白銀の若狼は飛び込む
リサ、待っててくださいすぐに助けに行きます。
雪原を走り抜け冬だというのに雪のない地域を駆け抜けた。
スッセリア聖王宮の門番を叩きのめしてあわてて閉めようとする門のすき間から王宮内に潜入する。
武官に止まれと叫んでいるがとまるつもりなんて全然ない。
私を強引に止めようとするスッセリア聖王国の武官を剣で叩きのめした。
そこにデアが華麗に蹴りを入れた。
「そこは神聖なる至高の大樹の御座だ、狼藉者を入れるでない。」
神官らしき犬耳の男が武官に命じた。
やりづらそうな職場ですね。
武に慣れない人間に指示されるなど面倒この上ないと思いますけど、同情はしませんよ。
「うぉ~。」
ウサギ耳の武官がウォーハンマーを振り回した。
なんか間違ってないですか? 犬のほうが戦闘能力たかそうですが?
「私は妻を取り戻したいだけです!! 邪魔するなら容赦しません!! 」
私はデアの上で剣を構えた。
「よ、傭兵ごときに遅れを取るでない。」
さっきの神官がふるえながら奥に逃げていった。
あちらに至高の大樹とやらがあるようです。
追いかけないとですね。
「逃げる気か、武人としての矜持はどうした。」
ウサギがたちはだかった。
ところでデアに蹴り飛ばされた。
情け容赦無いです、さすがデア。
神官に追いすがり立派な両手開きの扉を抜けると……そこは外だった。
正確には巨大な温室か?
デアの背の上であたりを見渡す。
豊かな森を切り取ったような空間で遙か彼方に大きな木が生えているのが見える。
「そなた、不遜であろう。」
神官が虚栄をはって手を広げた。
「うるさいですね、あなたに付き合ってる暇はありません。」
神官をデアで飛び越えて奥に見える木に走る。
甘い爛熟した香りが辺りを漂い出した。
泉に囲まれた大きな木の下に愛しい私の宝物がいた。
「面倒くさいけど行くよ!! 」
変わった箒を対峙する連中に突きつけている姿は戦乙女のように凛々しい。
「おほほほ、あきらめたほうがよろしいですわ。」
例の女が腕をかかげた。
紫黒の聖女……あの女がいた。
「デア行きます。」
私はデアに声をかけた。
デアが思いっきり助走して泉の上を飛んだ。
一瞬の跳躍、次の瞬間あの大きな木下にいた。
「リサ〜助けに来ました。」
私は剣をかまえて叫んだ。
「うるさいわね、アルス。」
リサが冷ややかに視線も向けずに言った。
そう、あれこそ本物のリサです。
中途半端な甘さなど微塵もない私の愛しいリサ。
「あら、飛んで火にいる若狼ね。」
例の女がおホホホと高笑いした。
甘い爛熟した香りが強まる。
でもあの女よりも香るのは……
後から気配がした。
「みんなしもべになれば幸せです。」
リス獣人が柔らかいのにどこか不気味な笑みを浮かべた。
「しもべ? 」
私は剣を構えてリスを睨みつけた。
すぐ近くではリサと例の女が戦いだした。
リサの舞うような動きに妖精のようだとみほれた。
けして油断をしたわけではないのです。
「なるの〜」
小さな茶色の物体が私に飛んできてしがみついた。
こ、子供!?
子供の接触面から何かが入り込んで……
甘い爛熟した香りが身体に染み込み頭に誰かの思考がはいってくる。
世界……世界樹を喰らいたい……
感情のない声が頭に響く。
世界樹を喰らえばあなたも滅びますよ……
その思考にあがないながらリサを見つめた。
世界……世界樹を喰らえば……新たな世界は我々のもの……我々に従え……
嫌です。
絶対に従いません……
ああ、でも……いしきが……
「あー、もうアルスまで取り憑かれないでよね! 」
愛しいリサに声がして頭を叩かれた。
ゲホゲホと咳こんだ。
何かがぬける。
「おい、そちらにかまけてる間はないぞ。」
誰かの声が聞こえる。
「わかってる、デア、向こう岸まで飛んで!! 」
リサの指示にデアが反応して飛んだ。
なんでリサの言うことを聞くんですか〜
向こう岸につくとうさうさ武官と神官がまっていたのでデアが蹴り倒してむきなおると黒猫獣人武官とリサが例の女と戦っているのが見えた。
甘い爛熟した香りが満ち始める。
「相変わらず……まああれこそが私のリサです。」
私は笑った、私の心を熱くさせる女はリサあなただけです。
ここでぼんやりと見ているのは性に合いません。
もう一度飛び込みましょうか……
甘い爛熟した香りが強まる。
泉の水が音もなく持ち上がる
青白い何かがリサに……
「リサ!! 」
私は叫んだ。
リサが振り向く。
私はデアに合図してあの青白いものに飛び込んだ。
ぷるっとした感覚……
思考が頭に入ってくる。
喰いたい……この世を喰い尽くしたい……
気持ち悪い……
バシッと勢い良くはじき出された。
「バカアルス!!」
リサが泣きそうな顔で箒を構えていた。
泉が青白くうごめく。
「ああ、ついに目覚められたのですね。」
例の女がうっとりと笑った。
爛熟した香りにクラクラする。
「あれが本体ね。」
リサがつぶやいた。
ああ、なんて凛々しいんでしょう。
私のリサは……
「アルス、これを倒して帰ろうね。」
リサが笑った。
「はい。」
私は幸せですね。
きっとリサとかえって見せます。
そして凛々しいリサと生活するんです。
だから邪魔するものはゆるしません。
私はデアから降りて剣を構えた。
ええ、本気出します。
青白くうごめくものが動き出した。
私は思いっきり剣を振るった。
駄文を読んでいただきありがとうございます♥