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EP30 大阪を離れる

泣いている君を抱き寄せる。




苦痛から解放され、憔悴した表情を君は浮かべた。とても大変だったのだろう。ごめんね、ありがとう、と僕は言った。彼女は照れくさそうにして、微笑んでくれた。


『ケンヂで良かった。』


僕の左手と彼女の右手はまだ繋がれたままだ。どちらとも離そうとしない。僕はその手に永遠を感じる事ができた。右手で彼女の腰を撫で、背中を摩る。小さな体だ。とても小さな体だと思う。


この小さな体で僕と一緒に苦痛を受け入れたのだと思うと、とても愛おしくなる。


『ケンヂ、大きくなってね。』


リカさんは僕の目をまっすぐ見て言った。


『辛い時は逃げてもいいし、負けてもいいのよ。』


逃げるのは嫌だなと僕は返す。


リカさんはゆっくりと顔を振る。


『逃げなさい。大事なことよ。逃げた後にもう一度挑戦すればいいだけ。大事なのはあなたがあなたでいること。』


自分で自分を潰しちゃったり、壊しちゃったりしちゃダメよ、と続ける。僕は頷く。


『生きて。私はあなたがあなたであれば、いつでもどんな時でも受け入れる。そして私を受け入れて欲しい。だからお願い。生きてね。』


僕は頷く。


『僕もリカさんがいい。生きている僕の側にリカさんが生きてくれたら、本当に嬉しい。』


リカさんがまた泣き始めた。


『ワーホリが終わったら、また会いに来てくれる?』


もちろんと僕は頷く。リカさんに相応しい男になりますと誓う。


『今のままでいいのよ。今のままが好きなの。』






何もない部屋で僕と君は二人


見つめ合うだけで満ち足りている


石焼き芋の美味しさについて語り合い


台所のシンクの掃除の仕方で議論になる


公園で早歩きの速さを競い合い


川辺で波切りの数を自慢し合う


夜になったらお互いに求め合い、確認し合う


僕にはあなたが必要で、あなたには僕が必要だと












僕は大阪での期間工の仕事を終え、退寮した後の3日間をリカさんの部屋で過ごした。とても素敵な三日間だった。僕からのリクエストで箕面公園に行き、動物園で千田さんに会い、サクラさんに挨拶に行った。部屋で豪華な料理を作ったり、大掃除をしたりした。もちろんたくさん愛し合った。こんなに幸せなのに、どうしてわざわざ海外に行くのだろうと、自分でも自分が大馬鹿だと思った。






好きですと言う


知っていると返事が来る


どれだけ好きか理解できていないと思うと言う


それは私のセリフだと返される


森のクマさんがハチミツを求めるくらい、君を求めていると言う


それは大変だ、受け止めきれないかもと笑う


君のその笑顔が見たいから、何でもできる気がする








僕はバイクに跨り、大阪を離れた。

ご拝読ありがとうございます


よろしければアドバイス、評価をお願いします

子の作品をより良いものにしていきたいです


作者

遠藤信彦

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