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ホットフラワー

第一回『アイスクリーム』

初回から大遅刻申し訳ございません……

「何事も挑戦が大事だと思うの」

 水無月二葉はぽつりと呟いた。

 強い決意を宿した瞳に俺は唾を飲む。

「というと?」

 ここまで待たせたんだ。深い考えがあるに違いない。

「やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいと思わない?」

「まぁ、そうだな。で、どれにするの?」

 聞いたことのあるセリフだった。

 ショーケースの前で腕組みすること五分。店員さんも焦れてきた。アイスくらい早く決めてくれ。周囲の視線が痛い。

「これにする!」

 二葉は勢いよく、指差した。

 指の先には山吹色のアイスクリーム。

 名前はカラシ味。

「いや、それはやめとけ……」

 全く売れていないのか、カラシアイスだけ減っていない。

「もしかしたらおいしいかもしれないじゃん!」

「どう考えても地雷だ! これだけはやめとけ!」

「ダメ! これにする! 私は新しい刺激が欲しい!」

「無難にチョコにしとけよ。好きだろ」

「あのぉ……」

「チャレンジ精神は認めるけど、刺激が強過ぎて火を吹くぞ」

「ふふふ、守屋圭一。残念だが、私の好奇心は誰にもとめられないのだよ」

「あのっ!」

 店員の声ではっと我に返った。

 苦笑いの様な、泣き笑いの様な表情で店員は言う。

「そろそろ決めて頂けませんか?」



 結局二葉はカラシ味を購入。ちなみに俺はコンスタントにおいしいチョコ味。

 二葉は山吹色のアイスクリームを嬉しそうに見つめる。

 禍々しいオーラを放つそれを見て、俺は訊ねた。

「ホントに食べるのか?」

「当たり前じゃん」

 決意は固いというか、もう他の選択肢は視野にないらしい。

「これが最終通告だ。ギャンブルはやめとけ」

「例え一%しか成功しないとして、動かなければその一%を掴めない!」

「どうなっても俺はしらねぇからな!」

 人の話を聞いているのかいないのか、満面の笑みで齧りついた。

 一瞬の沈黙。

 周囲の喧騒が肥大化し、自分が潰される感覚。

 当然のことながら、断ち切ったのは二葉だった。

「かっら、むぐ!?」

 咄嗟に叫ぼうとした二葉の口を塞いだ。

「~~っ!!」

 涙目でジタバタと藻掻く二葉を宥めつつ、周囲を窺う。幸い白い視線はなかった。

「……はぁ」

 悲しくなってきたので再び溜息を吐く。

「うむっ!」

 二葉が手をバシバシ叩くので解放した。

「なにこれ!? アイスなのに甘くない! 辛い!」

 だと思ったよ。

「俺は忠告したからな」

「うぅ、まだこんなにある……」

 まだ一口しか齧っていないのだから当然だ。

「ほら」

 半泣きでアイスを見つめる二葉を見て、溜息交じりに差し出されたチョコアイスをキョトンと見つめ、首を傾げる。

「いいの?」

「いいから、溶ける前に遠慮なくくえ」

「じゃ、遠慮なく」

 大よそ女の子がするとは思えないほど口を大きく開けて、がっつり食べやがった。

 あんまりおいしそうに食べるもんだから、呆れやらなんやらがすっと消えていく。

「残りも全部くっちまえ」

「え、いいの?」

 二葉は露骨に瞳を輝かせた。

「そこまで食べといて、今更遠慮すんな」

「ほんと? じゃあ、もらっちゃお!」

 嬉しそうにチョコアイスを受け取り、頬張り出す。

「そんなに勢いよく食べて、頭痛くならないか?」

「さっきカラシ食べたからへーき。食べてみる?」

「じゃ、一応」

 軽く溶けたカラシアイスをとりあえず受け取る。

 先程の二葉の様子を見てこれを食べるのは勇者か愚者の所業じゃないか?

 軽く溜息。

「溜息ばっかりだと幸せが逃げてくよー」

「誰のせいだ! 誰の!」

「そんなんだから彼女できないんだよ」

「余計なお世話だ! 学生は忙しいんだよ!」

 彼女がいないんじゃなくて作らないだけだ。

「じゃあどうしてこんなとにいるの?」

「お前が遊びに誘ったんだろ!」

 主に荷物持ちとして!

 溜息と共にカラシアイスを見れば、もう半分以上溶けている。

 お金を払ったのだし、捨てるのは勿体ない気もする。

 思わず唾を呑んだ。

「まあ、一口くらいなら……」

 眼を閉じて、覚悟を決める。こういうのはノリと勢いだ。


 アイスを口に含んだ瞬間、後悔する。


 これは、この物体はアイスなんかじゃない。練りカラシだ!

