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SECOND DIE 第一幕 もう一度

作者: えむえいCHI

いつも読んでいただきありがとうございます!

三部作の一作目です

 その日、俺は死んだ。


―――どうして……こんなことに、、


俺は戸惑っていた。

中学生のときから付き合って、結婚まで至った俺の嫁(元)坂上 由依(ゆい)に浮気されたのが発覚したのが2日前。そこから、夜、離婚届を出しに行こうとして、車にはねられこのざまだ。

周りの人の騒ぎ声でさえ俺の耳には聞こえにくい。


―――ああ……意識……が……


「―――やっと、いなくなった……」


死の間際、俺の耳にただ一つはっきりと聞こえてくる声があった。


―――由依……?


そこで、意識は途切れる。


こうして、俺は死んだ。


・・・


 「起きてください」


中性的な声で呼ばれて俺は目を覚ます。


―――誰だろう?


「フィニッシペッシオン!おめでとうございます!」


―――何だろう?走馬灯かな?


「まず一つ、あなたは死にました」


その言葉に俺はハっとする


―――そうだ、俺、死んだんだ。


「はい。そうです。あなたは死にました。しかし、おめでとうございます。あなたは選ばれました」


―――選ばれた?


「はい。あなたは、過去50年間で最も不幸な人間に選ばれました」


―――というと?


「ご説明しますと、私たちは50年おきに人間を一人選出し、‘‘やり直し‘‘のチャンスを与えています。そして、今回はあなたが選ばれました」


すなわち、俺は50年に一人の逸材(?)だそうだ。


「と、言う訳なので、まずはこの契約書にサインを」


そう言って、どこからかRPGの選択肢みたいなやつを出して来た。



‘‘Do you want to redo life?‘‘



なんでまた英語……えーと?‘‘人生をやり直したいですか?‘‘だって?



‘‘YES or NO‘‘



「選んでください」


俺は少しだけ悩んだ。

しかし、最初から答えは決まっていた。

透けた手を伸ばし、



―――――もちろん――――YESだ……!



―――ピッ。


虚空になんかそれっぽい音が響く。


「あの、君のことはなんて呼べばいい?」

「天使とでもお呼びください」

「じゃあ、天使さん。今まで‘‘やり直し‘‘をやった人っている?」

「いえ、平田様が初めてです。いままでの方々は皆さん人生にかなりのショックを受けたようでしようしませんでした」

「そうか」


きっと、俺よりもっと不幸だったのだろう。


「それでは、各種相談に入ります」

「相談?」


どうやら、この天使さんによると、やり直す時にいくつか能力を上げてやり直せるというものもあるらしい。さらに、生まれた瞬間に早送りして、やり直したいところからやり直せるらしい。

そして、一番重要なのは、この人生に‘‘運命はない‘‘という点だ。

つまり、今まで天使さんたち側で決めていた、その人(俺)の人生の台本はまるっきりなくなり、自分にすべてを決める権利が与えられるらしい。

このとき、自分の行動に‘‘運命‘‘の補正が働かないため自分の行動のある意味での取り消しが利かないとのことだ。


「要するに、究極の自由ってわけか」

「はい。そうです」

「で?そのバフ効果みたいなのってどんなの?」

「それはこれから選んでいただきます」


途端、目の前に、無数のカードが広げられた。


「この中から5つ選んでください」

「数多いな⁉」

「はい。多種多様なものをそろえております」


俺は少し悩んだ後、決め始めた。


「一枚目は学力向上だ。二枚目は運動能力向上、三枚目は理解力向上。四枚目は、う~ん、、あ!成長促進。最後は……‘‘これ‘‘にする」

「これは、、よろしいのですか?こんなもので」

「これがいいんだよ」


俺はバフ効果をすべて選び、天使さんに渡した。


「ではこちらで決定いたします」

「ああ。頼むよ」

「では、次に早送りについてですが」

「中学の入学式からで頼む」

「1からはやり直さないのですか?」

「ああ。流石にまたフルタイムで人生する気にもなれないからな」

「かしこまりました。それでしたら、誕生から小学校卒業まではこれまでの人生がそのまま適用されます。よろしいですか?」

「構わないよ」


天使さんは「かしこまりました」と言って、深々と頭を下げた後、意味ありげに両手を組んだ。


「それではこれよりやり直しを開始します。幸運をお祈ります」

「ありがとう。行ってくる」


途端、俺の直下の床が消えた。しかしが真っ白になる。

こうして、俺のやり直しが始まった。


・・・


 「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 「ほぉらお母さん!生まれましたよ!」

 「ああ。(ひろ)


