表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双天鬼  作者: 四郎
16/200

第十六話 街の勢力図

嵐ヶ丘高校の頂点に立った双天鬼。

だが彼らの目の前に広がる街は、もっと荒れ狂う修羅場だった。

その闇を知るのは――かつて鷹鬼に完膚なきまでに叩きのめされた、辻。

今、彼の口から語られる街の勢力図は、嵐ヶ丘の抗争をさらに拡大させる。

夜、ダーツバー「アンジュ」の奥のボックス席。

鷹鬼と久里鬼、その両脇には双天鬼に敗れた松浦と辻が腰を下ろしていた。

テーブルには酒ではなくコーラとポテト。

だがその空気は、戦の前夜のように重かった。


辻はおそるおそる、一枚の手書きの地図を広げた。

「……正直言うと、俺もここまで深ぇ話はしたくなかったんだ。

けど……双天鬼が動くなら、絶対に避けられねぇ現実だ」


地図には赤い線で区切られた区域が描かれている。

それは嵐ヶ丘の外――街を六分する不良チームの支配領域だった。



「まず北の駅前――《朱雀会》。

頭は吉田。通称“インテリ”。

長身でメガネをかけたスマートな男だが、頭の回転が速くて喧嘩も強い。

ただ暴れるんじゃなく、策略を練って勝ち続けるタイプだ。

今の族連中じゃ一番頭を使う奴で、油断するとハメられる」


鷹鬼は無言で頷く。

インテリという言葉に、彼の中の警戒心が一段強まった。



「次に西の商店街――《獅凰連合》。

ここを仕切ってるのが二井。通称“モンキー”。

背は低ぇし、見た目は天然パーマでチンケに見えるが……とにかく卑怯な手を使う。

武器でもなんでも持ち出すし、相手の目を潰すことすら平気だ。

正面からぶつかると油断した瞬間にやられる」


久里鬼が鼻を鳴らす。

「卑怯者か。だったら俺の拳で正面からぶっ潰す」



「南の広大な区域――《黒天会》。

ここの頭は山田。通称“リック”。

相撲取りみたいな体で、実際学生相撲のチャンピオンだった。

どんな攻撃も効かねぇ鉄壁の肉体で、正面から倒せた奴はいない。

シマの広さと人数も桁違いだ」


松浦が顔をしかめた。

「相撲取り……力自慢か。俺の蹴りも通じるかどうか……」



辻はコーラを一口飲み、息を整えた。


「それから――《狂極連合》。

ここは硬派を気取ってるが、喧嘩の腕は本物だ。

頭は中谷。通称“ファクトリー”。

細身の身体に癖のある髪、常にウインナーパンをかじってやがる変態だが、喧嘩の腕は超一流。

あいつは戦い方が独特で、相手を徹底的に追い詰めていく。……正直、かなり不気味だ」


久里鬼が呟く。

「ウインナーパンか……」



「東側の歓楽街――《ブラッディローズ》。

女を従えて、卑怯なやり口でシマを広げてる連中だ。

頭は藤崎。通称“ギャッツ”。

デカくて太ってるが、喧嘩の腕は抜群。

巨体からは想像できない速さで殴りかかってくる。

しかも女を使った罠や取引を平気でやるから、まっとうに勝負しようとすると痛い目を見る」


久里鬼が歯を食いしばり、拳を鳴らした。

「女を利用する奴は許せねぇ」



辻は最後に声を落とし、震える指で地図の中央に黒い丸を描いた。


「……そして、街で最も極悪非道な奴ら――《ヘルズエンジェル》。

奴らは規模も数も桁違いだ。暴走、薬、女……なんでもありの外道集団。

その頭が白武。通称“ブラックレター”。

スキンヘッドの巨体で、女を見るとすぐ欲情する最低の獣だ。

噂じゃ、この辺りの可愛い子を狙ってるらしい……。

みささんなんか危ねぇかもよ」


その言葉に、久里鬼の拳がテーブルを叩き割りそうな勢いで握りしめられた。


鷹鬼は横目でその相棒を見ながら、低く言った。

「つまり、俺たちの戦いは……まだ始まったばかりってことだな」


松浦は唾を飲み込みながらも強気に言った。

「俺も一緒にやります! 街の奴らに、双天鬼の名を刻みつけましょう!」


辻は肩をすくめながらも、必死に頷いた。

「怖ぇよ……怖ぇけど、俺もついていく。俺の情報が必ず役立つはずだ」


久里鬼が豪快に笑った。

「いいじゃねぇか。学校だけじゃ飽き足らねぇ。街全体まとめて潰してやろうぜ!」


鷹鬼は微かに笑みを浮かべた。

朱雀会、獅凰連合、黒天会、狂極連合、ブラッディローズ、そして最強のヘルズエンジェル。

街の勢力図は、血と暴力と欲望で塗り固められていた。

双天鬼が歩を進めれば、必ず衝突が待つ。

だが二人は恐れなかった。

鬼は二つ。

その歩みが、街全体を巻き込む嵐を呼び込もうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