 辛いなんてもんじゃない。熱い。痛い。舌が痺れる。激痛。汗が全身から噴き出した。思考が纏まらない。甘さが迷子。見当たらない。行方不明。優しさも見当たらない。悪意を感じる。製作者でてこい。どうやったらアイスを練りからしにできるんだ。いや、そんなことより水をくれ。もはやこれは毒だ。洒落にならない。

「大丈夫?」

 俺は心配そうに覗きこむ二葉を置いて走り出す。

「え、ちょっ、どうしたの!」

 口内を消火してきます!

 精一杯のジャスチャーを送り俺は走った。

 俺は水飲み場を見つけ事なきをえたので、二葉のところまで戻ってみたのだが、

「いない!?」

 二葉は完全に姿を消していた。

「あの馬鹿はまったく、もう」

 急いで携帯にかけるが反応はない。

 また思いつきで何かやらかしたんじゃないか?

「人様に迷惑をかける前に捕まえないと……」

 歩き出そうとして、不意に袖を引かれる。

 振り返るとゴスロリの少女がいた。

「あのぉ、人を捜しているのですが、よろしければ一緒に捜していただけませんか?」

「いや、俺も人を捜していて……」

「なら、一緒に捜しませんか? その方がきっといいですよ」

「は、はぁ……」

 なんかややこしいことになった。



 結局件の少女こと羽瀬川灯のゆったりとしたテンポに乗せられて行動を共にすることになった。

彼女は友人とはぐれたらしい。

「どんな格好の子?」

 当たり前だが、漠然と友人だけでは捜せない。

「うーん、普通の格好です」

「ちなみにそのゴスロリは……」

「これは甘ロリです」

 その後数分間、両者の違いについての講義を受けることになってしまった。

 結論から言って、彼女の服はゴスロリではないらしい。よく解らないけど。

 しかし、考えてみれば不思議な子だ。こんなに斬新な、もとい目立つ格好をしているのに不思議と違和感がない。

緩やかなウェーブを描くツインテール。真っ青な水晶玉の様な瞳。滑らか白磁の肌。ビスクドールをそのまま等身大にした様な姿。最初はなんのコスプレかと思ったが、髪は地毛のようだし、眼もコンタクトではないようだ。きっとハーフなのだろう。

 ワンテンポずれた雰囲気は奇妙ながらも親しみやすい感覚を覚える。こんな子と一緒に迷子捜しなんて、不思議なこともある。

「守屋さんの御友人はどのような方なんですか?」

「え? 茶色がかったショートヘアーとか、丸い眼とかの割と活発そうな女の子なんだけど、無鉄砲で……変な奴」

「元気な方なんですね」

 どこかずれた感想を零しながら、灯ちゃんは微笑んだ。

「お二人はお付き合いなさっているんですか?」

「はいっ!?」

 思いがけない質問に声が裏返る。

「い、いや、俺達はそんなんじゃないよ。ただの腐れ縁! たまたま学校がずっと同じ学校だったってだけ。高校になるまで喋ったことすらなかったし」

「そうなんですか?」

 不思議そうに首を傾げる。

「クラスが違ったし、高校で同じ中学の奴が少なくて、同じクラスにそいつがいたっていうだけ」

「でも、仲良しなんですよね?」

「仲良しっていうか、普通の友達?」

「大切な人じゃないんですか?」

「大切って」

 それはすごく難しい話じゃないか? 大切ってどこからどこまでをさすんだ?

「奏くんは私にとって大切な人ですよ」

「奏くん?」

「捜している人です」

「あぁ、成程」

 ……異性の友人だったのか。

「奏くんはとっても大切で、大好きな人です」

 灯ちゃんは少しはにかんだ笑顔を見せて、小さく、片想いですけどね、と言った。

「片想い、ね」

 彼女の容姿なら例え告白してもふられる心配はなさそうだが。

「それで、守屋さんにとって、そのお友達は大切な方なんですか?」

 二葉は俺にとって仲の良い友達だし、嫌いじゃない。明るくて気さくだし、無鉄砲なところもあるけど慣れれば大したことはない。

 あれ、大切ってなんだ?