6月13日 平田 浩誕生(二回目)


――――――早送りを開始します


・・・


 13年後


中学一年生 春 入学式


校長の長話が聞こえる。小学校から離れたくて中学受験をして入った学校だ。

ここで俺は坂上に出会った。


「………ん?」


体の感覚がある。どうやら成功したらしい。

目を開けると、視界が真っ白になり……そして、学校の体育館にいた。


「成功したか……」


俺は、ふと辺りを見回す。


ああ。懐かしい。今俺の後ろにいるのは文哉 雄太(ふみや ゆうた)。俺をいじめていた主犯である。前にいるのは、日村 一也。こいつものちに俺をいじめる。右隣は、平野 健二こいつも俺をいじめる。


俺はさしあたり、第一のやり直しとして、こいつらのいじめを阻止しようと思った。

俺がいじめられた原因は、一学期の中間テストで中途半端に高得点を取ってしまい、不覚にも学年1位ではないが上位に食い込んでしまったことにある。


「まずはそれを何とかするか」


俺はつぶやく。


こうして俺のいじめ脱却計画が始まった。


・・・


 さて、入学から一カ月、5月になった。

中間試験は5月末にある。俺はひたすらに問題集を解きまくり、共通テストの勉強法をそのまま転用して一日10時間勉強した。ただ、ほとんどバフ効果のおかげで一度見たらわかるのであとは完全に記憶するまでやり続けるだけだった。


 そんなこんなで、中間試験の日がやってきた。


キーンコーンカーンコーン!


決戦の火ぶたが切って落とされた。


・・・


 「回答辞め!はい、答案後ろから回収して~」


担任の声で、試験が終わった。

俺はこの時確信した。


―――成功したな。


 後日、試験の順位が発表された。


3位 赤沢 優  合計812点

2位 田中 日向 合計838点


そして、


1位 平田 浩 合計1000点(満点)


全教科満点で俺は試験を終えた。


「うそ……」「信じられない……」「マジか……」


結果の張り紙の前で絶句する人が後を絶たなかった。

計画は無事完了した。


かに思えた。


・・・


 「今日の議題は先日の中間試験についてです」


後日、急遽クラス会議が行われた。

内容はもちろん、


「一部の多数の人から、平田君がカンニングしたという報告を受けました」


―――やはりか


「これについて、平田君の意見を聞きたいです」


担任は淡々と話を進める。呆れているようにさえ見える

そう、担任は知っているのだ。俺がカンニングをしていないことを。


「え~っと、」


俺はゆっくり立ち上がり、答弁を始めた。


「結論から言うと、俺はカンニングをしていません。する必要がないからです」

「理由になってねえよ!」


文哉が声を張り上げた。この時、文哉はクラスのリーダー格であり、告発もこいつが初まりだ。


「お前の隣は赤沢さんが座ってるじゃねぇか!学年三位の赤沢をカンニングしたんだろ!」


文哉の言わんとすることも分からんでもない。まぁ、言うならもう少しましな言い掛かりにしろよ。


「じゃあ、聞くが、赤沢が間違ってるもんだいをどうやって答えを合わすんだ?」

「それは……周りの他の奴のも見て……」

「ここに、赤沢の答案と、例として数学の問題の正答率をまとめたものがある」


俺はここぞとばかりに証拠資料を広げた。


「は?そんなもんが何になって……」

「赤沢が間違えた問題、例えば大問9、これの正答率は1パーセントだ」

「それがどうし……あ、」


やっと、分かったらしい。


「正解したのは俺だけだ」


クラス中が静寂に染まる。


「ということで、ほかの教科も、俺しか正解してない問題あるから俺はカンニングしてない」


文哉は舌打ちをして、そっぽを向てしまった。

やりすぎたか。まぁいっか。


 「ちょっと、話あるからさ、一緒に飯でも食おうぜ?」


昼休み、文哉に呼び止められた。日村や平野の姿もある。誘い文句も一緒。すがすがしいほどにこの人生が二週目であることが感じられた。


「ああ。わかった」


・・・


 体育館裏にて、


「お前さ、調子乗りすぎ。何様のつもり?ちょっと満点取ったくらいでいい気になりやがって、空気読めよ?」

「空気?なんだそれ?」

「そんなこともわからねぇの?笑えるな勉強しかできないお坊ちゃん?」

「嫌味は終わりか?俺、教室帰って飯喰いたいんだけど」


瞬間、俺は数人に捕まった。

これから、文哉による蹴りのオンパレードが始まる。


が、そんなことは予想済みだ。


「二度とそんな態度取れないようにしてやる」

「っ!」


来る!


