【短編】年越しするカップル【BL】
「はーーーさむい……」
「こたつつける?」
「つけるに決まってる……」
「年越しそば買えてよかったね」
「ね〜」
「テレビ何みたい?」
「なんでもいい」
「おう」
(言うと思った……)
テレビから人の声がする。それは俺たちの間では丁度良いBGMだった。
「……今年も終わるんだな」
「な〜…」
「……」
「今年はどんな年だった?」
「え?ん〜……」
「どんなって…どんなだろ〜……」
「わかんない……あ、みつがいてよかったな年?」
「なんだそれ」
「みつは?どんな年だった?」
「う〜ん……まあ楽しかったんじゃないの?」
「なにそれ〜w」
「じゃあ来年の抱負は?」
「え〜……なんだろ、なんだろ〜……」
「……気楽に?」
「お前はいつもそうだろ」
「たしかにwなんか、気楽にっていうか、自堕落にっていうか」
「なんだそれw」
「わかんねwみつは?来年の抱負。」
「え〜……わかんね、気楽に?」
「お前もじゃんw」
「まあまあ、いいじゃん」
そばもなくなって、こたつであたたまりながら番組の間の年末にもなって不謹慎なニュースを二人で並んで見ていた。
雪山で、行方不明になった人がいたらしい。捜索活動が始まってからしばらく経って、まだ見つからないそうだ。
「…こんな日に、かわいそうだね〜……」
「なー……」
とたんに、怖くなった。こいつは、来年も、というか明日も、当たり前のように俺の隣にいるんだろうか?会いたいと言えば会いに来てくれるのだろうか?俺に会いたいと言ってくれるのか?
あれこれとぐるぐると思考が乱れる内に、肩にのしかかる重力に不思議な軽さを感じた。ハッとして見ると、そこにはしっかりと、そいつの姿があった。つまらなさそうな目でテレビを見つめ返している。こいつが目に見るものは、だいたいこいつのことを見ているようで、不安になる。その姿を確認した途端、強ばっていた心の何かが緩んで、肩に重力が戻った。
こたつの中で、そいつの手を探った。本当にこいつが、目に見えないところで存在してるか、気になってしまったのだ。
俺が見ているのは幻で、その幻からおかしな重力がかかっていないか、確かめたかった。
「ん、なあに?」
驚くほど冷たかった。周りと明らかに温度が違う。その明らかな存在に酷く安心した。
「…お前手冷た。」
「うん。みつの手あったかい」
「……」
テレビの中の人が、カウントダウンをしている。電波時計と少しずれながら、3、2、1…
「……あけましておめでとう。」
「…おめでとう」
「…俺ら、一体何におめでとうって言ってんだろうなw」
「たしかに」
一度ふと目を見つめられた。見つめられたから見つめ返した。いつもの、でかい涙袋を携えた、黒い目だ。
「……みつ、?来年もよろしくね」
「…それをいうなら今年もよろしくねじゃないの?」
「ううん。今年も来年もってこと」
「…来年きりで終わり…?」
「そんなわけない。再来年もその来年もずっとだよ、どっちか死ぬまで」
「……」
「お前は俺より先に死ぬなよ」
「え、やだ」
「俺みつより先に死ぬから。俺みつ死んだら生きてけないから」
「……じゃあ一緒に死のう、そうすれば怖くない」
死ぬ事が、じゃない。一緒にいられないことが怖くないのだ。
そいつはにっこりと、満足気な笑みをたたえて、
「うん。約束」
と言った。
「…勝手に死ぬなよ」
「うん。みつに、嫌な思いさせたくない。」
「言ったな」
「言った。」
それから微笑みあって、新しい年を迎えた。しばらく互いの存在を確かめるように、眺めあってから、ふと思い浮かんでキスをした。
「……別に、なんとなくだから」
「俺も、なんかしたくなった」
「初キスだね」
「出た、新年は何でもかんでも初つけるやつ。」
「あるよね〜。あれってなんなんだろう」
「しらね…」
どんなくだらないことでも、お前が言うとなんでも愛おしくなる、まるで呪いだ。
「…俺初夢はみつの夢がいいな」
「……」
「俺も、たくみの夢がみたい。」
それからまた見つめあって、見たい夢を見れなかったらいやだから、しばらく眠らずにいた。




