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一話

視点が変わる、ヒロインが壊れているとかなり人を選ぶ感じです。

それでもよければお読みください。

 かほ視点 6月4日午前7時


 私は平竹かほ。玲君が大好きな普通の女子中学生だ。

 私は玲君を世界で一番愛しているし、玲君に近づく女子は許さないけれど、普通の女子中学生だ。


 今日もいつもの交差点で玲君に会う。


「玲君っ!」

「……かほ」

「今日も会ったね!」

 玲君は爽やかに笑ってくれる。本当に今日もカッコいい。

「ねぇ玲君、昨日のメール返してくれなかったよね? 何かあったの?」

「ううん、何もないよ」

「私以外の女の子とメールとかしてないよね?」

「してないしてない」

 玲君はいつも私だけを見ていてくれる。

「じゃあ携帯みして?」

「……ああ」

 私は玲君から携帯を受け取ると、履歴を確認する。

 うん、私と家族以外からのメールはない。

「できればお姉さんとのメールもやめてくれない?」

「それはさすがに……」

「なんでよ、私玲君がほかの女の子とメールしてるなんて、嫌だよ……」

「わかったわかった、出来るだけ回数は減らすよ、ね?」

「……うん、それでいい」

 でもこっそりメールしてるかもしれないから、明日からもしっかり調べよう。


「ふふっ、手繋いで学校に行こ?」

「……人が見てるし」

「もう、恥ずかしがり屋だなぁ、玲君は。可愛いっ!」

私はそう言って玲君に抱き付く。

 人が見ているとか、そんなのって気にしたって意味ないと思う。


「うわ、あれ一年生の?」

「そうそう、噂になってるよねー」

「……爆発しろ」

 上級生からのそんな声が聞こえてくるけど、気にしたって意味ないと思う。

「俺本当に困るから、やめよ? かほはもうバスケ部でレギュラーとったも同然だけど、俺まだ野球部でレギュラー取れるかわからないんだよ」

「玲君なら大丈夫だよー!」

 私は無理やり玲君の手を握って歩く。

 私は昔からバスケを習っていて、中学生になってバスケ部に入った。

 だけどレベルが低くて、レギュラー取れそうだ。

 私がレギュラー取れるんだから玲君もレギュラー取れる。当たり前だよね?


「あーあ、なんで玲君と同じクラスじゃないのかな? クラス決めた人をぶっ殺してやりたいよー」

「……あはは」

 本当に分からない。私と玲君を引き裂く人なんて許さない。これは世界の理だ。



 玲視点 6月4日午前7時


 俺は狩谷玲。平竹かほの幼なじみで、彼氏だ。

 成績優秀で運動神経抜群で美少女で、どう考えても俺とつりあわないが、俺はかほに昔から好かれている。

 普通に好かれているのならいいが、かほはどう見ても異常だ。かほのせいで、女友達はいなくなったし、男友達も減った。

 しかもちょっとクラスメイトの女子と喋っただけで刃物を持ち出してくるし、毎日起床時間と就寝時間を聞いてくるし、俺のテストの得点をすべて記憶している。

 ……ああ、小学校二年生のあのとき、かほの容姿に騙されて告白を受け入れた自分を殴りたい。だからと言って『別れたい』とか言えば、『玲君に愛されない私なんていらない』と自殺しようとする。


 そう、かほは束縛しすぎなんだ。そういえば、そういう子を『ヤンデレ』というらしい。


「はぁ……」

 ため息をつきながら、いつもの交差点へと向かう。


「玲君っ!」

「……かほ」

「今日も会ったね!」

 俺は曖昧に笑った。


「ねぇ玲君、昨日のメール返してくれなかったよね? 何かあったの?」

「ううん、何もないよ」

「私以外の女の子とメールとかしてないよね?」

「してないしてない」

 かほは毎日そう聞いてくる。本当に面倒だ。

「じゃあ携帯みして?」

「……ああ」

 俺はかほに携帯を渡す。

 まあ、かほと家族以外からのメールはないのだが。

 どうでもいいが、昨日かほから送られてきたメールの数は39件。

 そんなのにいちいち返信できるわけがない。

「できればお姉さんとのメールもやめてくれない?」

「それはさすがに……」

 無理だ。姉からは結構重要なメールも入ってくる。


「なんでよ、私玲君がほかの女の子とメールしてるなんて、嫌だよ……」

「わかったわかった、出来るだけ回数は減らすよ、ね?」

「……うん、それでいい」

 はぁ。どうせ明日からも調べられるんだろうな。

 姉とは文通でもすることにしよう。


「ふふっ、手繋いで学校に行こ?」

「……人が見てるし」

 俺はそう言って、かほと少し距離をおいた。

「もう、恥ずかしがり屋だなぁ、玲君は。可愛いっ!」

 しかしかほは、人目を気にせず俺に抱き付いてくる。

 ……誰か何とかしてくれ。


「うわ、あれ一年生の?」

「そうそう、噂になってるよねー」

「……爆発しろ」

 上級生からそんな声が聞こえる。

 周りを見渡してみると、俺の野球部の先輩もいる。

「俺本当に困るから、やめよ? かほはもうバスケ部でレギュラーとったも同然だけど、俺まだ野球部でレギュラー取れるかわからないんだよ」

「玲君なら大丈夫だよー!」

 かほは無理やり俺の手を取って歩き出した。

 かほはバスケ部、俺は野球部。

 うちのバスケ部はかなりレベルが高いが、かほはもともとの運動神経の高さで一年生レギュラーを取れそうらしい。

 すごい一年生がいる、と噂になっている。

 一方の俺は、このままじゃ三年生になってもレギュラーを取れるかわからない。野球部はとにかく人数が多いのだ。


「あーあ、なんで玲君と同じクラスじゃないのかな? クラス決めた人をぶっ殺してやりたいよー」

「……あはは」

 かほはいつも通りだ。

 今日も、俺はかほに振り回されるんだろうなぁ。

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