 俺は、全身の力をふっと抜いた。

50キロ弱の体重が捕まえていたやつらに一気にのしかかる。

態勢が崩れたすきに、前に突進。

すかさず文哉の足をつかみ、体勢を崩させる。

続いて

文哉の腕をつかみ、一息に回す。曲げてはならない方向に。


「あ"」


鈍い声と、涙が噴き出した。

もちろん構わずほか四人も同じように腕の骨を折る。


バフ効果で強化された俺の肉体は、片手で、こんなにも簡単に人の骨を折れるほどになっていたのか……


自分の力が怖くもある。

さて、戻ろう。




思えば、ここから計画は無意識に進行していたのかもしれない。


・・・


 後日、教室にて、また文哉たちが絡んで来た。


「お前のせいで骨折れちゃったよ~ ひどいことするよね~……おい!何とか言えよ!」


さて、いじめ脱却計画も仕上げと行きますか。

俺は静かに立ち上がり、文哉や、その取り巻きの顔を見て小声でこうつぶやいた。


「また、‘‘折られたい‘‘?」


その瞬間、文哉たちの表情が一変。言葉では言い表せないほどに青ざめ、変な汗が一気ににじみ出る。


「すみません、すみません!すみませんでしたぁぁ!」


文哉たちは狂ったように逃げ出した。

周りのクラスメイトは、俺を見ようとはしない。皆恐怖に染まった顔をしていた。


どうやら、俺の‘‘5つ目のバフ効果‘‘は正常に作動したようだ。



こうして、以後奴らが絡んでくるどころか、話しかけてくることもなくなった。


・・・


 中学生になって、一年が経った。

飛びすぎだ!と言うかもしれないが、一年なんてあっという間である。もちろんのことながら、中1の全てのテストは満点である。


 さて、中二になったわけだが今日は重大発表がある。

今日4月10日は、俺の未来の嫁であり俺を殺した張本人である坂上 由依が転校してくる日である。

教室で、一人本を読んでいる俺だがさっきから震えが止まらない。


「おーいみんな、席につけ~」


男性の担任教師の野太い声で俺はハッとする。

ついにこの時が来たのだ。


「今日から2年生なわけだが、転校生を紹介する。入りなさい」


担任に呼ばれて入ってきた坂上は、俺の記憶の坂上と同じだった。そりゃ、二週目だから同じなのは当たり前なのだが、やはり改めて見ると自分がこれと結婚したのが夢のように思える。

風になびく緋色の紙は、外国人の父からの遺伝らしい。顔立ちは日本人なのだが、スタイルはもはやモデルやアイドル並みである。優美な曲線に同性までもが憧れたのを今でも覚えいる。


「坂上 由依です♪せっかく頑張って入った学校なので、みんなとも仲良くして、充実した生活を送りたいです!よろしく♪」


その瞬間男子からも女子からも歓声が上がった。そして、俺は冷汗と震えが止まらなくなった。


「じゃあ、坂上は平田の隣な」


この時、俺は自分が後ろの窓際席だったことを初めて恨んだ。


分かっていたことだ。いずれは来ると。しかし、いざ来てしまうとどうしようもないものだ。


「よろしくね」


坂上はいつの間にか俺の隣の席に座っていた。


「…………」


俺はだまって震えているだけだった。

坂上が小首をかしげたが俺は何も言わなかった。


怖かった。気まずかった。未来の嫁が発する気まずさは尋常ではない。


・・・


 「平田~飯行こうぜ~」


ある日の昼休み俺は友人と学食に行っていた。


「見ろよ。今日もきれいだよな」


友人の視線の先には坂上がいた。やはり、美人だ。そこは認める。いや、認めざる終えない。何せ、前世では10年ほど一緒にいたのだから。


「そうだな」

「お前ほんと淡泊だよな?坂上に対して」

「そうだな」

「はぁぁ。なんだ?個人的な恨みでもあるのか?」

「特にないよ。ただ、美人って大体裏があるんじゃないかって思っただけだ」


「そうかい」と、友人はため息交じりの応答をする。ちなみにこの友人は前世では高校生の時に知り合った友人である。中高一貫校だとこういうことも出来るらしい。


「でもまぁ、気を付けろよ?坂上オタクどもに殺されるぞ?そんなに愛想悪かったら」

「分かってらぁ」


・・・


 さて、待ちに待ったこの日がやってきた。

委員会を決める時間である。


前世ではここで坂上と同じ委員会になった。しかし、今回は違う委員になることができる!