「あ、迷子二人組発見!」

 と、元気過ぎる声が俺の思考をとめた。

 振り返れば、二葉と見知らぬ少年。

「あ、奏くん」

 と、傍らで灯ちゃんが小さく呟く。

「灯、頼むから、フラフラ勝手に歩かないでよ」

「だって、可愛いワンちゃんがいたんだもの……」

 灯ちゃんの声が徐々に小さくなり、申し訳なさそうにうなだれてしまった。

「灯がご迷惑をお掛けしました」

「いや、そんなことは全然ないです」

 少年が丁寧に頭を下げたので、思わず敬語。

「それより二葉が暴走とかしませんでした?」

「それどういう意味?」

 頬を膨らませて、不満そうにいう。

「突然走りだしてどこか行っちゃうんだもん。追いかけたけど無駄に足速いし」

「え、あ、それは……」

 もしかしてジェスチャーが失敗していた?

 どうやら、俺が悪いらしい。

「申し訳ございませんでした!」

 勢い頭を下げると、笑い声が聞こえてきた。三人分。

……はずっ!



 別れ際に灯ちゃんは俺に手を振り、小声で、がんばってください、と呟いていった。

「大切、ね」

「なんかいった、圭一?」

「いや、大切な人ってなんだろうと思って」

「そんなの考えるまでもないでしょ?」

「は?」

 二葉は腕を組んで、にやりと笑う。

「なんだねぇ、君はそんなことも知らないのかねぇ」

「お前は知ってるのかよ」

「皆大切じゃん!」

 二葉は堂々と言い切った。

「寧ろ、大切じゃない人なんている? どんな人からでも学べることはあるんだよ。それに私はあんまり人を嫌いになることがないしね。というか、皆大好き!」

 一拍置いて、


「勿論、圭一もね!」


 一輪の向日葵。


 ――あぁ、成程。


 ――これは敵わないかな。


 ドクンと流れる血液が自覚させてくれる。当たり前すぎて気付かなかった、多分ずっと前からそうだった。

 これが大切とイコールかは解らないけど、十分条件ではあるはずだ。

「例え一%しか成功しないとして、動かなければその一%も掴めない、だっけ?」

 まあ、人生一度くらいギャンブルしてもいいんじゃないかな。

「さっきからどうしたの、圭一」

 甘い言葉なんて柄じゃないし、取り繕うのは苦手だから、素直に伝えてみようと思う。

「実は――」


誤字脱字誤文法、感想、批評などございましたらよろしくお願いいたしますm(__)m


少し長々と文章を書きたいと思いますのでお気をつけください。


まず急な推敲依頼にもかかわらず引き受けてくださった友人と先輩に謝辞を

御二方がいなければこの作品は仕上がりませんでした。


初回から大遅刻をしてしまい申し訳ございません。

完全に私の失敗です。予約投稿にすべきでした。


この物語は字数にして4000字ジャストです。

えっと、これは結構なダイエツトの結果で元は……5800くらいあったりしますw

もちろん、これを直接投稿するわけにもいかずお二人のお力をおかりして減量したわけなのですが、その中で私も色々思うところもありましてw


まず、私は一人称に慣れてません。恋愛もほとんど書いたことありません。短編も苦手です。

えっと、すいません。本当のことですw

じゃあ、なんでこの物語を書いたのか、ひいてはなぜこの企画に参加したのかといいますと、腕を磨きたかったんです。

お菓子がお題だなんてぴったりじゃないですかw

たとえ叩かれても、見放されても、七回書き続けようと思い参加しました。

得るものは少なからずあると考えたからです。


そして、一回目。

正直、ここまで自分に文章力がないとは思いませんでした^^;


思い知ったのが、いかに自分が描写過多なのかということです。

まぁ、ぶっちゃけますと、長編と描写過多だと頭の中を全部つっこんでおけるんです。作品としての完成度を抜きにすればですが

悪く言えば『誤魔化せる』ということです


で、今回の短編。

推敲をしていただいて解ったのが、取捨選択の難しさと重大さ

やはり短編はもろに構成力がでますねw

本当にうまい方々は尊敬します。

それでですね、今回取捨選択の中で私の譲れないものというものが若干見えてきました。

それもお二人のおかげなんです。あんまり言うとくどいんですがw

支えられていることも実感しました。


それから私の文章は回りくどいということも解りましたw

なるほど、友人に読みづらいといわれるはずですww


次に作品について。

えー、正直自分でもツッコミどころは多いですw

単純に文から灯の空気感とか……

お題とかを抜きにした場合、アイスであった必然性

二人の心情描写不足

情景がほとんどない

超展開

などなどまだまだありますw

消した文残した文、選択したのは私なんですが、これでいいのか自信は正直ありません

ですが、私は胸を張っていようと思います。

なんで、思いっきりつぶしに来てくださいw

批評を取り込んで、私に足りないものを埋めますw


この辺で終わりにしましょうかw

既にかなりのものを得た感がありますが、まだまだ私は貪欲ですww

次回は綿密なプロットと予約投稿が欠かせないw


では、長文失礼しましたww

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