由縁
無事電車に乗ることができ、一息着いた所で、すずさんが『私』に話しかける。
「そういえば。 ひよちゃん。 私が来る前なんか、一人で話してなかった???」
あっ……………
やばい。
私の心臓の鼓動がいつもより速くなってるがわかる。
私は『こいつ』と私が入れ替わろうと、『私』に手を伸ばした。
いや、駄目だ……それこそ悪化してしまう。
私は……なにも、できない。
しない方がいい。
『彼女』に任せる事しか出来なかった。
「あ〜〜、緊張しててさ〜!!」
「会話の練習よ会話の練習!」
『私』が言い訳を言ってくれる。
少し無理があるんじゃないか……
いいや、言い訳をしてくれただけ感謝すべきだな。
「なるほど…! 緊張、するよね!」
「そうそう〜!!」
すずさんは単純だからなのか、それとも、『勘づき始めて』はいるけど、それを受け入れられていないのか。
どちらにせよ、深掘りされなくて本当に良かった……
それから目的地に着くまですずさんと『私』が二人で楽しく会話を始める。
私の心臓の鼓動が静まる。
けど、まだ心には、もやもやがあった。
これは、『彼女』にもちゃんと感謝を伝えるべきなのか。
このまま無言を通すのか……
――私も……ついて行っていいかな……――
なにを考えてるんだ、私。
さっきの危機は私がもたらしたことじゃないか。
だったら――
「あの………あり、がとね。」
不思議と前までの嫌悪感はなかった。
言うまでに詰まりはしたが、言葉にしたら結構スラスラ言えてたと思う。
『私』は無視だった。
まぁ、、当たり前か。
まず、すずさんと会話してるので、聴こえてるのか、どうかもわからない――
だけど伝えなくちゃと思った。
聴こえてないならそれでも、いいか――
そこからはずっと『私』とすずさんの楽しげな会話をしているのを聴いているだけの一人と化した。
いつもの事だ……
しかし、いつもより心が軽い状態で話を聴くことが出来てた。
「次は〜〜〇〇〜〇〇〜!!」
「あっ!! ひよちゃん次だよ〜!」
電車に乗って体感50分ぐらいだろうか。
いつもの下校より少し長く感じたので多分そのぐらいだと思う。
――数分後――
私達は間違いを犯さず、無事電車を降りる事ができて、改札も難なく出てこれた。
改札を抜ける際に、先頭を歩いていたすずさんが『私』の方へ身体を向けて可愛く尋ねる。
「さっ!! ひよちゃん! なにしますか!??!」
たまにすずさんって敬語が入るんだよなぁ。
癖だとしたら可愛い癖だな……
「よぉお〜し! 一旦駅の中ふらふら歩きますか!!」
「お〜〜!!!」
そうして、すずさんは『私』の定位置、左隣に着いて、私は後方で眺める係。
何度も見た光景。
幻影の『自分』が現実世界で楽しくデートをしている普通に考えてやばい光景なのだが、なぜだか、少し、私の心には"安心"を感じてしまった……
デート第二部が始める。
「てか、ここどこ、?」
「さぁ……???」
『私』が『ふらふら歩く』と言ったけど、結局は道がわからず、壁に書いてある駅の地図を二人で眺めてる。
「あ〜〜! ここだ!! ここ!!」
地図を見ていたら思ったらすずさん地図の何処かを指差して声を出した。
「なにかあるの??」
「これ! 一緒今日ここに来たかったの!!」
そうだそうだ。
このデートはすずさんの提案でここに来てることはすっかりと忘れていた。
「へぇ〜! いいね〜!! なになに?」
本当に楽しそうな『私』。
私と会話してる時はあんなテンションなんてないだろうなぁ。
というか、なんだろうか。
その、"すずさんが来たかった理由" 。
きっとすずさんの事なので、可愛い服がここにしか売ってないとか、ちょいお高な化粧品を買いに来たとか、女の子らしい理由なのだろう。
「それはねぇ〜〜!! クッキーだよ!」
クッキー……???
クッキーってあの、小麦粉の??
いや、まぁ、うん。
女の子らしいっちゃ女の子らしい。
「くくく!? クッキ〜〜?!!?」
「いいねぇ〜!!!」
本当に『こいつ』はオーバーリアクションが得意だな。
いや、こういうノリが出来るのがきっと、『こいつ』が好かれる由縁なんだろうな。
今の私には絶対出来ないな……
あー、本当に良くない。
暗い事を考えてしまう。
明るくいこう!
うえーい!
キツ……