アイツと出会わずに死なずに済む人生設計の第一歩である。


「んじゃ、図書委員、二人なやりたい奴は挙手して」


先ほど決まった学級委員長が声を張り上げる。


今だ!


俺はすっと手を挙げた。図書委員なんて地味な役職誰もやりたがらないだろう。あとは相方の奴と適当かつ適切に仕事をするだけ……。


「じゃあ、わたしも」


不穏な声が聞こえた。

嘘だろ?おい、嘘だろ?

俺の中で何かが壊れる音がした。


「じゃあ、平田とあと‘‘坂上さん‘‘よろしく」

「はーい」


あ、終わった。


こうして、俺の人生設計はついえるのだった。


「委員会でもよろしくね?」


隣から聞こえた悪魔のささやきと共に。


・・・


 図書室。


「ねぇ、平田!この本どこにしまえばいい?」

「ちょっと待って……」


放課後、俺は図書委員の仕事である、本の整理をしていた。

急ぎ坂上の所に行くと、本を抱えて途方に暮れている彼女の姿があった。


ああ。懐かしい。


この子はいつから浮気していたんだろう?

俺は今更な疑問を考えてみる。

結論はもう出ない。


「えっと、それは、」


俺が坂上から本を受け取ろうとしたとき、


「わっ!」「ひゃっ!」


坂上が絨毯で足を滑らし、5,6冊詰みあがっていた本が一気に崩れた。俺はとっさに坂上をかばう。


ドサッドダッ


音が止み静寂が訪れる。

俺が押し倒した形になった坂上と目が合う。

頭に本があたったがどうでもよかった。


「ご、ごめん!」


俺はとっさに飛びのいた。


「い、いいよ。別に。あ、ありがと。大丈夫?」


頬を赤らめた由依が答えて来た。


「ああ。」


さすがバフ効果。成長促進と運動能力向上が効いたらしい。

っておい……何平然と助けてんだよ。俺は。こいつは俺を殺した張本人なんだぞ?

まさか、いや、まさかな


まさかまた惚れたなんてことないよな?


このことをきっかけに俺は坂上をさけなくなった。坂上もまた心を許してくれた。


・・・


 「なぁ、友よ」


俺は友人に話しかけられていた。


「なんだ?」

「最近なんかあっただろ」

「いや?特には」

「あれだけ避けてた坂上と今じゃ普通に会話するじゃん!これは一体どういうことだ!」


ああ。確かに最近由依とよく話すなぁ……。この前だって、


 「お昼まだなの?」

 「ああ。まだだけど?」

 「じゃあ、一緒に食べよ?」

 「ああ。わかった?」

 「学食でいい?」


なんてことがあったようななかったような……?


「今心当たりあったな?」


友人の言葉に思わずびくっとしてしまった。


「別に、仲が良いだけだ。他意はない」

「ほんとかよ……」


そうだ。他意はない。他意はない……はずだ。


・・・


 「今日は私がカウンターやるね」


放課後。部活のない俺たちは、委員会活動をしていた。

いつも俺がやっているカウンターの貸し出し作業を今日は由依がやるとのこと。


「わかった」


俺は短く了承し、由依がいつもやっている、本の整理を始めた。


 数分後。


「この本どこだっけ?」


俺は所在が分からない本を発見した。こうなると、由依に聞くしかなくなる。


俺はカウンターまで来て、


「坂上、ちょっといいか?」


なぜか突っ伏している坂上に声をかけた。


「すー、、すー。。」


気持ちよさそうな寝息が帰ってきた。


「ったく、首痛くなるぞ?」


俺はそっと由依を揺さぶってみる。


「…………ん、」


由依の小さな声が謎の色気と共に漏れた。

俺は思わず息をのんだ。


かわいい!


