人間の街へ
今、一匹のリーンを肩に乗せて、街まで道案内してもらっている。
ちなみにリーン達それぞれには名前は無く、全員リーンと呼んでいいらしい。
解りずらいから道案内のリーンを勝手にリンちゃんと呼ばせてもらっている。
「リンちゃん、街までどのくらいでつきそう?」
『朝日が昇るまでには着くと思うよ!
歩き続けて大丈夫??』
「大丈夫みたい。
実はあんまり疲れてないんだけど、これも妖精の力かなぁ」
『水の精霊様のお陰かも!ずっとカンナの身体を包んでくれているから!』
水の精霊…疲労回復効果もあるのか。
あの時、水辺で寝ていて良かった。
何故かは分からないけど、きっとあそこで守護してくれるようになったんだよね。
相変わらず姿は見えないけど、ありがとうございます!
見えない精霊に感謝して、カンナは案内されるがまま、歩き続けた。
「あれ、リンちゃん。こっから道ができてるね。」
森の中に道路の様なものがある。
『人間達の道さ、勝手に木を切り倒して作ったんだ。
自分たちが街を行き来し易いように。』
憎々しげにリンちゃんは話すが、元の世界を知っているだけに、複雑な気持ちだ。
私の国…ほとんど森を切り倒してできた世界だもんね…。
『あ、カンナ!隠れて!!』
道の先から、馬の足音の様な音が聞こえてくる。
リンちゃんの言葉に慌てて木々の間に隠れた。
馬車の様な何かが、どんどん近づいてくる。
前側部分には馬の様な動物が、車輪のついた大きな箱の檻を引いていた。
箱の上には男が何人か座っている。
彼らはこちらに気付かず過ぎていってしまった。
「あれは…」
箱の後ろも鉄格子で閉じられている。
箱の中では、獣の耳を生やした虚ろな目をした男女が囚われていた。
『奴隷商人だよ。』
奴隷、聞きなれない言葉だ。
『 きっと夜の山火事も、奴隷商人が雇っている魔術師が、無理矢理火の精霊様を操って引き起こしたんだよ。
そして村から鎮火しにいった獣人をとらえて、時々街に売りに行くのさ。』
「あれがジュウニン…
売られて…その後どうなるの?」
『獣人は見た目が変わってるからね…見世物にしたり、虐待したり、死ぬまで労働させたり…いい様にはされないよ。
人間の世界ではそれが当たり前なんだ、だから野蛮だって言ってるんだよ』
ジュウニンって獣人のことだったんだ。
『このまま、こっそりあいつらに着いていこう。
街までもうすぐだよ。』
いつのまにか、夜明けが迫っていた。