∮-33、 ★戯れ①
国王視点
本日二回目
今、王宮は《白百合派》と称される派閥に占められており、先日自ら北の塔へと住まいを移した正妃が後宮から去ってからは、少なからず妃を弁護していた貴族連中は日陰に追い遣られている。
その事で更に勢いづいた《白百合派》は、正妃を廃位させ、ハドソン家の令嬢を王妃に据えるべきだと声高に叫んでいる。そしてそれに呼応するかのように後宮内の女官や侍女連中は、令嬢を《白百合の間》から《月の間》へと移動させるべきと唱え、道具を許可なく移動させている始末。
本来、後宮とは王の正式な妃が全て差配する女だけの特別な世界。例え後宮の女が全て王の物とは言えど、それらを仕切るのは王の妻の務め。
その務めを解っていながら妃は後宮から出て行き、以来、音沙汰なしと来ている。
「妃はどうしている?女官長」
女官長にそれを聞いたのは、単に彼女が王妃の伝言と言う名の希望を俺に伝え、それを俺の許可を待たずにして直ちに決行したからだ。
常の彼女ならば、議会に掛け、何度も審議をした上で最終判断を王に仰ぐのに対し、今回はそれらを全て省き、まるで何かを恐れているかの様な迅速さを窺えさせた。
が。
案の定、女官長は能面と噂されている表情を僅かに崩し、それでもすぐに立て直した。
「妃殿下におかれましては、寵を失った妃など御不快でしょうと、自分は静かに暮らしたいから北の塔を寄こせと仰られたので、私はそれに従ったまでです。その方が、御寵妃様の身も安泰にございますゆえ」
「ふん、確かにな・・・」
女官長は果たして己の間違い(・・・)に気付いただろうか。
俺は妃の様子を尋ねたのに対し、女官長は妃が北の塔へ移った理由を述べたのだ。
やはり、動揺している。
一体、妃と女官長は何を隠している・・・?
愛情が希薄とはいえ、あの少女は仮にもアレは俺の妃であり、この国の王妃。
それに最近は政務が忙しく、アレの顔も見た記憶もない。
ならば。
「食事はどうなさいますか?」
目覚めの紅茶を用意しつつ聞いて来る女官長は、まだ動揺しているのか俺がもう心を定めている事に気付いてはいない。
その隙をつき、薄いシャツを羽織り、一路、北の塔へと向かう。
そんな俺の行動に気付いたのか、慌てて俺の後ろを追って来る護衛兵と、必死に俺を止めようとする女官長の声。しかしそれに応じてやるほど俺は暇でもなければ、性格も良くない。
早朝の風を全身に受けながら、北の塔へと向かい歩く事おおよそ10分。
その頃になると寝起きに残っていた僅かな眠気もすっかり飛んでいた。そればかりか、何処からともなく聞こえてくる明るい歌声に心に響き、気分も悪くない。
その声の主を何気なく探し求めれば、そこには見たことのない自然な微笑みを浮かべた年相応の妃と、幼い子供三人が洗濯物を干していた。
それからの俺にしっかりとした記憶はない。ただ、気付いた時には、いつも以上に執務室で執務に没頭していた。