危うく惚れていしまうところだった。


その後、起きた由依にぺこぺこと頭を下げられたのはまた別の話である。


・・・


 さて、中二の夏がやってきた。

今日は7月20日終業式である。


「え~、夏休みの間も勉強を怠らず……」


いつになっても慣れない校長の意味ありげな話を聞いて、

無事終業式は終わった。


「平田はどうするの?夏休み」

「どうもしないよ。ただ宿題やってのんびりするだけだ」


終業式終わり、俺は由依と世間話をしていた。我ながら変わったものだ。


「つまんなくない?」

「そうでもないぞ?」

「それはそれとしてさ、クラスの皆で夏祭り行こうって話あるじゃん?」


そうだった。

7月末にある学校近所の夏祭りに一緒に行こうと言う謎企画が進行中なのだ。

ちなみに言い出しっぺは委員長。さすがだな。


「あったな」

「平田は行くの?」

「行くよ?」


「そ、そっか」由依は少し嬉しそうだ。

俺には分かる。これがただの「うれしい」という気持ちの顔ではないということが。

ただいま坂上は俺に惚れている。

なぜわかるかというと、一回目の人生で俺は立ちが付き合い始めた時に聞いたからだ。


「いつから俺のこと好きになったのか?」と。


結果、中二の夏祭りぐらいだそうだ。


「そういう坂上は行くのか?」

「うん。行くよ?」

「ちなみに、服は?」


「服?」と、由依がいぶかしげな顔をしている。


「着物か、洋服かって話」

「ああ。着物だよ?」


よっしゃ!

そう。俺は大の和服好きなのだ。


「なに?和服好きなの?」

「ハイすみません」


「まぁ、平田が喜ぶなら何でも着るけどね……」由依がボソッと何か言ったが俺には分からなかった。


 とまぁ、紆余曲折ありながら、夏祭りに行った。

正直かなり楽しめた。由依は鉱物のりんご飴をひたすらほおばっている。

かわいいなぁ。もう……。


友人が射的やで景品を取りすぎて出禁になっているのをお横目に、俺はただ感傷に浸っていた。


ああ、懐かしい。


前世でも一度だけ、由依と夏祭りに来たことがあった。もちろん彼女は、りんご飴をなめていた。


そんな由依がどうして、俺を…………。


こうして、夏祭りはあっという間に終わってしまった。


・・・


 「海に行こう!」


クラスのグループラインでそんな話が上がった。


 その一週間と少しあと。


「海だ〜」


展開が早すぎて追いつけていないのは、俺だけではないはずだ。

話が上がった途端に賛成多数で、可決。それからあれよあれよと言う間に、日時、場所なんかが決まって……


「今に至るわけか」

「どしたん?」


隣からは由依の声が聞こえてくる。ちなみにまだ付き合ってはいない。


「いや、これまでの怒涛の展開を整理しただけ」

「なんで?」

「さぁ?何ででしょう?」

「はぐらかさないでよ……」


由依が口をとがらせた。その愛らしさは前世の由依を凌駕していた。

もっとも、それをこの子に伝えても何にもならないのだが。


 とまぁ、なんんだかんだで海に来たわけだが、俺は別に何をするでもない。のんびりビーチで海を眺めていた。


「きれいだな……前は来れ無かったもんな」


そう。前世でも確かクラスで海に行こうとか言うのがあった。俺はいじめられてたし、ハブられたんだがな。あの時は、せっかくだからとか言って由依は行っていたな。

俺は家で卑屈になってたっけ。


「泳がないのか?」


友人に声をかけられた。いい加減名前を言っておくと、片原 ユジンだ。以後ユジンと呼称しよう。


「ああ。俺はいいよ」

「でた」

「何が?」

「お前の悪い癖。すぐに壁を作る。俺じゃなきゃ壊せないね。みんな優しいから」

「そういうつもりはないんだけどな」

「そうかい。でもな、」


目の前の茶髪はそこで言葉を切り、とある方向を指さした。


「ほれ、お前に構ってほしそうなのが一人いるぞ?」

「は?」


俺は、その方向を見ると、由依がちらちらことらを見ていた。

あれは、前世でまだ仲が良かったころよくしてきたことだ。確か意味は、、‘‘こっち来て‘‘だったか。


「そうらしいな」


俺はユジンに短く答えた後、ゆっくりと立ち上がり由依の方に歩いて行った。


「おそい……」

「ごめんごめん」


由依に文句を言われたが、満面の笑みだったのでまぁいいだろう。このはにかみに、前世では苦労させられたな。

あれ?そういえばアイツ海でなんかやばいことあったって言ってなかったか?


