表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Viva la Vida| 男装彼女の素性について  作者: みやつゆ
第06章 それぞれの戦い編
59/162

第053話 衝動 * ??〈??〉

???目線。(正式に出てくるタイミングも不明です)

香の匂いが染みついたその部屋は、幼虫の卵の薄皮のような色とりどりの布が、幾重にも垂れ下がり人の侵入を拒むかのようにできている。

天井と壁の境目に造られた切り込みのような窓から差し込んでくる光に、それらが揺らめいて、鮮やかな色合いを放っている。

その布の内部に、繭のように作られた寝台に、彼は閉じこもることが多かった。


一種独特の雰囲気を醸し出すその部屋は、彼の作り上げた『芸術』の世界。何を思って作ったのか理解はできないが、神聖な聖堂に入ったかのような荘厳な気持ちにさせる空間だ。


一体、ここに足を踏み入れる者は、何人いるのだろう。


気配を察したように、内側から艶やかな声がする。

「久しいね」

私はその中に入ることはない。

いつも通り顔を見ずに話をする。

「人間とは恐ろしくも不可解な生き物だ」

私の皮肉にも楽しげにクスクスと笑った。

大抵の人間は、大体の思考は読めたが、この男だけはわからない。


「それは私にとってあなたが不可解であるのと同じだよ」


ギシっと寝台が揺れた音がして、しばらくすると垂れ下がった薄い布に男の影が出来た。一枚隔ててすぐ向こうまで男が近寄ってきたのか。

えらく今日は調子がいいようだ。


「それとも、私を誘惑しているのかい?」と言って、久々に顔をのぞかせた。

一糸纏わぬ白い体で近寄る。

宮殿に並べられる彫刻かと思わせる均整のとれた体つき。


そう、かつてを思い起こさせて、ふと目を逸らせた。


「連れない男だね。私を見て何の感情も示さないあなたには苛立ちも感じるけど」


楽しんでいるのか、裸体の彼は私を情熱的に抱きしめて、耳元でささやいた。


「安堵さえ感じる」


きつい香の香りが鼻につく。思考が働いているのかいないのか、この人間は本当に人間なのか。

たまに別の生き物に感じる時がある。


「ねぇ。早く全てを、壊してやりたい。もうそろそろ準備は整う頃じゃないかな」


破壊的な言葉なのに儚げに聞こえる。

私の胸に顔をうずめて甘えた子供のように頬を摺り寄せた。


「籠から出して、羽を毟ったら、どんな声で鳴くんだろうね」


何に興奮しているのか、やたら吐息が耳にうるさく聞こえる。

私は立っているだけで返す言葉もないが、一変した低い声で続けた。

「……そんなことしても、つまらないのだけれど……」

腰に回した腕をだらりと解いたが、わたしに体重をかけたままかすれた声で言った。


「もうしばらく、こうしていていいかな」


こうしていると、ただの人間に見えるがな。

私は軽く突き放すと、男はクスリと笑って言った。


「楽しみだね」と。


あいつのような美しさで、微笑んだので、すぐに去った。




このままいると、私はこの男を殺したい衝動に駆られる。


そして、彼もそれを楽しいお遊びの一つとして受け入れるだろう。


まともじゃない。


私も同じだろうが。


ただ、まとわりついた消せない衝動に突き動かされている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