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水流し  作者: 秦江湖
1/5

行きつけのBARで

これは会社員の友人に聞いた話。

友人は新宿に馴染みのBARがあって、そこの美人ママに惚れているようだった。

俺も何度か連れて行ってもらったが確かに美人で気立てもよくて酒も強い。

ハーフで日本人離れした顔立ちとスタイルは、仮に大勢の中にいても際立つこと間違いなしというほどの美貌だった。

それほどの美人で気立てもいいから、そんなに大きな店ではないが、ママ目当ての客もけっこういた。

以下、友人をAとする。それと、お店やママの名前も明記はできないのでご理解ください。



そのAがある夏の日、仕事を終えて一杯ひっかけてから帰ろうと新宿を歩いていた。

馴染みのBARは休みの日なので、別の店で少し飲んだ後に、気がついたらBARの近くまで来ていた。

ふと見ると看板の電気がついているし、ビルの入口にも看板が出ている。

今日は休みのはずなのに?臨時で開店かな?

Aは疑問をいだきがらもママの顔見たさにエレベーターを呼んだ。

BARはビルの二階にあり、エレベーターから降りてみると、BARのドアが開いている。

「こんばんは~」Aが挨拶しながら店に入ると「あー!Aさんいらっしゃい」と、カウンターからママがいつものハスキーな声と笑顔で迎えてくれた。

「看板点いてたから来てみたけど、今日はどうしたの?」

「ほら、私、先週から友達と旅行いってたでしょ。明日帰るはずが予定が早まって今日帰ってきたの。だから暇なもんで店でも開けようかなって」

どうやら急な開店のようだ。だからいつもいるバーテンもいないのかとAは納得した。


「乾杯しましょう!いつものでいい?」

「ああ。それで頼むよ」

Aがドアを閉めるか聞くと、換気のために開けておいてくれと言われた。

二人は冷えたビールで乾杯した。

それから杯を重ねるが他に客が来る気配は一向になく、美人ママを独り占めできてるAは上機嫌だった。

するとママが「Aさんはホラーとか好き?」と、聞いてきた。

「嫌いじゃないよ。むしろ好きかも。どちらかと言うとスプラッター系よりは幽霊とかの方が好みかな」

「ちょうど良かった!一人でもできる怪談ネタを仕入れたの。二人でもできるし、せっかく二人きりなんだからやってみない?」

話を聞くと、テーブルに一人十杯のオチョコを置き、水で満たす。

あとは一人が一話を話したらオチョコの水を流す。

全ての話が終わったら霊が現れるらしい。

「水流し」という名前で、百物語の亜種のような感じだ。

そういえば水場に霊が集まるとは聞いたことがあるなとAは言った。

「そうなの!水を用意して怖い話をすることで霊を呼ぶのよね。でも水は流しちゃうからそのうち帰っちゃうの。それまで集まった霊の影響で最後には私たちにも霊が見えるようになるって聞いたな」

「そうなんだ」

「私たちは酒飲みだし、オチョコに水じゃなくてショットグラスにお酒にしましょう。流すのも勿体ないから一話終わる毎に飲み干すってので」

「よし。じゃあその分払うよ」

「いいわよ。私から言い出したのだし、Aさんの分だけで」

Aはママの前で気前の良いとこを見せたかったので、二人分払うと譲らなかった。

こうして二人だけの怪談が始まった。




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