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視線日記

作者:

文芸部の文集に載せる(予定)に書いたものです。

暇つぶしにドウゾ




○月×日

今日から日記をつけることにした。

特にこれといったきっかけが有るわけでもない。

ただ「何となく」だ。

それでも理由を書くとするならば自分自身を理解したいからだろうか。

だからといって毎日は書かないつもりである。

なぜなら「何となく」だからだ。


○月△日

日記を付け始めて五日後。

毎日毎日とてもつまらない。

部活にも入っていない。

趣味もない。

自習はするがそれに楽しさややりがいを感じたことはない。

運動神経はあまり良くないが疲れるため自主トレもしない

なのでこの日記に書く事もそれほど多くはない。

さらに言うならばついさっきまでこの日記の存在も忘れていた。

ただ「何となく」机を掃除していたらこの日記を見つけた。

だから書いた。

一言であれば暇つぶしである。


○月□日

前書いた日二週間が経過した。

それなのにまだ三回しか日記を書いていない。

書くことがない。

暇つぶしだからだ。


○月×日

前書いた日から二日経過した。

今日は書く事があった。

ただし、そんな大したことではない。

ただ何となく「視線」を感じるのだ。

ただそれだけだ。


○月△日

さらに二日たった。

書く事がある。

例の「視線」が続いている。

学校にいる時は感じない。

しかし朝家を出た直後から学校までの登校。

そして、学校から出た直後から家までの下校。

ただそれだけだ。


○月□日

前書いた日から二週間後。

最近は「視線」が当たり前になってきた。

そのためかまた書く事がなくなってきたので一週間ほど空いてしまった。

書くことがない。

今日書いたのも「何となく」だ。


○月×日

さらに二週間が過ぎた。

今日は書く事がある。

「視線」の感じが変わってきた。

本当は前書いた時から気づいていたが気づきたくなかった

だから「何となく」で済ましてしまった。

うまくは言えないが「視線」は私に対して鋭くなったと言うべきなのだろうか。

語彙の少ない私にはどう表現していいのかわからないのだ。


○月△日

二日が過ぎた。

まだ「視線」は続いている。

現実逃避気味に「視線」は気のせいだと思うようにしている。

しかし私は危ないお薬にも手をだしていないし。

気が滅入るほど何かに対して努力した覚えもない。

最近少し「視線」が恐い。


どうしよう・・・


○月□日

前に書いた日から三週間たった。

人間というものは摩訶不思議である。

つい最近までは「視線」に対して不安や恐怖を感じていた。

しかし私の現状は中学三年生の受験生である。

周りの受験ムードに流されてか、私も受験勉強を本格的に始め出したのだ。

そのため「視線」を感じても英単語の暗記という方法で無視するというよな打開策をあみだした。

おかげで英語の成績が少し良くなった。

このままいけば「視線」を無視し続けて「視線」の方から消えてくれるかもしれない。


○月×日

一週間がたった。

思ったとおりだった。

最近は「視線」がなくなったように思える。

良かった本当に良かった。

そしてさらに良いことがあった。

この前の塾の模試の結果で苦手であった英語の評価がAだった。

このままだったら一つレベルの高いK高校を受験しても合格出来るかもしれない。

最近はいいことばかりだ。


○月△日

私は高校生になった。

この日記をかくのは実に数ヶ月ぶりだ。

なぜならこの日記一番書く比率が高かった「視線」が無くなったからである。

そして久しぶりにこの日記にこの言葉を書ける。


「何となく」書いた。


○月□日

三日後。

どうしよう・・・

これからは書く頻度が増えそうだ。


「視線」がまた感じるようになった


しかもとんでもないことに授業と家に居る時間は全て「視線」を感じるのだ。

そしてその「視線」の感じもまた変わっていた。




とてつもなく気持ち悪いのだ。




最初は別の人の「視線」かと思うくらいに変わっていた。

そしてその視線に気づいたとき私は蛇に睨まれた蛙のごとく動けなくなってしまった。


怖かった。


本当に怖かった。


どうすればいいのだろう。


○月×日

今日は少し嬉しいことがあった。

