サルちゃん
小さい頃、お母さんに話したことがある。
私、動物とおはなしできるんだよ!って。
お母さんは優しく笑いながら、こう言った。
《じゃあ猫さんも犬さんも、動物はみーんな、かんなや私達と一緒なんだね》
寒い、身体が震える。
どうして、こんなに寒いの。
あれ、なんだろ…
暖かいのが、近くに…?
ゆっくり瞼を開けると、朝目覚めた時の様な太陽の光は無く、辺りは真っ暗だった。
いつの間に夜になったんだろう。
ぼーっとした脳内を働かせる為に、一旦起き上がろうとした。
すると起き上がるために着いた手に、ふわふわした何かが触れる。
ふわふわの正体を探るべく、掴んでみた。
《ちょ、痛い!》
聞き覚えのある声。
そうだ、私、この声の猫さんを助けようとして…
「猫さん、だいじょう……でえぇえ!」」
振り返ったら想像していた猫ではなく、馬鹿でかい謎の動物がいた。
《や!おはよう、カンナ!》
その動物、というより獣?は迫力ある顔面とは違い、偉くフレンドリーに話しかけてきた。
動物好きのカンナでも、その迫力に圧倒され言葉を失う。
《カンナ大丈夫?》
いや大丈夫って…!何このでかい、動物?てか化け物!!
顔を引きつらせながら、心の中で叫んだ。
《誰が化け物だ!》
「ああ〜!ごめんなさい!え?なんで私の声…」
《何言ってるの?いっつもみんなと会話してるじゃん》
「ちょっと待って!頭が追いつかない、、ていうよりここどこ??あなたは一体何なの!?」
《わかったわかった、一から説明するからまずこれに着替えて》
そう言って目の前に突然服が現れた。
戸惑いながら手にとってみると、あったかそうなローブとシンプルな紺のワンピース、そして靴や靴下や下着まである。
全てどことなく西洋風で豪華なデザインだ。
ひとまずカンナはローブを羽織り、獣に向き直った。
《じゃあまず自己紹介から、僕の名前は’’サルージャ・アズバリン・スティルミューア・カドリア・マルセコフ・バリエイチェルラン・ルーズバイン…
「ちょ、ちょっとまって、長すぎ!」
あー、まぁ気軽にサルちゃんとでも呼んでよ!》
長い名前にも驚いたけど、そんな百獣の王みたいな風貌で猿って…頭が痛い。
サルージャことサルちゃんは、話をつづける。
《僕はね、ある世界の動物の長なんだ。まぁ普通の人や動物には見えないし、ほんとただ見守ってるだけで特に何かするわけじゃないんだけどね。
それでカンナ、僕は君にお願いがある。
どうか僕の世界の動物たちを、生きとし生けるものたちを救ってほしい。》
「救うって…」
突然の頼みごとにカンナは更に頭が痛くなる。
《僕の世界はね、人が一番偉いんだ、それはカンナの世界も一緒だよね?
でも君の世界と違うのは、人が他の動物達に対して、横暴を働きゴミみたいに扱っている。
人は勘違いをしてるんだ、知恵をつけてからは勝手に作り出した妄想の人間の神に囚われて、本来生きてるものたちは平等だったってことを忘れている。》
《カンナ、君の居た場所では、君は他の人とは何が違うかった?》
「私は…小さい時から、猫や犬や鳥や、色んな動物の声が聞こえてた…」
《それはねカンナ、僕が君に授けた力だよ。
君はその力を使って、今日まで色んな動物たちを助けてきた。
カンナが川で助けた猫は、僕の分身さ。
僕の理想通りに育ってくれた、正に僕の世界の救世主さ。》
「救世主って、そんな…」
だんだん辺りが明るくなってきた、どうやら森の中だったようだ。
太陽の光が森と二人を照らしていくと、瞬く間にサルージャの身体が透けてきた。
《カンナ、時間みたいだ。僕は長くここに留まれない。
カンナにもう一つ力を授けとく。
優しい君ならきっと、この世界を変えてくれる…》
「ちょっと待ってよ!」
叫びも虚しく、サルージャは忽然と姿を消した。