何気なくまぁいっかと流して由依たちと遊び始めたのだが少したって俺の不安が的中した。


「坂上が!」


誰かが叫んだ。俺たちはビーチにいた。全員が沖の方をみると、由依がバタバタともがいていた。


このとき、なぜだか分からないが気づいた時には飛び込んでいた。由依はもがく間にかなり流されてしまい、浜辺から遠くに行ってしまっていた。しかし、そんなことはどうでもよかった。


‘‘坂上 由依がおぼれている‘‘


その事実だけが明確に俺を突き動かした。

由依の所へ泳いでいき、浜辺まで運んだ。すぐに救急車に連絡と由依の親御さんに連絡することを近くの女子たちに頼んで、俺は無我夢中で人工呼吸を試みた。もちろんキスのような形になってしまうが仕方ない。人命最優先である。

そんなこんなで頑張っていると由依が目を覚ました。


「浩君……?」

「由依!大丈夫か!由依!」


俺は必死に呼びかけた。もうこのときは必死だった。まだ俺にこんな感情があったとはな……。


「うん。大丈夫っぽい……ありがとう……」

「無茶すんな……ったく……。女子の誰か!由依を頼む!」


女子の一人が慌てて出てきて、由依を連れていった。


「やんじゃん」


戻るとユジンに声をかけられた。


「まぁな。知り合いが死ぬと寝覚めが悪いんだ」

「つーかお前、水泳部は入れよ。絶対全国いくって」

「嘘いうな。ばーか」


何気ない世間話だが、実際バフで強化された肉体なのですこぶる早く泳げた。

その後、俺は……クラスでスーパーマンというあだ名がついた。とても不本意だったが、そのまま流されることにした。


こうして、海での一件が終わり、それと同時に夏休みも幕を閉じるのであった。



・・・


 「休み明けテストどうだった?」


隣を歩く由依が聞いてくる。海のことの後、由依の お見舞いに行くと、勉強を教えてほしいと懇願されてしまった。仕方なく承諾し、夏休みの終わりまで勉強を教えていた。


「多分満点だよ。そっちは?」

「いつもよりはいいかな?まぁ赤点ではないかも」

「それはよかった」

「平田のおかげだよ。ありがとう」


やはりこういうことには俺は弱いのか。少しむずがゆさを感じつつ、にっこりと笑う。


「二学期かぁ~最初にあるの何だっけ?」

「学園祭じゃなかったっけ?」

「そっか、学園祭か」


由依は少し顔を赤くした。理由は簡単だ。学園祭で、‘‘とある渡り廊下で告白するとその後末永く結ばれる‘‘というジンクスがあるからだ。去年は学園祭を休んで温泉旅行(この温泉は前世で俺が高1の時に流行っていた)に行っていたため、今年が俺の(二週目での)初めての学園祭だ。


「誰と回るの?」

「決めてない。どうして?」


由依の顔がボンッっと赤くなる。


「な、何でもない……良かったら……」

「一緒に回るか?」

「ええ⁉……いいの?」

「いいも何も、別に俺暇だし」

「そうなんだ……平田モテるのに」

「そんなことないよ……」


実際はかなりモテている。しかし、あまり目立ちたくないので、迷惑をしているところだ。

手っ取り早く誰かいい相手がいればいいのだが……。


「じゃあ10時に校門前ね?」

「いや、シフト一緒に入ればいいだろ?そこから一緒に行ったらいいんだし」

「ええ⁉」


また、由依の顔が赤くなる。少し面白いなこれ。


「そ、それならいいんだけど……心の準備が……………」

「なに?聞こえなかったんだけど?」

「何でもない……」

「そう」


ああ、間違いない。こいつ、俺に惚れてる。まずいことになった。本来、俺はこいつに復讐するために生き返ったのに関係は深まるばかりだ……本当に運命補正ないんだよな?

俺は少し疑問を抱きつつも、なんとなく流されるのであった。


・・・


こうして、僕の人生の二週目が始まり、前世とは違う割と充実した毎日を過ごしていた。

このまま続けばいいと思っていた。


あの日、‘‘天使‘‘のお告げがなければもっと違う未来も、あったのかな……?



続く

次回

第二幕 その先へ


読んでくれている皆さんへ、


もしも、


「面白かった」

「ドキドキした」

「次回が気になる」


と思ったら、下にある評価で応援よろしくお願いします!


(やり方、☆☆☆☆☆を★★★★★に変えるだけ!)


もしよかったら、感想も


「面白かった!」


など、書いていただけると、すごくモチベが上がります!なので、どうか、よろしくお願いします。

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