわめて低いと言わざるを得ない。

どうか生きていてくれ、そう5人は心の中で祈った。だが、この時は既に李典は討ち死にしていた。


「今は、そのことよりも逃げることが最優先です。この森を抜けるとジーマンは目の前ですが、そこには関所があります。そこで発見されたら、お終いです。この関所を避けつつ、近くの山を越え、ジーマンに亡命します」


 輸送隊の護衛任務で使っていた地図を広げながら、司馬懿は言った。


「そこに敵の監視がある確率は?」


「分かりません。ただ、脱出に時間が掛かれば掛かるほど敵の監視も厳しくなるでしょう」


「とにかく、急ぐしかないということだな。これでは、ロストフ攻防戦のドイツ軍の第1装甲軍だな。もちろんロストフを守る第4装甲軍や第11装甲師団などはいないが」


 そう言いながら、五人は馬を急いで走らせた。




「森を抜けたぞ!」


 逃げてから丸一日、不眠不休で逃げ続けた5人は森の出口にたどり着いた。


「問題はどう山を越えるかだ」


 真一はそう呟いたとき、近くを馬の蹄が掛ける音が聞こえた。


「静かに!」


 司馬懿がそう叫び5人は息を殺した。

 やがて、馬は森を抜け、砦へと走り去った。


「おそらく、戦闘の結果を伝える早馬です。急ぎましょう!間に合わなくなります」


 そう司馬懿は言い、5人は馬を急がせた。

 どうにか山の中腹にまでたどり着いた5人であったが、幸運の女神はそこで5人を見捨てたのだろうか、警戒兵に発見されてしまう。


「急げ急げ!絶対に足を止めるな!」


 必死で逃げる5人。

 その後ろを追う30人ほどの騎馬兵達。


「怪しい者達が亡命しようとしている。何が何でも逃がすな!」


 後ろから弓矢や魔法が飛んでくる中、5人は必死で逃げた。

 しかし、一方は不眠不休で走り続けている馬。もう一方はたっぷり休んでいた馬。どちらが早いかはお分かりだろう。

 徐々に追いつかれていく真一達。

 


(もう無理だ!)



 誰もが思ったその時、


「王国兵に告ぐ! 貴官らはジーマン国の国境を越えている! 至急引き替えされたし! 繰り返す、至急引き替えされたし! 警告の聞かぬ、その時はやむを得ず貴官らを攻撃する!」

 

 王国兵は大慌てでその場で急停止し、反転して引き返していった。

 最後の最後で勝利の女神は真一達に微笑んだ。

 数多くの犠牲を出しながらも、真一達は逃げ切ることに成功したのだ!


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