学校で「視線」を感じない場所が教室とトイレ意外にあったのだ。

それが図書室だった。

「視線」から逃げたくて昼休みはずっと校舎を歩いていたら偶然に見つけた場所だった。

なんでだろうという疑問はあった。


○月△日

僕は「視線」から逃れるために図書委員になった。

僕のクラスで図書委員は僕だけだ。

そして僕は出来るだけ図書委員の仕事に没頭することにした。

それはもちろん「視線」から逃れるためともう一つ理由のためである


○月□日

最近はほんの少し良いことがあった。

仲の良いAさんという異性ができたからだ。

私はこれでも青春真っただ中の高校生である。

「視線」は気持ち悪いが今のところ実害はないし、少しぐらい浮かれてもいいんじゃないだろうか。


○月×日

今日はAさんと図書委員の貸出当番だった。

この日記にはAさんが図書委員だと書くのは初めてだと思う。

そもそも私とAさんが話すようになったのは「視線」のことを一緒の当番だったAさんにうっかり漏らしてしまったのがきっかけだった。

Aさんはそのことについて深くは聞かなかった。

それでもAさんは私の話を良く聞いてくれた。

嬉しかった。


○月△日

最近少し気になることがある。

「視線」の感じがまた変わってきた。

なんと言えばいいのだろう。

ホント自分の語彙力のなさに軽く落ち込む


○月□日

少しこの前の変化した感じについて辞書で調べてみた。

色々難しい言葉もあったが。一番しっくりきて、そして私が知っている言葉で表現するならば「緩和」だろう。

本当は良いことなのだがどうも気になる。


○月×日

今日はもう一つ気になることができた。

Aさんの態度だ。

ついこの前までは「視線」のことを話ていてもただ聞いてくれるだけだった。

でも最近は「視線」の話について色々意見をしてくるようになった。

具体的には「視線」に対して「気持ち悪い」や「恐い」などの負の感情に対して反論するようになった。

反論といってもあやふやなものなので反論と言えるかも微妙だが、それでも気になるのだ。


○月△日

前書いた時から一ヶ月たった。

今まで書かなかったのはとある考えのせいだ。

もしかしたらとその考えが何回も何回も頭の中を引っかき回す。

そんなことはありえないと信じたい。

でも否定材料がひとつもないんだ。

本当はこの日記にそんなことは書きたくない。

でも私はこの考えを受け止めなければならない。

だから私の考えを書く。




「視線」の正体はAさんだ。




ことの発端はちょうど前の日記を書いた日の次の日、私は少し調子に乗っていた。

「視線」に対しての意見は私に心を開いてくれていると勝手に思い込んでしまったからだ。

そしてその日はAさんと私の図書当番の日だった。

図書室には誰も居なくていつも以上に「視線」の悪口を言ってしまったのだ。

それが間違いだった


いつの間にかAさんの視線は「視線」に変わっていた。


そこから先は覚えてない。

恐くて、信じられなくて、嘘だと思い込みたくて、思い込めなくて。

最悪な気分だった。

いや、今でも最悪な気分だ。


こうして僕は一ヶ月自分の部屋に閉じこもっていた。

そしてこの日記を書いたきっかけはAさんからの手紙だった。

今朝ポストに入っていたのを家族の誰かがドアの隙間から入れてくれたらしい。

その手紙の内容は大きく分けて三つ。

謝罪と私に対しての気持ち。

そして会いたいという内容だった。


私はAさん会ってみようと思う。

正直恐い。

それでも会って見たいと思う。

どんな話をしてどうしたいとかはまだ頭がグラグラして分からないけど

それでも会いたい。


そしてもう日記は書かない。

なぜなら私は分かったからだ。

自分自身がこんなにも薄っぺらいことに

この日記を振り返ってみても書いてあるのは「視線」とAさんのことばかり。

私の厚さは「視線」とAさんで出来ていたと実感したからだ。

しかも今はどちらもどっちになってしまった。

だから私の薄さも半分になってしまった。

だからもう私は自分自身の厚さを感じたくないのだ。


他にも色々書きたいことが色々あるのだろうが。

これからAさんに会いに行く緊張で頭の中を整理できない。

もう私はシャープペンを置く。

最後にこの一言を意味の無い一言で書きたかったのが心残りだ。


「何となく」書いた


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